大手企業でOL勤務をしていた御手洗さんは、OLをターゲットにした癒しのサロンを経営。旧来のエステサロンにはなかった「デイスパ」という新しいコンセプトがOLたちのハートをつかんだ。妥協せずブランドイメージを確立させた、彼女のこれまでとその戦略を徹底紹介する。
顧客の80%以上がリピーター!スキンケアやボディセラピーなどのトータルな癒しを提供するサロン「ネイチャーズ」を経営する御手洗さんは、もともと大手石油会社のOLだったという。
御手洗さんは、姉夫婦のアメリカ移住以来、アメリカへ旅する機会が増え、現地の女性の暮らしを目の当たりにする機会も多くあった。
「当時、日本のOLは結婚して専業主婦になることが当たり前だったのに、アメリカの女性は結婚後も仕事と家庭を両立させ、美しく自分らしく生きていまし た。自分の将来についてあらためて考えさせられ、人生を切り替えるために、会社を退社して半年ほどアメリカへ留学することにしたんです」
帰国後、化粧品会社の女性社長に出会い、仕事を手伝うことに。組織作りや経営実務、ビジネスマインドについて学んでいく。
「このときに、現在のビジネスパートナーである副社長にも出会えたんです。互いに補い合える力を持つこの2人でなら起業できると思い、ニューヨークで話題になっていた『デイスパ』をコンセプトに、サロンをつくることにしました」
デイスパの原型となる「スパ」は、セレブたちが数週間かけて滞在し、体と心をリセットする癒しの場だ。ニューヨークの多忙なキャリアウーマンたちは、デイスパに通うことで、短時間での癒しのトリップを楽しんでいるのだという。
「デイスパは、お洒落なライフスタイルの一環でもあります。コンプレックスを解消するために通うエステとは違い、優雅に癒しの時間を過ごすことで、自分を リセットして元気になれる場所なんですよね。OLとしての自分が行きたいサロンにもっとも近いもの。それがデイスパだったんです」
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ターゲットは、銀座のOL。
立地からコースメニュー、価格、営業時間まで、細やかに焦点を合わせた
ターゲットは、銀座のOL。
立地からコースメニュー、価格、営業時間まで、細やかに焦点を合わせた
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御手洗さんは、ゴージャス過ぎないステイタス感を大事にし、あくまでOLが楽しめるお洒落なサロンづくりを目指した。当時の日本ではデイスパ自体が浸透していなかったため、まずはこのコンセプトを理解してくれる層がいる場所を探した。
「すべては立地にかかっていると思いました。銀座は、本物志向の大人が集まるステイタスのある場所ですし、アンテナ感度の高いOL が多くいるはずだと考えたんです。女性が入りやすい店にするため、雑居ビルやイメージのよくないとおりの近辺などは避け、周辺環境にも妥協せず物件を探しま した」
また、当時のエステが持っていた不明瞭な部分をすべて解消。OLが安心して楽しめることに焦点を合わせ、システムづくりを考えた。
「料金の設定が不明であることや、自分で施術コースを選べないこと、営業時間が短いために仕事の後に通えないこと…etc。エステに持つような不安をすべ て解消していこうと思い、まずはOLが月に1~2度通える程度の価格設定で、施術ごとの支払いを基本にしました。コースについては、ニューヨークのデイス パと同じようにたくさん用意し、毎回いろいろなものを自分で選べる楽しみをつくっています。それぞれのネーミングも月並みではなく、お洒落でイメージしや すいものにしました。日常からエスケープしたい方のためのフェイシャル&ボディトリートメントコース『ギンザ・エスケープ・ワン』、ストーンセラピーで心 身ともにリラックスできる『ストレスバスター』など、工夫しています。また、営業時間を夜の22時までにし、お勤め帰りでも利用できるようにしました。さ らに、こういった情報をすべてホームページで公開し、初めての方も安心できるように配慮しています」
すべてにおいてこだわりを持つことで、
信頼できるブランド「ネイチャーズ」を確立
御手洗さんが成功した最大の理由は、「ネイチャーズ」というブランドイメージを確立したことにあるだろう。立地やきめ細かなシステムはもちろん、内装、接客、宣伝、扱う化粧品にまで、こだわりを持っている。
「テーマは、コンプレックス解消のための場ではなく、お洒落なライフスタイルの一環となる場。内装もセンスの良さを感じさせるものを目指しました。 20~30代のOL の方が対象のフロアは、ポップなNYスタイル。プライベート感ある個室のフロアは、40代以降の女性起業家さんやカップルの方などが利用されるため、シン プルかつラグジュアリー感のある内装にしています。いずれも、『お客さまが第二の部屋としてくつろげる空間』をテーマに、置いてあるモノや香りまで、ひと つひとつにこだわっています」
従業員には、技術講習とともにマナー講習も受けさせ、高い技術とホスピタリティーを提供。宣伝は一切せず、「ネイチャーズ」のイメージに合う雑誌への露出と、ホームページのみ。取り扱い化粧品も、高品質であると同時に、手に入りにくいものを選んでいる。
「癒しの中心となるのは『人』ですから、人材教育には力を入れています。採用情報も、求人誌には出さず、ホームページ掲載のみです。人間性や癒しのマイン ドを持っていること、『ネイチャーズ』のカラーに合うような、落ち着きと親しみを持った人物であることを重視していますね。取り扱い化粧品については、従 業員がテスト済みの質の高いものしか使いませんし、オリジナルブランドでこだわりの自然派化粧品もつくっています。うちのサロンは、メンバーとビジターの 2タイプでご利用いただけますが、80%以上がメンバーさんです。クチコミでのご紹介も多いですね。宣伝をしてカラーの違うお客さまを集めるよりも、トー タルに『ネイチャーズ』のブランドを確立し、常にお客さまにご満足いただくことが大事なんです」
カップルや夫婦での利用を提案したり、新しい技術をメニューに取り入れるなど、楽しみ方に広がりを持たせる努力も怠らない。現在では、ニューヨークのデイスパのような形で利用する顧客も増えたという。
「『ネイチャーズ』という空間で過ごす素敵な時間を楽しんでいただきたいんです。コンセプトとともに、人を癒したいという想いを大切にし、長いお付き合い をしていただけるようなビジネスを続けていきます。ストレス社会の今、癒しから発展できるビジネスはたくさんありますから、いずれは『食の癒し』、『母子 の癒し』、『ライフスタイル提案による教育』なども手がけていきたいと思っています」
ここがOLのハートをつかんだ
・ステイタス感ある内装と高いホスピタリティーで、アッパーな時間を過ごせる。
・銀座という立地を活かしたうえに、22時まで営業することで、多忙なOLでも仕事帰りに通える。
・明確な料金設定と豊富なコースメニューで、気軽かつ飽きずに楽しめる。
御手洗るみさんプロフィール |
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1972 年東京都生まれ。短期大学卒業後、大手石油会社に入社し、一般事務、秘書業務を務める。1997年、会社を退社し、アメリカへ留学。半年後に帰国し、大手 化粧品会社にて人材マネジメントを担当。2000年、株式会社ネイチャーズ・インターナショナルを設立。「ヴァンテーヌ」「Oggi」などの女性誌に取り 上げられ、顧客数が倍増。2003年、1フロアだった店舗を2フロアに拡張。男性誌「BRIO」への掲載後、カップル利用や男性の顧客も増加。 |
会社概要株式会社ネイチャーズ・インターナショナル |