電池とケーブルが不要のセンサモジュールで、
インフラ、自動車などの巨大市場に挑む!

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 髙橋 光二 編集:菊池 徳行(ハイキックス)

振動することで発電する自立電源と、
無線装置やセンサを組み込んだモジュール

事業や製品・サービスの紹介

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仙台スマートマシーンズ株式会社は、東北大学未来科学技術共同研究センターの桑野博喜教授グループが開発した「振動発電デバイス」を用いた自立電源無線センサモジュールの実用化のために設立された、同大学発のベンチャーだ。

同モジュールは5cm角ほどの大きさで、自立電源(エナジーハーベスタ)と、振動や温度などのセンサ、および無線装置によって構成されている。ちなみに、エナジーハーベスタは15㎜×15㎜程度のキャラメル大で、心臓部は耐久性のある薄いステンレス板の上に窒化アルミニウムによる薄膜を形成したもの。容積1ccあたり振動加速度1gで約1mWの電力を生じる。

この電力を取り出してセンサや無線装置に給電することで、電池交換不要・ケーブル不要のセンサモジュールとして機能させることができるというわけだ。

目下、株式会社ネクスコ・エンジニアリング東北と組み、高速道路の路面状況データのリアルタイムモニタリングの実証実験を行っている。路面の凹凸やクラックなどを発見し、事故防止につなげるためのものだ。既存の路面測定車は精緻な測定が可能だが、諸制約により高頻度で行えない課題があった。

当該実験では、「ネクスコパトロールカー」のサスペンションに本モジュールを設置し、通常走行時に測定を行う。1台のモジュールの測定性能や情報量は測定車には及ばないものの、複数台のデータを集めることで必要な情報として整理し、かつ毎日測定することで経時変化を分析できるメリットが期待されている。

台車に関連した鉄道のインシデント。
同様の危険を解決できる可能性がある

対象市場と優位性

本モジュールの設置対象となるのは、化学や製鉄などのプラント、工場、橋梁といった振動が生じる設備や、鉄道車両、自動車などの振動する移動体などだ。ちなみにプラントでは、異常を感知するセンサモジュールが数年前から利用され始めている。しかし、大半は有線でデータを送るものであるため、設備にケーブルを這わせる、格納するなどの面倒が生じている。

また、ケーブルのない無線式のものは電池式であるため、交換の必要が生じる。その点、本モジュールは振動によって自立発電し、無線によって計測したデータを送信することができるので、電池交換やケーブルも不要。これが大きな競争優位性となっている。それらの点が評価され、複数のユーザーとの実証実験につながってきている。

鉄道分野においては、欧州では数年前から車両にセンサモジュールを取り付けられるようになってきているが、日本では広く採用されるには至っていない。そこで同社では、鉄道への適用を目指して、事故防止策としての採用を働きかけているところだ。

「センサ・コミュニケーション・システム」構想の
実現を全力で推進していく

事業にかける思い

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桑野教授は、前職であるNTT時代から、センサが測定した各種の情報をネットワークに乗せ、設備保守や環境保護、安全・安心のために活用する「センサ・コミュニケーション・システム/ソサエティー」を提唱していた。

2003年、東北大学大学院工学研究科教授に就任後、提案実現のため、科学研究費助成事業や経済産業省・IT融合プロジェクト、NEDO・ナノテクノロジー先端材料プロジェクトなどの研究費を活用。要素技術となるエナジーハーベスタやマイクロセンサなどの研究開発を推進。性能を飛躍的に向上させたセンサモジュールの開発に目途をつけた。

そこで、その実用化のため、大学時代の同級生であり、住友金属工業で鋼管の技術に従事していた高間舘千春氏に社長就任を要請し、仙台スマートマシーンズを設立したのだ。

「自立発電装置の製造には、クリーンルームが必要であったり、モジュールの製造にもさまざまな専用装置が必要となります。それらに関しては、東北大学の仕組み、マイクロシステム融合研究開発センターなども有効に活用する事で効率的に進めています」と、大学発ベンチャーのメリットを話す高間舘氏。

一方、少人数のスタートアップベンチャーゆえに、クライアントのカスタマイズニーズ対応に苦労する局面もある。しかし、今後の可能性は大きい。「これからの社会において安全・安心の確保のためには、多様なセンシング技術が不可欠のはず。当社初のセンシングモジュールの市場が格段に広がると期待しています」。

仙台スマートマシーンズ株式会社
代表者:CEO 高間舘 千春 氏 設立:2016年5月
URL:http://www.ssmcoltd.co.jp/
事業内容:
自動車、鉄道車両等の過酷振動系に設置可能なIoTデバイスの開発と製造・販売ほか
これまでの資金調達額(出資額)と主な投資会社名:
東北大学ベンチャーパートナーズから1億4000万円
ILS2017 大手企業との商談数:
13社

当記事の内容は 2018/5/8 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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