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社長、売り上げの入金がありません
起業したて の頃はあまり意識していなかったが、「きちんと仕事をして、請求書をお送りすれば約束とおりに入金があるもの、と考えるのは浅はか」と気づくのが遅すぎた。 しかも、よりによって売り上げの3割をしめる会社からの入金がないのだ。当然、余剰資金などあるはずもなく、月末の支払ができない結果となってしまった。 すぐに電話をかけても、「担当者が不在のため折り返し電話します」の一点張りでらちがあかない。次の日も、その次の日も入金がないばかりか連絡もない。す ぐに入金があると思っていたところ、いったいどうしたものか。
取引先か らの支払督促も
一番早かったのは、社会保険の督促だった。その後、取引先からも電話がかかってくるようになった。丁寧な 口調ではあるが言っている内容は「早く支払え」ということ。だんだんと気が滅入ってくる。個人口座にあったお金はすべて会社に入れ、証券会社の口座に多少 持っていた株式はすでに売却済みだ。
そうしているうちに、問題の会社の社長からようやく連絡があった。「経理担当者が会社のお金を着服し て蒸発してしまった」とのこと。資金繰りに走りまわっているようであるが、すぐの支払いは無理そうである。
他人の目を気にしすぎたのがあだに
そもそも、社長の役員報酬がゼロの状態のまま頑張ってきたこ とが、個人財産をどんどん食いつぶしていった。社員には「利益がきちんと出るまでは給料をもらうつもりはない」と豪語していただけに今更どうしようもな い。かといって、その分のお金を会社に留保していたわけではなく、どんどんと運転資金につぎ込まれてしまっていたわけである。一見、潔い決定のように思わ れるが、実態は給料が安い社員の不満をそらすためというのが本当の理由である。
いざというときは、社長の個人財産でしか会社を救えない
急に銀行に泣きついても、危ない会社に お金を貸すほど銀行はバカではない。普段から取り引きもない会社なら、なおさらである。取引先の信用も、社員の信用も失う悪循環に陥った。
結局、顧問税理士の薦めに従い、最低限の保険を残し、解約返戻金のある保険を解約し、自宅を担保にした借り入れと、以前から契約してあったカードローンで 急場をしのぎ、すぐさま内容証明を送って督促を続けた。案の定、うるさいところから支払っている様子で、1カ月遅れでなんとか入金があり、間一髪、起業以 来最大の危機を乗り切った。
このような話は人ごとではなく、いつあなたの会社に降りかかってくるかはわかりません。あなたはどんな備えを しているのか、今すぐ確認してみてください。今すぐです。