来年度(2007年度)の税制の方向を決定づける「平成19年(2007年)度税制改正大綱(自民党)」が、12月14日に発表され、「減価償却制度」について根本的な変更がされることになりました。
設備投資を意思決定するに当たって、減価償却費がいくらになるのかというのは重要な要素となります。
今回は、その減価償却制度の変更ポイントをおしらせします。
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減価償却って何?
まず、基礎知識として減価償却の概要について説明します。
建物、機械装置、器具備品、車両運搬具などの固定資産は、時の経過によってその価値が減少していくため、このような資産を「減価償却資産」といいます。時が経過しても価値が減少しない土地や絵画などの資産は、「減価償却資産」ではないことになります。
この減価償却資産の購入代金(「取得価額」という)は、購入したときに全額経費にすることはできません。このような資産は長期間使用することができるため、その資産の使用可能な期間に分割して経費としていくのが合理的だからです。この使用可能な期間については資産ごとに定められており、これを「法定耐用年数」といいます。減価償却とは、「減価償却資産」の「取得価額」を「法定耐用年数」に渡り分割して経費としていく手続きのことを指すのです。
※使用可能期間が1年未満のものや取得価額が10万円未満(一定の要件に該当する場合は30万円未満)のものは、減価償却せずにその取得価額の全額を経費にできます。
従来の減価償却制度
減価償却の方法としては「定額法」と呼ばれる方法と、「定率法」と呼ばれる方法がありますが、わかりやすい「定額法」による場合の方法で説明します。「定額法」による減価償却費は、取得価額×90%×償却率=減価償却費という算式で計算されます。この算式で取得価額×90%としているのは、会計上「残存価額」を10%残すこととされているためです。そして、税法では「残存価額」を超えて取得価額の5%まで(「償却可能限度額」といいます)は減価償却してもよいとされています
では、具体的に減価償却費をどのように計算するのか簡単な説例を用いて説明します。
(説例)
取得価額30万円のパソコンを購入した場合の各事業年度の減価償却費の計算方法
取得価額:30万円
耐用年数:4年(償却率0.25)
償却方法:定額法
1年目 300000円×90%×0.25=67500円
2年目 300000円×90%×0.25=67500円
3年目 300000円×90%×0.25=67500円
4年目 300000円×90%×0.25=67500円
5年目 (300000円-67500円×4年)-300000円×5%=15000円
減価償却費の累計額=285000円
このように、従来は残存価額を残して各事業年度の減価償却費を計算され、最終的に取得価額の5%までしか減価償却できないという「償却可能限度額」というものが定められていたため、減価償却資産を取得してもその資産を廃棄しない限りは、全額を経費にすることができなかったのです。
改正のポイント
今回の改正では、従来の「残存価額」および「償却可能限度額」を廃止し、法定耐用年数経過時点に1円(備忘価額)まで償却できることとなりました。
具体的に改正後はどのように減価償却費を計算するのか、上記と同じ説例を用いて説明します。
(説例)
取得価額30万円のパソコンを購入した場合の各事業年度の減価償却費の計算方法
取得価額:30万円
耐用年数:4年(償却率0.25)
償却方法:定額法
1年目 300000円×0.25=75000円
2年目 300000円×0.25=75000円
3年目 300000円×0.25=75000円
4年目 (300000円-1円)-75000円×3=74999円
減価償却の累計額=299999円
※ 改正による方法は、2007年4月1日以後取得の資産より適用
従来は、取得価額の全額を経費とすることができなかったところが、今回の改正により法定耐用年数経過時点で全額(1円を除く)を経費とすることができるようになりました。
減価償却費は現金支出を伴わない経費であるため、その分、資金が会社内部に留保され次の設備投資への原資とすることができます。設備投資が必要な会社にとって追い風といえる今回の税制改正を、きっちり理解し有効に活用しましょう。