顧客単価の平均が1万円程度のハンコネットショップで、売り上げ5億4000万円を達成したのが「ハンコヤドットコム」。まったくの未経験から始めて、超人気店にまで登りつめた秘訣は何か?その秘密に迫る。
- 目次 - いくつかの商材からハンコに勝負をかけるサービス業を営んでいる実家の家業を手伝っていた藤田さんは、windows95が発売されたことがきっかけでパソコンを購入。副業として、ネットで商売ができないかと考え始めたのがネットショップを始めたきっかけだったという。 「早速、見よう見まねでネットショップを立ち上げ、めがねやハンコの販売だけでなく、結婚仲介サービスまで始めました(笑)。ですが、ちっとも売れずに、 初年度はハンコがたったの10本程度。でも、そのほかの商材はまったく売れなかったし、中でもハンコの粗利が一番高かったことと、配送がしやすいので全国 を相手に商売ができると思ったから、ハンコに絞ることにしました」 とはいえ、ハンコを商材に選んだのも知人がハンコの問屋をやっていたことがきっかけ。まったくの未経験からのスタートだった。それが今では3~4万商品をそろえる超人気店に成長。
独自ドメイン取得で信頼性アップ ネットショップもハンコもまったく始めてだった藤田さん。ネットショップの先駆けとして有名だった「心斎橋みや竹」が、彼のお手本だった。 その頃、藤田さんの競合となるハンコのネットショップも何店か出始めたが、すべて実店舗を持つハンコ屋がネットショップを立ち上げていた。そのため、ネッ トショップに注力できず、サイトのつくりが雑だったり、更新が止まっていたりと苦戦を強いられる中、藤田さんは、着々とサイト作りのコツをつかんでいた。 「実店舗を持つ人たちは、ハンコはこう売るものという既成概念があるようですが、未経験の自分にはそんなこと関係なし。自由な発想でハンコを売るためのサイト作りを考えることができました。それが逆に功を奏したと思います」 楽天やyahoo!にも出店するハンコヤドットコムだが、そこでの売り上げは伸びず、逆に直接自社サイトに来るユーザーが圧倒的に多いのが特徴だ。
実店舗より早い短納期が勝負 「ハンコヤドットコム」が大事にしていることのひとつに、スピードが挙げられる。 開業当初は、注文を受けるとファクスで知人の会社にハンコ制作を発注し、仕上がった連絡を受けて引き取りに行き、藤田さんが発送していた。しかし、これで はオーダーを受けてから配送まで1週間以上かかってしまう。そこで、ある程度売上げが伸びてきたときに彫刻機を導入。注文を受けたらその日に制作すること ができ、発送までの時間が飛躍的に短くなり、短時間の納期が実現した。 「今では1日平均200件近いオーダーが入りますが、スタッフを増やしてスピーディーな対応は変えていません」
起業ブームに乗って会社設立セットが好調商材をハンコに決めた後は、さまざまなタイプのハンコを取り扱うようになった。個人向けの実印などが多かったが、その後は起業人気に押され、会社設立 セットなどのハンコの依頼が増えてきた。そこで、起業の際は名刺やネームプレート(表札)も新たに必要になることが多く、顧客単価を増やすためにも新サー ビスを導入。それが、「表札館」「シャチハタ館」「名刺館」などで、次々と専門サイトページをオープン。 「そして、大型製造機械を導入して受注体制を新たに構築しました。会社もマンションの1室から工場を併設している場所に引越したほどです。でも、 この機械を導入したおかげで、取扱い量が増えてもオーダーを受けてその日のうちに制作することができ、スピードも確保できました」
この製造機械は1000万円近くするものだが、藤田さんは会社の資金が十分に貯まってから購入をしたため、経営を圧迫することはなかった。 「名刺印刷、会社のネームプレートなど、ワンストップでできることが好評でした。特に、今年5月の新会社法施行に伴って起業する会社も増え、まさに特需ともいえる売り上げを記録しました」
トップページの更新感に徹底的にこだわるハンコは長く持つものなので、リピーターはほとんど見込めないという藤田さん。ただし、サイトのトップページは、更新感を出すことに注力してきた。 「いつまでたっても何も変わらないと、ユーザーからはショップに対する不信感が生まれてしまう。少しずつでも動きをつけて、ほかにも多くのお客さんが来ているんだという安心感を持ってもらえるようにしています」 トップページには、月替わりのキャンペーン商品コーナーを設け、ユーザーが毎月見にくる動機形成を行っている。セット商品などの特価コーナーが人気だ。 また、サイトは開業当初はすべて自分ひとりで制作を行っていたが、今ではWebデザイナーを使って、見た目の美しさも追求している。藤田さんがサ イトづくりで苦労した点は、商品紹介をする際の商品写真と解説文のバランス。商品を説明しようとすればするほど解説が長くなってしまうが、なるべく簡単に 解説して、デザインのバランスも大事にした。
新聞にも出稿して自社のブランディング化リピーターが少ないため、あえてメルマガは発行していないという藤田さん。ただし、宣伝には積極的に取り組んでいる。ブランディングを徹底するた めに、新聞の全国紙に広告を出稿したり、雑誌でも告知をしている。もちろん最初からできたわけではない。売り上げや受注体制を見ながら、ムリのない範囲で ひとつずつ実行している。全国紙の出稿では価格も高く無謀とも思えるが、そこから得る信頼感と反響は十分担保できているという。 |
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藤田 優さんプロフィール |
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大学在学中から家業のサービス業を手伝い、卒業後、正式に入社。96年に始めたネットショップの副業が成功し、いつしか本業となる。
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会社概要
株式会社ハンコヤドットコム
URL/http://www.hankoya.com
開業年月/1997年2月
売上高/5億4000万円(2006年6月期)