「美容室を開業したい」と考えているけれど、「何から始めればいいのか分からない…」という方も多いのではないでしょうか?
美容室の開業には多くの準備が必要ですが、正しいステップを踏めば、夢の実現もぐっと近づきます。
当記事では、美容室開業の基本的な流れや、資金調達の方法、事業計画書作成のポイントについて詳しく解説します。これから美容室を開業したいと考えている方はもちろん、すでに準備を始めた方にも役立つ情報が満載です。
- 目次 -
美容室開業に向けて〜開業までの流れを解説〜
美容室の開業に向けて開業までの一連の流れを解説いたします。
1)事業計画書の作成
競争の激しい美容業界で生き残り、成功するためには、具体的な事業計画を立てることが不可欠です。ただ開業するだけではなく、他の美容室との差別化を図り、顧客に選ばれる理由をしっかりと明確にすることが重要です。そのためには、ターゲットとなる顧客層のニーズを把握し、提供するサービスや店舗の特徴をいかに際立たせるかが大切になります。
当記事では、事業計画書作成のポイントについて後ほど詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてください。
2)立地の確認と店舗の契約
美容室の立地は集客に大きな影響を与えます。駅近や商業エリアなど人通りが多い場所は集客効果が高い一方で、家賃も高額になる傾向があります。立地選びの際は、競合店舗の数やターゲット層との相性も考慮しましょう。また賃貸借契約を結ぶ前に、店舗内装の自由度や物件の設備条件を入念に確認することが重要です。これにより、後々追加の改装費用や設備投資費用を避け、予算内での店舗作りが可能になります。
3)必要な資金の見積もり
美容室を開業する際には、初期費用や運転資金を具体的に見積もることが重要です。物件取得費、内装工事費、機材購入費、広告宣伝費など、全ての項目を詳細にリストアップしましょう。また、開業後の運営に必要な費用、例えば家賃、光熱費、スタッフの給与などを考慮し、少なくとも6ヶ月分の運転資金を準備することをお勧めします。予想外の支出に備え、余裕を持った資金計画を立てることが成功の鍵となります。
美容所登録に必要な書類
美容所開設届 | 開設者の住所・氏名、施設の名称、施設の所在地、開設予定日などを報告する書類です。様式は管轄する保健所のホームページなどで入手できます。 |
施設の構造設備 の概要 |
建物の規模、セット面やシャンプー台の数などをはじめとした美容院の設備を報告する書類です。 |
施設の平面図 | 美容室は法律や条例に基づく構造設備の基準、衛生管理上の基準の適用が必須であるため、工事着工前に保健所に相談する必要があります。工事業者から施設の平面図を取り寄せ、提出します。 |
従業員名簿 | 美容師免許を持っている従業員の氏名や免許取得日、番号などの情報をまとめた書類です。 ※従業員を雇わない場合も必要です。 |
登記事項証明書 (開設者が法人の場合のみ) |
開設者が法人の場合は、法人の登記事項証明書の原本が必要です。6ヶ月以内に発行されたものを提出します。 |
美容師免許を持つ 従業員の医師診断書 |
公衆衛生にかかわる美容室は、伝染病などのまん延が起こらないように、美容師免許を持つ従業員全員分の医師診断書を提出する必要があります。 |
4)開業届や法人設立手続き
美容室を開業するには、保健所への申請や必要書類(美容所登録)の提出が欠かせません。美容室として営業を開始するためには、まず美容師法に基づく設備基準を満たしていることを証明する書類を提出する必要があります。この登録にかかる検査手数料は約2万円程度ですが、管轄の保健所によって金額が異なるため、事前に確認しておきましょう。
個人事業主として開業する場合、法人設立手続きは不要ですが、開業届を税務署に提出する必要があります。開業届の提出は、税金の管理や青色申告の申請にも影響しますので、忘れずに行いましょう。
一方、法人として美容室を運営する場合には、法務局での法人登記や、税務署への届出が求められます。法人の場合、個人事業主よりも手続きが少し複雑になり、会計や税務の管理にも注意が必要です。
どちらの場合も、事前にチェックリストを作成し、効率よく手続きを進めることが重要です。また、必要に応じて専門家(税理士や行政書士)の助けを借りると、スムーズに進行することができます。
5)開店準備
開店準備では、内装デザインや設備選びが重要です。特に、店舗のコンセプトに合った内装を施し、顧客に居心地の良さを提供することが求められます。また、スタッフの募集と研修も欠かせません。集客活動では、SNSやWebサイトを活用し、オープン前からお客様に店舗を知ってもらう仕組みを整えましょう。ポータルサイトのキャンペーンを組み合わせることで、初日から多くの顧客を迎えられる準備を進めてください。
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初期費用はどれくらいかかる?
