企業会計 Vol.33 会社員と社長の一番の違いとは?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

業績によっては追加の借入が難しかったり、場合によっては銀行と交渉の上、返済スケジュールを長めに変えてもらったりして生き残りに必死になっている会社も多いようです。
そのような中で、いよいよ社員の人件費にもメスを入れなければいけない時が迫ってきました。あなたならどうする?

銀行借入が絶望的に

35-2飲食店をフランチャイズを3店舗経営しているA社は、折からの不況で売上が激減し、何ら打つ手も無い状態で年間700万円近くの 赤字を垂れ流しています。A社はまさに存亡の危機に立たされています。以前はどんどんお金を貸してくれた銀行も、追加の融資に応じてくれなくなり、とうと う、返済期限を5年ほど延長してもらうという選択をしました。ここで立ち直ることが出来ないと、いよいよ会社が倒産という結末が見え始めます。
社 長としては長年働いてくれている社員をクビにするということはどうしても避けたいということでがんばってきましたが、もうどうにもならないところまで来て しまったようです。

 

 

 

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クビを切るにもお金が必要

給与を計算してもらっている、社会保険労務士に相談に乗ってもらったところ、クビを切るにも約200万円もの解雇予告手当を 払ったり、退職金を支払わなければいけないととのこと。月末の支払を考えると、すでにそんな余裕もありません。頭をかかえて、今度は、税理士に今後の事を 相談してみました。
そうすると、税理士からは意外な一言が。「店長の方がお店を引き継いでくれるのであれば、事業譲渡してあげてはいかがですか」 とのこと。近年の雇用情勢では、高齢者が離職した場合の再就職はとても難いため、働き慣れた職場をそのまま引き継げるのであれば店長にも大きなメリットが あるのではないかということです。
しかも、新たに創業するのであれば、融資を受けることができます。既存の顧客や設備、取引先などもそのまま引き 継げるため、引き継いだその日から毎月240万円ほどの売上が確保できるというのも彼らにとっては大きな魅力です。

 

プロジェクト始動

さっそく各店舗の店長たちを集めて現状を説明し、こういう解決策があるという話をし たところ二人の店長が買い取りたいという話をしてくれました。そのうちの一人は奥さんの大反対にあって少し時間がかかりましたが、社長が直接説得しにいっ たことが功を奏したのか、なんとか買取りまでこぎ着けることができました。両店舗ともアルバイト・パートの勤務を減らすものの、従業員も全員引き継いでく れる事になったので、社長としてはようやく肩の荷が下りました。
さっそく、創業融資で借りたお金1,000万円を元手に事業を現金で買取ってもら い、会社からは多少なりとも退職金を支給してあげることができました。

 

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会社員と 一国一城の主の違い

35-1今では、社長自ら、できる限り店舗に出るようにしたため、人件費負担も軽くなり、少ないながらも30万円ほどの単月黒字が達成で きるようになりました。社長も、多少暗い印象を与えていた以前とは比べものにならないくらい活き活きと働いています。
その一方で、独立した二人は というと、雇われ店長時代とは打って変わって仕事に情熱を燃やしています。そんな、彼らの経営努力の甲斐もあって、売上が増加傾向になったようで、A社の 社長を含めていい意味での競争が生まれています。一国一城の主になったとたんにこれですから、社長も冗談で「店長の時からこれだけがんばってくれていれば 良かったのに」と言って笑っています。
ちなみに、以前、独立する際に強硬に反対していた店長の奥さんも今ではパートで手伝ってくれているとのこと で、しっかりと利益に貢献してくれているようです。

社員をクビにするという選択からは想像できないような結果になりましたが、このように店 長にのれん分けすることで会社の存続ができる場合があります。簡単に経営をあきらめる前に、頭を使ってもうひと頑張りしてみませんか。

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