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カフェのきっかけは、常連客との貴重な談話時間
アンヅは、1992年、雑貨と本を扱う店として大阪・ミナミの東心斎橋でスタート。
当時、OLを辞め今後の進路を考えていた川島麻里さんは、
その頃 知り合った川井さんに誘われ共同経営者になった。
2年後、川井さんが洋服屋を始めたことでアンヅは川島さんに一任されることに。
そして3年経ち、在庫の置 き場に悩んでいたところ、
たまたま当時注目の南船場エリア近くの現在のビルが見つかり移転を即決。
2階は川島さんがオーナーを務める雑貨と本の店にカフェ を併設させ、3階は川井さんがオーナーの洋服屋とギャラリーを構え、4つの店を合わせてザ・アンヅショップという今の形になった。
川島さんが以前のお店で一番楽しかったのがお客とのお喋り。
実は、レジのあるカウンターの中に湯沸しポットを置き、店が暇な時にお客さんにコーヒー を出していた。
すると、いつしか彼女と話すことを楽しみに訪れる常連客が増え、川島さん自身多くの人との繋がりが何よりの財産だと思うようになった。
しかし、段々店が忙しくなり新規のお客さんが増えると、常連客が遠慮して帰ってしまうようになった。
「お店が忙しくなるのはいいことだけど、お客さ んと話す時間がなくなるのでは何のために店を始めたんだろうと思うようになって。
そんな時移転が決まり、ちょうど入居するフロアに以前のお店が使っていた カウンターがあったのでそのまま活かし、カフェスペースを設けることにしたんです」
元は雀荘だったため窓ガラスを隠すようにあった壁を壊し、一面窓にして明るい店内に。
後は自分たちで天井や壁を白いペンキで塗った。
カフェに必要な 食器やテーブルは以前から集めていた売り物や、作っていたオリジナル食器を、棚は拾ったりもらったりしたものを使うことにしたので費用はほぼゼロ。
本棚 は、以前から使っていた三段ボックスをそのまま移動させ、1997年、お店は再スタートした。
セレクトしないセレクトショップが人気に。
片や期待していた洋書が大阪では売れず驚愕!?
川島さんが思い描いたカフェは、
「肩の力を抜いた、超本格的ではない、雑貨っぽい雰囲気のメニューを置いた店。」
唯一のこだわりは仕入れ先のアメリカで見つ けていたフレーバーティーぐらいで、
後はコーヒーなど数種類のメニューだけ。
ケー キは、店の常連でカフェで働きたいと言っていた女の子を採用し作ってもらうことに。
数年後、彼女は自分の店を作って独立したが、今でも彼女の店からケーキ を仕入れている。
雑貨類は、当初100%アメリカから輸入し、それを売りにしていたが、
段々企業が参入してきたことで同じようなものが市場に出回り始め、個人では採 算が合わなくなってきた。
そんな時、国内メーカーや個人の作家さんから商品を置いてほしいという声がかかり始め、
今では海外国内問わずいいと思うものを扱 うようになった。
「今扱っている作家さんは20人以上。私の考えや好みが外れる場合もあるので、とりあえず預かって陳列します。
うちはこうだと線引きし商品がセレク トされすぎているより、たくさんの商品からお客さんが好きなものを見つけられる、
いい意味での雑さがいいかなと。
その結果、こんな棚びっしり状態になって しまったんですけどね(笑)」
本は、雑誌、絵本、インテリアやファッション関係の洋書が並ぶ。
中には1万円以上する高価なものも。
古雑誌は、古着と一緒で次に行ってもあるという 保証はないので
出合ったら買うのが鉄則だ。
お金のない頃は、どういうものを仕入れたらいいかわからず、
一度に大量に買うのも怖かったので、経費がかかって も手堅く買おうと
3ヶ月に1回仕入れに行っていた。
今は、国内仕入れも増え、海外にいる知人から送ってもらったり、
出版社へメールで発注できたりするので 仕入れに行くのは
年1回程度になった。
「本を扱ってみてわかったのは、大阪人は家の中のものへの投資は二の次になりがちで、
家や自分の内面を磨く本にはあまりお金をかけないんだなあとい うこと。