美容室の初期費用は、規模や立地条件によって異なりますが、一般的には500万〜1,000万円が必要とされています。この中には物件取得費、内装工事費、機材購入費、広告宣伝費などが含まれます。また、開業後の運転資金を準備するうえで、家賃や光熱費、スタッフの給与などの費用も考慮に入れる必要があります。さらに、予想外の費用や緊急時に備えるための予備費を確保することも大切です。運転資金は3~6ヵ月分用意しておくと安心です。コストを抑えるためには、中古設備を利用したり、必要最低限の設備でスタートするなどの工夫が効果的です。
下記に初期費用 開業資金 初期費用と運転資金の内訳 としてかかる品目と金額例を記載いたします。
開業資金 | 運転資金 | ||
内装工事費 | 約476万円 | 消耗品等仕入れ | 約40万円 |
機器・什器・備品等の費用 | 約197万円 | 家賃等支払 | 約30万円 |
テナント貸借費用 | 約104万円 | 広告費等諸経費支払 | 約80万円 |
営業保証金・FC加盟金 | 約13万円 | ||
合計 | 約790万円 | 合計 | 約150万円 |
美容室の開業にあたっての資金調達方法を解説
美容室の開業には前章で開設したとおり、多額の資金が必要です。ここからは創業初期でも利用できる資金調達方法を解説いたします。
新規開業資金
美容室の開業資金を調達する際、日本政策金融公庫の新規開業資金が一般的です。これらは比較的低金利で借り入れが可能で、初めて事業を始める方にも利用しやすい制度となっています。融資を申し込む際には、詳細な事業計画書や収支計画を用意し、事業の信頼性をアピールすることが大切です。
新規開業資金の概要
融資の対象 | 新たに事業を始める人 事業開始後概ね7年以内の人 |
金利 | 条件により異なるが低金利 |
融資上限額 | 最大7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
返済期限 | 設備資金に関して →20年以内(うち据置期間5年以内)運転資金 →10年以内(うち据置期間5年以内)* |
*「廃業歴等があり、創業に再チャレンジする方」は、前事業に係る債務を返済するために必要な資金もお使いいただくことができ、運転資金は15年以内(うち据置期間5年以内)までご利用いただけます。
引用:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
まずは低コストで始められるシェアサロンという選択肢も
資金が限られている場合、シェアサロンでのスタートも検討してみましょう。シェアサロンは初期費用が抑えられるだけでなく、設備や備品が整っているため、すぐに業務を開始できるというメリットがあります。また、独立前に実績を積む場としても活用でき、顧客層の拡大や運営スキルの向上にも役立ちます。
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融資を成功させ、美容室経営で失敗しないためには?
美容室の経営に失敗しないコツはおおきく3つあります。
必要な自己資金を確保する
美容室を開業する際にまず必要となるのが自己資金の確保です。初期費用は、美容椅子やシャンプー台といった設備、店舗の内装費用など、平均して700〜900万円程度かかるのが一般的です。また、自己資金を総投資額の24%程度を目安に用意しておくことで、融資を申し込む際の信用力が高まり、審査通過の可能性を上げることができます。
一概には言えませんが、日本政策金融公庫総合研究所の「新規開業実態調査」のデータによると、創業資金調達総額に占める自己資金の割合は24%となっています。同調査によると、事業開始からおよそ1年間のうちに黒字基調となった企業は全体の約60%との結果が出ています。借入に依存した計画では、思っていたほど売上が上がらなかったり、予想外の出費がかさんだりすると、資金繰りが苦しくなる場合があります。自己資金と借入金のバランスを考え、ゆとりを持った資金計画を立てることが大切です。 |
引用:日本政策金融公庫・創業計画Q&A「Q4:自己資金はどれくらいあればよいですか?」
事業計画書の「創業の動機」を作り込む
事業計画書の「創業の動機」では、なぜその事業を始めようと思ったのかを明確に記載しつつ、市場のニーズやトレンドの変化、自身のスキルや経験、地域の課題解決など、具体的な理由を挙げることで説得力が増します。
自分が抱いている情熱やビジョン、事業を通じて達成したい目的や価値観をしっかりと示しましょう。熱意を伝えるためには、自身のエピソードや背景を織り交ぜながら、なぜその事業に強い思いを持っているのかを具体的に述べると効果的です。
事業計画書を作り込む
融資を成功させるためには、専門家の意見を元にした事業計画書が不可欠です。以下の内容を具体的に盛り込むことが、融資審査を有利に進めるポイントです。
① 運転資金の不足を考慮した資金調達
