その時、偉人たちはどう動いたのか? 松下電器産業創業者 松下幸之助 2

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

エピソード2「経営指導料」
「合弁会社の経営は誰が行うのか。松下電器ではないのか。ならば、“経営指導料”をもらってもいいのではないか」 (57歳:創業34年目)

 この前年からオランダの総合家電メーカー・フィリップス社と合弁会社を設立する提携交渉を始め、1年がかりで調印にこぎつけた時のエピソード。

 かねてから、欧米の技術を導入する必要性を感じていた幸之助は、戦前から取引関係があり、会社の生い立ちや形態がよく似ていて学ぶところも多いと感じてい たフィリップス社を提携相手に決めた。先方も「これは提携ではなく結婚である」といってきたほど“相思相愛”であった。
  片腕ともいえる髙橋荒太郎専務を交渉に向かわせ、精力的に折衝。しかし、提携交渉は思った以上に難航した。フィリップス側は、新会社に対してイニシャル・ ペイメント(実施料)55万ドル、株式参加30%および技術援助料として7%を要求してきたのである。

「イニシャル・ペイメントと株式参加は仕方ないにしても、技術援助料7%は納得しかねる。技術を導入する立場だから払うものは払うが、では合弁会社の経営 は誰が行うのか。松下電器ではないのか。ならば、“経営指導料”をもらってもいいのではないか」
  そう考えた幸之助は、このことをフィリップスに要求。「そんなことをやった経験はない」と突っぱねる相手に、一歩も引かなかった。あわや決裂寸前というと ころで、髙橋専務の説得が奏功。松下を「頼もしい会社」と見たフィリップスはついにこの要求を呑んだ。

  結局、技術援助料4.5%を支払う代わりに、経営指導料3%を受け取ることで落着。幸之助自らフィリップス社に出張し、調印した。

  両社の合弁で松下電子工業株式会社が設立され、電子管や半導体を生産。それらを使用したラジオやテレビは高い評価を得るに至り、松下電器製品の品質を世界 的な水準に高めることになったのである。

  15年後の契約更改までに、技術援助料と経営指導料は3%と2%に改定されていたが、更改時はついに2.5%の同額になった。

私 たちならこうする!

(株)ネクシィーズ代表取締役社長 近藤太香巳氏

今は「イニシャル・ペイメント」とか「技術援助料」などという概念はないんじゃないですかね。僕だったらその条件は飲みません。合弁というのは、対等にお 互いの力を生かしていこうということだと思いますから。
僕がこのエピソードで感じ入ったのは、「会社の生い立ちが似ている」という理由でフィリップスと提携したということです。企業文化を共有できるということ は、企業同士の提携では非常に大切だと思うんです。最近のM&Aは、うまくいかない時は買収側がサッと引いていくというか、冷めた感じがします。 また、敵対的買収なども、力でねじ伏せても相手の従業員と企業文化なんて共有できません。それではうまくいくはずがないのです。
だからこそ、提携や合弁は50対50か、51対49か、いずれにしろお互いに力を出し合ってIPOを目指しましょう、というシンプルな形が一番だと思いま す。

シナジーマーケティング(株)代表取締役社長 谷井等氏

このエピソードのケースでは、当初はフィリップスが有利ですが、僕なら不利な場合は無理に提携しません。対等以上でなければやらないでしょう。
僕もポリシーを持って事業を運営しています。不利な条件だと、ポリシーを曲げなければならなくなります。目先の売り上げ拡大より、社会的に実現していきた いことをやりたいという根っこの部分にこだわっていきたいと考えています。

際コーポレーション株式会社 代表取締役 中島 武氏

僕は、幸之助さんはフィリップスが自分たちと組みたいと思っていること、腹の中を見抜いて交渉に出たんだと思いますね。したたかな人だと思います。だっ て、そんな指導料なんて取られるの、悔しいじゃないですか。そこでいろいろ考えて、対抗策を思いついたんでしょう。
飲食業界でも、海外の有名レストランを日本に持ってくる場合など、見下された契約にされてしまいがち。シェフが来日する時はファーストクラス料金を負担し ろ、とかね。そんな時は憤慨して、正当に計算して利益の何%を払うといった割り切った契約にしたほうがいい。でも、日本人は交渉下手だからなかなかできな いんだけどね。

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