先日、ドリームゲート北海道が「農業」をテーマにイベントを実施しました。僕はパネリストとして参加したのですが、海外からの安い食材、日本の食糧自給率の低さ、生産現場、流通など、課題は山積み、考えさせられることが多いイベントでした。農業だけでなく、このデフレの時代、いつも価格のところへ議論は進みます。海外から入ってくる安い食材に日本の農家は太刀打ちできないですよね。でも、価格だけで人はモノを買うのでしょうか?単に安ければいいのでしょうか?違うような気がしますよね。20年以上前です。その頃、島田陽介さんの本を読んで、激しく共感(笑)したことを思い出しました。古い話です(笑)。
彼は、一次機能でモノを買うお客様は日本にいなくなったと言っていました。百貨店の日用品売場にあるヤカンは誰が買っているんでしょうか?ヤカンのない家ってあるんでしょうか?お湯を沸かす(一次機能)ヤカンがない家は日本には少ないと思います。つまり、お湯を沸かす目的以外でヤカンは買われていると考えた方がいいようです。頭にかぶるとか、打楽器にしてるとか…(笑)。それはないとしても、ヤカンを買う動機は「お湯を沸かすヤカンがないから」ではなく、新居のプレゼントにとか?私のキッチンは赤で統一したいからとか、一次機能でないところ、二次機能以降に購買動機はあるってことです。プレゼントは「お祝いしてあげたい」っていう二次機能ですし、赤のヤカンは「心地よさ」を買っているんです。もう一つ、寒さをしのぐ(一次機能)ためだけでコートを買う人もいません。コートの一つぐらいは誰でも持っています。寒さではなくて、ファッションで毎シーズン、コートを買うのです。自己表現(二次機能)を買っているんです。最初の農業の話に戻りますが、だとすると空腹を満たす(一次機能)ためだけに僕たちは食べてないことになります。そうです。飢えている日本人は極少数です。満腹以外のこと、おいしさとか、安全とか、健康を食べているんですよね。でも、ココからが問題です。海外からの安い食材もそれなりにおいしくて、安全で、健康的です。だとしたら、どんな二次機能で日本の農家は食材を売ったらいいのでしょうか?答えは「物語」です。おいしさ、安全、健康を物語りにしないといけません。どんなに風においしくなったか、どうして安全か?どんなに健康かを物語りにしないといけません。作物をそのまま出荷しないで、加工食品にするのも視点を変えれば物語を作っているんですよね。その商品の生い立ちや、作り手の思いが物語にならないと二次機能、付加価値にはならないのです。僕たちは物語を食べているのです。物語を食べた僕たちはその物語を人に語ります。