開業初期は、売上が安定するまで運転資金が不足しがちです。特に、物価の高騰や原材料費(シャンプーや美容機器など)の増加により、予想以上に経費がかかることがあります。開業前に、最低でも固定費の3~6ヵ月分の運転資金を確保しておくと安心です。
② 客単価の設定方法と物価高騰への対応
物価高騰の影響を受ける中で、適切な客単価の設定が非常に重要です。競合店の価格調査を踏まえ、ご自身が決められたターゲット顧客層に適した価格設定を考えましょう。例えば、都心部の美容室では、少し高めの価格帯を設定し、質の高いサービス(例:ヘッドスパやトリートメントなど)を付加価値として提供することで、客単価を引き上げる戦略が有効です。また、サービスの質を維持しつつ、効率的な経費管理を行うことも重要です。料金改定が必要な場合、そのタイミングを計画し、事前に顧客に理解を得る方法を考えておきましょう。事業計画書は、美容室経営を成功させるためにも非常に重要です。事業計画書を作成することで、収支計画をしっかり立て、安全な経営が可能になるだけでなく、事業のコンセプトを明確にすることができます。これにより、意思決定にブレがなく、優先順位を意識して資金や人的資源を集中させ、一貫した事業展開を行うことができます。
競争の激しい美容室業界で成功するためには、事業のコンセプトをしっかりと決め、その上で集客戦略を立てることが大切です。 例えば、ターゲット顧客層が30代~40代の働く女性の場合、「忙しい毎日を忘れられる癒しの空間」や「大人女性の魅力を引き出す上質なサービス」といったコンセプトを掲げることで、共感を呼びやすくなります。
また、特定の技術に特化している場合、その専門性をアピールすることが有効です。たとえば、カラーリングやヘッドスパ、ヘアエクステなどの得意技術を事業計画書に具体的に記載することで、専門性の高さを強調できます。さらに、オーガニック製品や最新の美容機器を導入すること、またはリラクゼーションに特化した空間を提供するなど、他の美容室にはない独自のサービスや特徴を明確に打ち出すことが、集客において強力な武器となります。
参考:ドリームゲート「美容室の創業計画書の書き方と記入例を完全図解」
美容室の集客のコツは?
美容室の集客で創業初期から効果が期待できる施策は3つあります。
まずは最低限のWebサイトとGoogleビジネスプロフィール マイビジネスに登録する
まず基本となるWebサイトの作成とGoogleビジネスプロフィール マイビジネスへの登録を済ませましょう。Webサイトでは、営業時間や施術メニュー、料金、アクセス方法を明確に掲載し、初めてのお客様が安心して予約できる環境を整えましょう。
また、Googleビジネスプロフィール マイビジネスに登録することで、検索結果やGoogleマップに店舗情報が表示され、地域のユーザーにアプローチしやすくなります。特に、口コミや写真の掲載は信頼性を高める重要な要素です。無料で活用できるため、開業直後から積極的に運用することをおすすめします。
Webサイトをいきなり自分で作るのは難しいけど、外注するのは難しいという方には、無料で簡単に作成できるwixやGoogle Sites、ペライチなどのノーコードツールを活用してみましょう。サーバーを立てるところからドメイン取得、デザインまでコードなしで誰でも作成できます。
ポータルサイトへの掲載をする
美容室業界では、ホットペッパービューティーや楽天ビューティー、minimoなどのポータルサイトへの掲載が集客に大きく影響します。これらのサイトには美容室を探しているユーザーが集まるため、適切なプランを選択して掲載することで、新規顧客の獲得につながります。特に、初回割引やお得なクーポンを提供することで、初めての来店ハードルを下げることができます。また、ポータルサイト内での投稿数を増やすことで新規顧客の目にとまる機会が増え、リピーター獲得にもつながります。掲載費用や集客手数料はかかりますが、長期的に見て安定した集客が期待できるため、戦略的に活用しましょう。
SNSで得意な施術や強みなどを発信する
現代の集客において、SNSの活用は欠かせません。InstagramやTikTokなどのビジュアル中心のSNSは、美容室の施術例やスタイルを発信するのに最適です。特に、得意な施術や流行のスタイルを投稿することで、興味を持ったユーザーがフォローし、来店につながる可能性が高まります。SNSには必ず、作成したWebサイトか登録しているポータルサイトのプロフィールリンクを記載し、来店予約につながるようにしましょう。
監修者プロフィール:須田 幸宏(すだ ゆきひろ)
東北の起業家のみなさまをサポートします! 三楽る(みらくる)オフィス
東北を拠点に資金調達の支援で活躍する須田アドバイザー。元日本政策金融公庫融資課長で、日本公庫に33年勤務し、融資を通して、延べ2万以上の事業者、5,000以上の起業家をサポートされてきました。非常に親切・温厚なお人柄で、事業だけでなくライフプランニング(生活・家計の設計・見直し)もサポートされていますので経営者の強い味方となるでしょう。
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