ひげをそったばかりなのに床屋でまたひげをそられたり、外でおいしいディナーを楽しみたいのに、温泉旅館に泊まるとありきたりの食事がついてきたりするなどという経験はありませんか。
しかもこっちのスケジュールはお構いなし。
当たり前だからという理由で、いらないサービスにお金を払わなければいけない例がたくさんあります。今日はそんな不満にスポットライトを当ててみます。
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床屋のサービス
昔ながらの床屋に行くと、髪をカットして、ひ げや顔をそり、頭を洗って、整髪料をつけてきっちりセットするという一連のサービスが行われます。
ちょっと気が利いたところでは耳かき、ちょっとしたマッサージ、鼻毛切りなどもついてきます。これらはいつも通い慣れている顧客 にとってはあまりにも当たり前になっていて、疑問すら持たない場合がほとんどでした。
たとえば、こういう場合はどうでしょう。日曜日の朝にひげ を剃ったばかりで床屋に行ったとすると、わざわざもう一度ひげをそってもらう必要はありません。ましてや平日、会社から自宅への帰り際に立ち寄った床屋で は、家に帰って風呂に入って寝るだけですから、わざわざ頭を洗ってもらう必要もないでしょうし、ひげそりやセットなどまったく不要です。顧客にとっては、 カットさえしてもらえれば、あとは安い方がよっぽどいいわけです。
サービスには当然、人件費がかかりますので、価格に上乗せされることになりま す。よくよく考えてみると、顧客が気づかないのをいいことに不必要なサービスを売りつけていたと言い換えることもできそうです。
隠れたニーズに気づけば大きな成長
駅の中や人とおりの多いところで1000円カットの 「QBハウス」をよく見かけます。この床屋の特徴は、髪をカットするだけでシャンプーやひげそりなどのサービスは行なわない代わりに安くて、早いというこ とです。
もともと床屋のスタッフは実際に、髪を切るようになるまで、かなりの期間の下積みがあり、すべてのサービスを完璧にこなすようにな れるまでに何年もかかるのが普通でした。しかし、QBハウスのようにカットだけをサービスにし、それだけをひたすらやっていると、当然顧客の回転が速いた めに、経験を積む機会も多くなり、技術の習熟も早くなります。
また、店舗の設備も非常に簡素なもので十分なので、フランチャイズ化しやす く、すでに392店（平成21年4月末日現在、ホームページより）も出店しているようです。
会計的に見ても、水を使うサービス（シャンプー・ひげそりなど）を省いたことにより、多額のコストがかかってい た給排水設備が不要になり、出店に必要なスペースも大幅に削減できますので、高い価格競争力が達成できているのです。
具体的には、給排水 や内装工事で数百万安くなり、家賃が約半分で、従業員の採用や教育のコストで一人あたり２～３百万円も安くなってしまう計算になります。この差は、従来型 の理容店が最初から大きな借金をして固定客が付くまで返済の重荷に苦しんでいるうちに、1000円カットでは次の店舗を出して大もうけができるというよう に大きな違いになって現れてきます。
しかも面白いことに、人とおりの多い駅ナカや商業施設などでは坪あたりの売上が非常に重視されますので、効率 よく顧客を回転させる1000円カットと相性が良いわけです。当然、利用客数が膨大ですので、広告宣伝費の面からも大幅なコスト削減ができ、1000円 カットの成長を支えているのです。
他の業界ではどんな取り 組みがされているか
床屋以外の業態では、軽井沢の高級温泉旅館の「星のや」がおもしろい取り組みをしています。
徹底的 な顧客アンケートを元に、『軽井沢に何日も滞在するにもかかわらず、食事が飽きるので連泊しない』という顧客の傾向を読み取り、温泉旅館ではお決まりの夕 食付というサービスをやめました。その代わり24時間のルームサービスを充実させたり、いくつかのレストランを準備したりして、連泊しても飽きのこない サービスにしています。
会計的にも、夕食をセットで売りつけることで得られるちょっとした利益の代わりに連泊客を集めることができます し、アレルギーなどの問題を抱えているので、お決まりの食事では困るという人がいるグループまで集めることができるため、より大きな利益を得ることができ ます。そして、何より顧客満足度が上がるので、リピートや口コミが増えるという大きなメリットがあります。
コメント
顧客のニーズを満たすためにあえてバラ売りして得意分野に集中する。こんな単純とも思 える戦略で大きな利益を手にできる可能性があります。そのポイントは顧客のことをどれだけ考えているかにあるようです。
他の業界だからとあきら めてしまうのは簡単ですが、あなたの業界で徹底的に顧客のことを考えたとしたらどんなチャンスが眠っているでしょうか。
