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アメリカのシアトルで、ラーメン居酒屋を立ち上げる?……
アメリカはワシントン州、シアトル在住の中国系米国人Tさんから、飲食店開業に関する依頼が届きました。「長く会社員を続けてきたが、これまでずっと、いつか飲食店オーナーになりたいと考えてきた。そのための店舗が見つかり、ついにチャンスが巡ってきた。飲食店で働いた経験はまったくないが、ラーメン店をやりたい。AtoZでフルサポートしてほしい」。そんな相談でした。
まず、Tさんが連れて行ってくれた店舗の大きさを見て驚きました。ラーメン単品のメニューで運営するには、店舗があまりに大きすぎます。そこでTさんと話し合って、「ラーメンも食べられる居酒屋にしたほうがいい」とアドバイス。オープンまでの残り時間が3カ月しかなく、たくさんのメニュー数を素人のオーナーが覚えられるかが問題となりましたが、居酒屋メニューをつくることができる日本人のメインシェフを採用することで、この問題をクリアすることにしました。
日本とアメリカのさまざまなギャップを埋めつつ開業準備!
前オーナーが残していった厨房機器はメンテナンスがされておらず、使い物にならなかったので、1週間かけて私がメンテナンスをしました。そして肝心のラーメンの味をどうするか、足を使って調べることに。シアトルのラーメン店数軒で試食したところ、味付けがかなり濃い。まず、自分の中の「おいしい」という概念を捨てる覚悟を決めました。そして、シアトルから北に200kmほど離れたカナダのバンクーバーの豚骨ラーメン店を訪ねてみたらかなり繁盛しています。「なるほど、豚骨ベースならシアトルでも受ける!」と確信。さらに、タレを変えることにより、「豚骨塩」「豚骨醤油」「豚骨味噌」と3種類のスープをつくり、味のバリエーションを増やすことにしました。
「食材をいかに安定的に低価格で調達できるか」。これを調べるのがかなり大変でした。アメリカは広いですからね(笑)。ラーメンの麺は、私がかつてカリフォルニア州サンノゼで仕事をしていた際にお世話になった製麺会社の社長が訪ねてきてくれ、同社の麺を供給していただけることになり、大変助かりました。また、レシピの詳細を決定する場合、日本ではグラム単位ですが、アメリカはオンス単位で、さらに10進法ではなく16進法なので非常に苦労しました。
3カ月のスピード準備で、繁盛ラーメン居酒屋をオープン!
実際のところ、食材は必要なものが常に手に入るとは限らず、あるものを利用してどこまで完成度を高めるかというスタンスで進めるしかありませんでした。その後、オープンが近づきウェイトレスのトレーニングをしましたが、3名中2名は初体験。皿の持ち方など基本中の基本を短期間で叩き込みました。本当に駆け足の開業準備でしたが、私のビザ有効期限ぎりぎりの90日間で、なんとかTさんのラーメン居酒屋を無事オープンすることができました。
開業したのは2006年。スタート後にはリーマンショックなどもありましたが、消費が冷える中を乗り越え、順調に売り上げを増やしているようです。ちなみに、現在のスタッフ数は4人。直近の年商は5000万円を超えたそうです。「厨房機器のメンテナンス、料理のレシピ、接客サービスなど、飲食店運営にまつわる全般的なアドバイスをしてもらったことで、今の結果につながっています。松島さんがいなかったらオープンすらできなかったと思う。本当にありがとう。あなたはもう私の家族と同じ存在です」と、最高の感謝の言葉をいただきました。