田中利明さん（1977年 石川県生まれ）
田中俊宗さん（1975年 京都府生まれ）
藤本修吾さん（1977年 大阪府生まれ）
映像系の専門学校で運命的な出会いを果たすものの、
卒業後はそれぞれの道に進むが、03年春にひょんなことから結集。
3人で起業を決意、現在に至る。
代表を務める田中利明さんと、田中俊宗さん、藤本修吾さんの3人は映像系の専門学校で出会って以来の仲だ。
卒業後はそれぞれ別の会社に就職するが、 約2年後の2003年春、田中利明さんはひょんなことからフリーランスとして独立する。
最初に引き受けた仕事が一人では手に余る規模だったため、
学生時代の友人である田中俊宗さんと藤本さんに協力を依頼した。
２人とも当時の仕事より、さらに充実した仕事を求めていた時期であり、
田中利明さんの誘いに二つ返 事で応じたという。
その後、3人は友人の部屋を間借りして、舞い込んでくる仕事を
着々とこなして実績を積み、初仕事から１年後の2004年4月5日に
会社を設立する。
「どうせなら最低の資本金からはじめようと、各人１円ずつ持ち寄り、
最低資本金規制特例制度を利用して会社を設立しました。
起業のきっかけをつくった仕事を持ち込んだのが田中利明だったことと、3人の中で一番口がウマイ（笑）ことから、彼を代表にしました」
（田中俊宗さん）
会社を設立した以上、いつまでも友人宅を仕事場にしておくわけにもいかない。
3人は事務所を構えようと物件を探し始めるが、一般的な事務所を賃貸するには資金がやや不足気味。
そこで、インターネットを活用してインキュベータ施設の情報を集めることに。
「当初は三宿や渋谷エリアを希望していたのですが、
この西日暮里スタートアップ・オフィス（NSO）は破格だったんです」
（藤本さん）
東京都荒川区の旧道灌山中学校を改装したNSOは、ベンチャー企業の育成等を目的に設立された施設だ。
入居時の保証料は1室20万円、毎月の家賃は水道料などの共益費込みで33,600円。
低家賃のインキュベータ施設にブース式が多いなか、
NSOは各教室を半分で仕切った約30平方メートルの個室で、
駅徒歩3分と交通利便性も抜群。
電話回線は各室1回線で、光ファイバーも通っているので通信環境も申し分ない。
「この施設には約20社入居していますが、ほとんどが僕らと近い業界にいるので、お互いに仕事を紹介するなどのメリットもあります」
（田中俊宗さん）
田中さんたちは見事審査に合格し、2004年10月からNSOに入居。
しかし、当然ながら設備投資にかける資金が豊富にあるわけではない。
大切な商売道具であるパソコン等の機材は各人の持ち寄りが基本。
新規購入する場合は既製品ではなく組み立て式にして、同スペックのパソコンの60～80％の予算で調達した。
机や打ち合わせ用のソファは店を回って低価格のものをセレクトし、
冷蔵庫や電子レンジは家で不要になったものを持ち込んだ。
また、半居抜き物件としてのメリットもあった。
「内装費は一切不要で、エアコンも備え付けられていました。
その他にも、前入居者が置いていったモニタなどを 活用できたし、
倉庫には鉄パイプや木材などの廃材が自由に使える状態で
置いてあって家具を自作できたので、設備投資は最小限に
抑えられました。
唯一 こだわったのはイス。長時間座りっぱなしの仕事ですから、
1脚10万円のハーマンミラーのイスを奮発しました」
（田中俊宗さん）
こだわりのイスのおかげか、田中さんたちの作品は評判がよく、これまでに営業らしい営業をしたことがないにも関わらず、潤沢に仕事の依頼が舞い込んでくるという。
2005 年3月期の決算では黒字が確実になったので、撮影用のカメラや編集用のDVDプレイヤー等を購入した。
以前から映像作品の編集や加工等は請け負っていたが、
「撮影から手掛ける事により、映像編集・加工だけではなく、仕事の幅も広がる」
（藤本さん）
ことから思い切って購入。
総額約40万円と安い買い物では なかったが、より高いクオリティを目指せる製作体制を整えられた。
今後、会社を大きくしたいという思いはあるものの、
「あまり先々のことを計算しないようにしている」
と藤本さん。
そして田中俊宗さんも
「楽しく仕事をしなが ら、普通の生活が出来ればうれしい」
と語る。
彼らの言葉の裏には、量よりも質が求められる仕事ゆえ、売り上げの目標達成だけに追われるような仕事はしたく ないという、クリエイターらしい本音が見え隠れしている。
3人の夢はまだ始まったばかり。今後の活躍に大いに期待したい。
