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シルクの特性と独自の製造技術で、
快適な着用感と高精度の計測を実現
事業や製品・サービスの紹介
天然由来の“シルク製電極”を製造販売するエーアイシルク株式会社。従来の医療用電極は、長時間装着すると、かゆみやかぶれが生じるおそれがあった。一方、同社のシルク製電極「エーアイシルク」は、シルクの繊維自体に導電機能を持たせることで、肌に優しい電極を実現。シルクは手術用の糸にも使われる安全な素材であることから、肌が弱い方や高齢者、子どもでも安心して着用できる。
「エーアイシルク」は、繊維の上に導電性高分子をコーティングする染色技法を用いて製造される。この製造法は、シルクだけでなく、ナイロン、ポリエステルなど、さまざまな繊維にも応用可能。用途やコストに応じて、最適な導電性素材を製造することができるというわけだ。また、電極をプリントする技術も確立。導電性高分子を必要な箇所に印刷することで、部分的に導電性を持たせた生地の製造にも成功している。
また、シート抵抗値100Ω/sq以下という高い導電性も特徴のひとつ。吸水性が高く、汗の影響を受けにくいことから高精度な計測が可能。心拍や筋電などのバイタルデータを着用者のストレスなく測定できる。こうした特性から、「エーアイシルク」は、衣服型ウェアラブル製品に適した新素材として、多くの企業から注目を集めている。
健康、医療、スポーツ分野へ展開可能。
幅広い応用性に大手企業が注目!
対象市場と優位性
「エーアイシルク」の最大の特徴は、その圧倒的な“着心地の良さ”。導電性高分子を化学重合により生地に付着させることで、筋肉を刺激する際のピリピリとした不快感を低減。洗濯耐久性も高く、洗濯を繰り返しても導電性が劣化しないことから、ヘルスケア、医療、スポーツなど、さまざまな分野への展開が期待されている。現在、株式会社アシックスと共同で、スポーツウェアを開発中。スポーツのフォームチェックやリハビリ、トレーニングなどの利用が想定されている。
このほかにも、自動車のシートやシートベルトにシルク製電極を埋め込むことで、ドライバーの疲労度測定などに応用可能。高齢者や子供の見守りツールとしての展開も考えられる。さらに、家具や壁、床などの建築素材への埋め込みも。バイタルセンシングのインターフェイスとして、多様かつフレキシブルな展開ができることが同社の強みだ。
その応用性の高さに注目が集まり、資金調達も順調だ。起業直後に、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成交付先として採択された。続いて、Draper Nexus、東北大学ベンチャーパートナーズ、アシックスベンチャーズからの出資も決まり、次なるステージへ向けて大きな一歩を踏み出している。
東北の復興支援を目的に起業。
多様なニーズに応える製品づくりを目指す
事業にかける思い
起業のきっかけは、東日本大震災だった。同社代表の岡野秀生氏は、もともとオリンパス株式会社にてICレコーダーや医療機器の開発に携っていた人物。「自身のノウハウを活かして被災地復興を支援したい」という思いがあったという。
ちょうどそのころ、宮城県にて医療機器産業のクラスター化を目的としたイノベーションプログラムがあることを知り、地域連携コーディネーターとして参画。東北大学の研究成果からシーズを探るうちに、導電性シルクを研究していた鳥光慶一教授に出会い、2015年に6月に起業した。
昨年、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業化支援先に採択されたのを機に、株式会社クラレと共同で合成繊維を使った電極の量産技術を確立。合成繊維は、シルクより低コストで量産可能という利点がある。現在、より先進的な技術を開発すべく、国立研究開発法人 農業生物資源研究所と共同で新たなコーティング技術の研究に取り組んでいる。
今後は、複合的な素材への展開も。例えば、汗に触れることで血糖値を測定できるといったものだ。現在、国内外問わず多数の企業から問い合わせがあるという。「パートナー企業を増やして、さまざまな分野のニーズに応えたい」と岡野氏は意気込む。
「まずは、ユーザーの拡大が第一。量産体制を整え、さらなる低コスト化を実現したい。今後は心電計測や電気刺激など多様な製品への応用展開を図り、BtoBビジネスを拡大していきたいと考えています」
エーアイシルク株式会社 | |
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代表者:岡野 秀生 氏 | 設立:2015年6月 |
URL:http://www.ai-silk.com/ | スタッフ数:8名 |
事業内容: シルク製電極「エーアイシルク」の製造、販売 |
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これまでの資金調達額(出資額)と主な投資会社名: NEDOの助成金とDraper Nexus、東北大学ベンチャーパートナーズ、アシックスベンチャーズなどから総額2億8000万円 |
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ILS2018 大手企業との商談数: 13社 |
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