片や洋書は東京方面に人気が高いことがわかったので、2000年から知人の協力を得て作ったホームページに
通販ページを作り、遠方客にも対応でき るようにしました。
本の売り上げが当初の予想とは大きく外れた分、雑貨が大いに貢献してくれて助かりましたね」
移転8年目にたどり着いた今の形をいつまでも変わらず続けていきたい
2002年、アンヅは店内の改装を行った。
右フロアの端の壁に本棚を置き、カフェスペースでも本を見てもらえるようにし、左のフロアの三段ボックスだった 本棚を外し、頑丈な鉄の本棚を取り付け、安全できれいな収納ができるようにした。
「8年目にしてやっと落ち着いた」
と川島さんは笑う。
カフェは、いろいろ な利用方法も始め、夏はハワイアンの雑貨を飾って販売したり、大阪ミナミ芸術祭というイベントでニットカフェに場所を提供することも。
「うちの一番の褒め言葉は、“いつ来ても相変わらずだね”。
とにかく、こちらがスタイルを決めるのではなく、自然に受け入れてやっていければと思い ます。
今、きっちりコンセプトを作りこんだカフェが多い中、うちはあくまでも常連さんと喋る場としてカフェを作っただけ。
だから、飾りっ気はないし夢のよ うな空間でもない、本当に力を抜いている店ですが、
それでもよければどうぞみたいな気持ちです」
そうした気持ちで始めたものの、日によってお客さんが来ない日もあるし、
逆にやることがいっぱいあるのに忙しすぎてできない日もある。
そんな時も、 自分のテンションを一定に維持することが大事と川島さんは言う。
「ホームページも、申込もないのに作ってどうなるんだろうと思うこともある。
でも、やらないと反応は返ってこないというのは13年身をもって経験してきたこと。
やった分だけ何か返ってくると、最近は動揺せず仕事に取り組めるようになりました」
「私は元々カフェを開業するつもりはなかったし、販売経験もないまま店を始めて全部我流で覚えました。
最初からお店で働いた方が近道だったかもしれ ませんが、自分でやるのと給料をもらいながらやるのとでは心構えが全然違う。
自分でいろいろやりながら答えを見つけた方が、遠回りかもしれないけれどかえってよかった。
何もかも、自分で感じながらやっていかないとわからないことだらけ。
その経験から自分なりの理論を持ち、その上でお店を作っていくことが 大事です」
自分で店を作った意識はないという川島さん。
だがディスプレイにしろ商品セレクトにしろ、彼女の理論に徹して始めたアンヅは確かに川島さんカラーに満ち溢れている。
Q:どうしてカフェと雑貨と本のコラボを選んだの? |
雑貨と本を扱う店をしていた時、常連客とカウンターを挟んで過ごす時間が何より好きだったのに、お店が手狭になってしまってそれができなくなり、カフェにすれば、以前のレジ前とは別の空間としてゆっくり過ごせると思った。 |
Q:こだわりポイント |
・カフェ 雰囲気は「百貨店の地下のジューススタンド」。メニューは置いている雑貨同様、超本格的ではないけれど楽しい香りのするものを考案して増やしていっている。 ・雑貨ショップ 作家作品にしろメーカーからの仕入れにしろ、カテゴリーの枠は決めず、まずは出会いのあった作家さんやメーカーのものは置いてみるというのが信条。国内外から集まったものはその数、数千種類以上 ・本ショップ 洋書全般(主にファッションやインテリア関係)、小冊子、絵本、などを扱う。ホームページでのネット販売にも力を入れている。1940年代のヴォーグなどからミニコミ誌など多彩な品揃え。 |
Q:コラボをして良かった点 |
雑貨や本を選んでいる方が、ちょっと考える時間にとカフェを利用し、ムダ話でもしながら頭をリフレッシュしてのんびりしてもらって、買い物もできるところです。 |
Q:コラボをして悪かった点 |
ひとつもないです |
Q:売り上げ比率は? |
開業当初予測→カフェ10%:雑貨・小物45%:本45% 現実は?→カフェ10%:雑貨・小物65%:本25% |
ショップ概要 | ||
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