ディップ株式会社 代表取締役社長 冨田英揮さん
●愛知県生まれ。
大学卒業後、（株）地産に入社、ゴルフサービス会社などを経て、起業準備に入る。
1997年3月、ディップ株式会社を設立し、2004年東証マザーズに上場を果たす。
「はたらこねっと」「バイトルドットコム」「ジョブエンジン」 など、
日本最大級の総合求人情報サイトを運営するディップ株式会社。
創業当初、アイデアに自信はあったが、お金がなかったと語る冨田さん。
ベンチャーキャピタルの支援を受けながら、営業活動を続ける日々だった。
営業のための交通費がなく、2，3駅なら歩いて営業先に向かい、革靴はたったの2ヶ月で履きつぶしてしまうほど。
社員4人で食費が1000円という壮絶な時期もあった という。
コンビニ端末を使ったカタログ送付サービスを始め、軌道に乗った頃、
営業担当者を増やせばもっと業績が上がると見込み、人材を募集した。
「私の考えを理解して、売上げをきちんと上げられるスタッフを探すのは、大変なことでした。
スタッフは誰でもいいというわけにはいきませんから、妥協もできません。
人探しの難しさは想像以上でした」
その後、冨田さんは、現在のサービスとなる求人情報ポータルサイト事業に取り掛かった。
「またしても資金の壁にぶち当たってしまいました。
今度はシリコンバレーに行き、出資を仰ごうと思ったのです。
シリコンバレーならインフラが整い、出資力も高く、高い評価を得られると考えました」
現地で事務所やアパートを借り、約半年間必死になって企業をまわるが、出資を得ることができない。
これは、冨田さんにとっては想定外な出来事だったという。
「日本の企業には目が届かないから、出資は難しいというのです。あきらめかけた時、日本にナスダックができたというニュースが入り、すぐさま帰国してプレゼン。ナスダックから支持を得ることができたのです」
無事、求人情報サービスが立ち上がり、次なる狙いだったYahoo!との提携も長年の営業が実り見事に実現。
ユーザーの認知度アップには、大きな影響を与えるものだった。
「しかし、決してYahoo!との提携だけに甘んじてはいけないと思いました。
自社のブランディングをきちんと確立しないと、万が一Yahoo!との
アライアンスが終わった時に、大変なことになると。
ですから、タレントをイメージキャラクターに使い、
さらなる認知度アップやユーザビリティの向上を心がけました」
このヨミが功を奏し、Yahoo!とのアライアンス終了後も、
大きなダメージはなかったといい、冨田さんの想定どおりの結果となったのだ。
冨田さんからは、起業を目指す人たちにこんなアドバイスが送られた。
「いいサービスだから」「いいシステムだから」と、ビジネスモデルを過信してはいけません。
代理店や営業担当者の数だけに頼るのではなく、自分で営業をして、
顧客やユーザーの反応を肌で感じ取ってほしい。
営業をないがしろにして成功はあり得ません。
また、営業分析の検証を何度もして、あらゆる角度からリスクの 想定をすることで、成功確率はアップします。
また、資金計画は念入りに行い、特に収入部分は楽観的な見通しはタブーです」
「一度しかない人生、自分の夢を叶えるために頑張って悔いのないよう、挑戦し続けてほしいですね！」
想定内だったこと
●ブランディング
Yahoo!とアライアンスを組んでいた時、ユーザーへの認知度があがりましたが、
それに甘んじることなく、Yahoo!とのアライアンスが終わった時にもダメージが
出ることがないよう、タレントを起用するなど自社ブランディングに力を注ぎました。
想定外だったこと
●資金調達
シリコンバレーに行けば、投資先を見つけることができると信じ、半年間必死に企業をまわりました。
ビジネスモデルは高い評価を受けましたが、シリコンバレーから日本までは目が届かないので
出資が得られず、結果は惨敗でした。
●人材
業績が好調だったので、もっと営業担当者を増やせばさらに売上げアップすると思っていました。
でも、自分の意図がスタッフになかなか伝わらず苦労しました。
●想定外な出来事を回避するには？
すばらしいビジネスアイデアやサービスが生まれても、それだけに頼っていては何も始まりません。
それを利用してくれる人がいて、利益を生み出すのです。
営業は、「代理店に任せればいい」、「営業担当者に一任」ではなく、自分の肌で相手の反応を感じること。
