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新規創業融資を得たいが、その方法がまったくわからない……
私が講師を務めた創業塾の受講生のAさんから、
「自分でネイルサロンを開業したい。ついては開業資金に関するアドバイスをしてほしい」という相談を受けました。当時、Aさんは某大手美容サロンに勤務しており、「培ってきた技術と店舗運営のノウハウには自信がある。ただ、事業経営に関してはまったくの素人」と言います。特に資金調達の際に必要となる事業計画書の書き方に不安を持っていたようです。
そこで、日本政策金融公庫がホームページ上で公開している創業計画書の記載例や、過去に私が支援した事例などをもとに、一つ一つの項目ごと、書き方のポイントをレクチャーしました。もともと「自分のお店を持ちたい」という強い思いを持っている方なので、創業動機や競合との差別化、操業当初の打ち出し方、ショップの特徴など、「こんなお店にしたい」という思いがつまった良いテキストができあがりました。
誰に理解してもらうための計画書なのかを明確に
まずはひととおりAさん自身に事業計画書を書いてもらったのですが、実は“自分の思い”ばかりが先行した内容でした。つまり、第三者に理解してもらうという視点が欠けているのです。そこで、その思いを効率よく、手短に第三者に伝えることができるのか再考し、すべての項目を3~5点に絞って箇条書きにしてもらうことに。その後、その箇条書きをベースにして“誰もが理解できる”内容に仕上げていきました。
しかし、肝心の数値計画部分については慣れていないせいか、多少の時間がかかりました。売り上げ見込みの算出方法、固定費と変動費の見積もり方法など、Aさんが勤めているサロンの実績などをじっくりヒアリングし、数値計画の導き方、考え方をお話ししながら何とか完成にこぎつけました。
相談から6カ月で500万円の満額融資獲得に成功!
このように開業への思いを具体的に文章化、数値化することによって、Aさんの決意がさらに強まり、希望していた500万円という満額融資の獲得に成功。相談を受けてから、わずか6カ月後のことでした。2007年の開業後、Aさんのネイルサロンは順調に顧客を拡大し、2年目からは希望していた報酬もきっちりと取れるようになりました。現在は2店舗目の出店に向けて出店地域のリサーチなど頑張っているようですが、2店舗目の店長となる人材を育てることが課題となっています。
「創業塾で経営の基礎を勉強し、その後も資金調達の相談や経営の相談に乗ってもらい、安心して独立準備を進めることができました。特に事業資金の借入れについてはかなり不安でしたが、思いのほかスムーズに融資が獲得できたことに驚きました」とはAさんの談。今後の事業拡大に向けて必要となる新たな金融機関との接点づくりのお手伝いをしながら、Aさんの事業活動をこれからも応援していきます。