起業家のタイプを、その「起業動機」を軸に大別すると、
1)社会変革型、2)アイデア実現型、3)技術活用型、 4)独立志向型、5)成行き型、となります。起業家はこの「起業動機」をテコに立ち上がります。起業プロセスの中でぶつかる壁が、このタイプと強い関連があることがわかりました。つまり、それぞれの起業家タイプはその「起業動機」が持つ強みと弱みをスタートの時点から内在しているのです。
多くの起業家がいくつかのタイプを併せ持ちます。さて、あなたはどのタイプですか?
1)社会変革型とは、強い社会的な使命に突き動かされて起業する人達で、思いが強く、「オレがやらねば誰がやる」というタイプです。「今の教育は間違っている」との思いから教育ビジネスを立ち上げたり、「業界常識は世の中の非常識だ!」と業界を敵に回してでもあるべき姿を追い求めたり、「子育て主婦の社会的支援を‥」という思いで託児所やベビーシッターサービスをスタートします。彼らは理念先行型ですから、収益モデルや会社の仕組みをあまり考えていません。このケースの事業は崇高な理念の元、そのピュアな思いに賛同する仲間には恵まれますが、立ち上げたはいいが、たちまち経営難に陥ることが多いです。「私達は世の中に必要なことをしている」「正しい事業だ」「理念が正しければ事業は成立する」と強く思っていますが、現実はそうではないのです。社会的な価値があることと、経営として存続できることの違いを学習するまでに多くは潰れてしまいます。
2)アイデア実現型とは、「思いつき」を事業にする人たちです。社会変革型のように社会的な使命というよりも、日常生活での不便の解消とか、潜在的なニーズを見つけて起業します。典型的なのは「町の発明家」。アイデアは面白いし、特許や実用新案になるかも知れませんが、マーケットでそれが競争優位にあるかは別問題です。アイデアだけだとマネされるし、流通とか、コストに目が行っていない場合が多いです。このあたりは社会変革型と同じですが、少なくともビジネスに繋がるアイデアはある訳で、マーケティングできればものになります。
3)技術開発型とは、保有する技術で起業を考えるタイプです。典型的な例は大学発ベンチャーです。技術のすごさは分かるのですが、多くの場合、用途開発に欠けます。高度な技術が事業になるとは限りません。
「サラリーマンで終わるのはイヤ。いつか社長になってやる」このタイプが、4)の独立志向型です。アイデアも技術も理念もないが独立するのが目的です。自己実現型と言ってもいいかも知れません。しかし、独立したいだけではたんなる金儲けです。人の金儲けを手伝う人はいません。手伝うとしたら、それが自分の金儲けになるからです。金儲けだけの繋がりでは、事業は大きくなりません。金儲けの前に理念が必要です。
最後が、5)成行き型です。第2創業とか2代目創業などで、起業の他に選択肢がない人たちです。または、事の成り行きで社長になってしまったという人たちです。独立志向の中の消極的タイプですが、彼らには引き返すところがありません。後に引けない強さがります。