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わずか数カ月で、リチウムイオン電池用
電解液の最高レベル性能を更新!
事業や製品・サービスの紹介
今、材料開発の世界で「マテリアルズ・インフォマティクス」(Materials Informatics =MI)と呼ばれる手法が注目されている。MIとは、材料科学と情報技術を掛け合わせ、新材料や代替材料を探索・開発するための技術だ。従来は、実験科学の手法により、研究者の経験や勘に頼りつつ新材料を探索するという方法が一般的だった。研究者はトライ・アンド・エラーを繰り返しつつ、目的の材料を発見するため、多大な時間やコストを要している。
MIは、実験やシミュレーションの条件と結果を人工知能(AI)で学習し、最適な値や組成を予測する手法で、一連の開発プロセスを効率化し、時間やコストを大幅に削減するインパクトを持つ。MI専業ベンチャーであるMI-6株式会社は、MIのエンジンとなる解析モジュールを独自開発。主に材料・化学メーカーを顧客として、MIの導入・活用のコンサルテーションや既存の実験データの解析を通じた、顧客の新材料探索の効率化を支援している。
そんな同社が第1号の公開案件として、このほどキシダ化学株式会社と共同し、リチウムイオン電池用難燃性電解液のより高度な性能を発揮する組成開発に成功した。このプロジェクトではMIの活用により、わずか数カ月で従来の最高レベルの性能を更新する電解液の開発に成功している。
AIと材料技術の専門家による混成部隊。
相互領域への理解を深め、より的確な提案を
対象市場と優位性
MI-6が主な対象とする領域は、自動車のバンパーや電気製品の筐体などに用いられる機能性材料市場だ。ちなみに2015年度の国内同市場は、6兆6161億円(経済産業省調べ)の規模である。その約6~8%が研究開発費に投じられているといわれているので、同社の対象市場の規模は約4000億~5000億円という計算となる。
MIを活用した新材料開発には、日立や富士通、NECといった大手も乗り出している。そうした中にあって、MI-6は顧客の新材料開発を支援するMI専業ベンチャーとしては唯一の存在だ。
同社の強みは、ベンチャーならではのスピード感とキメ細かい対応力。当然のことだが、材料メーカーが抱える課題は多様であり、またAIを活用するMIの手法もさまざまである。同社は顧客の課題に対して最適な手法をリサーチ、マッチングし、より効果的なソリューションを提示できる点が差別化要因となっている。
そして、同社はAIと材料技術のそれぞれの専門家による混成部隊でサービスを開発、提供している。この陣容によって相互の専門領域に対する理解が深まることで、より的確なMIを顧客に提供することが可能になるのだ。
世界トップレベルを誇る日本の材料産業を、
MIによってさらに進化させる!
事業にかける思い
同社代表の木嵜基博氏は、京都大学を卒業後、ITベンチャーに入社し、東証マザーズ上場を経験した人物である。その後、オリックスを経て、中国発・自転車シェアリングサービス最大手のモバイクに入社、日本法人の責任者に就任する。そこで、中国企業のAI活用の進展ぶりに目を見張った。
「AIはアメリカと中国が競り合っている状態で、日本は完全に負けていると実感しました。そのうえ、モバイクはすでに材料開発の領域まで手がけていて、AIと材料開発が結び付くと材料産業に大きなパラダイムシフトが起きるのではないかと感じたのです」
モバイクは世界中の都市で数百万台もの自転車を配車しており、軽くて丈夫な材料でつくられていた。また、トヨタが開発した電気自動車用電池に関する新材料を、サムスン電子とMITの共同研究チームが5分の1のスピードでモノにしたというニュースも、木嵜氏の背中を押した。
「その時、直感的に“材料×AI”で、日本の材料開発に飛躍的なイノベーションをもたらすことができるのではないかと閃きました。さっそくメーカーの研究者にヒアリングを始めると、興味はあるものの、どうすればいいかわからない状態であることがわかったのです。結果、大学の研究者やデータサイエンティストを集めて体制をつくれば、彼らに価値提供できると確信しました」
同社には、主旨に賛同した4名のメンバーのほか、5名の大学研究者がアドバイザーとして名を連ねている。
「マイクロプラスチック問題や電気自動車の開発など、SDGsを実現するための新材料への社会的要請は高まる一方です。それに対して、材料がボトルネックとなってはいけない。そこを担う企業の研究開発部門と連携し、材料開発のスピードアップに貢献していきたいと考えています」
MI-6株式会社 | |
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代表者:代表取締役 木嵜 基博 氏 | 設立:2017年11月 |
URL:https://mi-6.co.jp/ | スタッフ数:13名 |
事業内容: ITを活用した材料開発の研究・開発・コンサルティング・プロジェクトマネジメント、材料開発に関するチーム構成支援 |
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これまでの資金調達額(出資額)と主な投資会社名: 非公開 |
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ILS2018 大手企業との商談数: 17社 |
当記事の内容は 2019/2/26時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。