共同開発で研究費削減。沖縄初の医療品メーカー設立 / レキオファーマ株式会社

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

まったくの素人から医薬品メーカーを設立。
そんな夢のような話を実現した女性がいる。

開発費用15億円の捻出方法は?
開発方法は?

そんな疑問をレキオファーマ株式会社・奥代表に明かしてもらった。

沖縄県で生まれ、地元をこよなく愛する奥さんは、沖縄に産業を興すことが長年の夢だった。

「まずネックになるのは、沖縄では商品を国内に売るにしても海外に売るにしても、流通コストが高くなる。
だから付加価値の高いものでないと成功しないと思って、ずっと何かいいものがないかと探していたんです」

いつか産業を興すための資金を貯めるためと飲食店の経営をしていたある日、知人から、中国に痔に効くいい薬があると教えられた。

「現在、日本では重度の痔の治療には手術が必要ですが、
この薬は注射剤で局部に投与することで治療できてしまう。
まだ日本にはないものだし、これならマーケットも十分にある。
それに薬なら小さいので、低コストで流通できると思ったんです」

興味を持った奥さんは、早速、知人と北京に渡り、その薬を発明した教授のもとを訪ねた。
教授は痔の病気やこの薬の効果などについて熱心に語ってくれたとい う。
また、同行した知人が実際に痔だったので試してみると効果てき面。
製造方法も教えてもらい、これならいけると、開発を決意した。

 

何も知らずに始めた医薬品開発。最大の敵は資金繰り

帰国後は、知人を通して製薬会社のスタッフなど、専門分野の賛同者も得ることができ研究に取りかかる。
素人の奥さんは、独学で薬品の勉強をした り、国内の著名な医師にも相談するなど、
最初の2年間はさまざまな人に会い意見を聞き回った。
それと同時に、知り合いの病院にお願いして研究室の一室を借りな がら研究を行った。

「中国のオリジナルの薬は、沈殿物があるなど不安定だったんです。
それでは日本では厚生省に医薬品として認められないので、安定した状態にするように研究を始めました」

開発を決意してから2年後の1991年、株式会社中薬研(後にレキオファーマ株式会社に改名)を設立。
当初、用意した資金は1000万円。
しかし、その資金はすぐに底が尽きてしまった。

「薬の開発って安全性などを検証するために、たくさんの動物試験が必要とされるため、本当にお金がかかる。
一つの試験だけで5000万円かかったこともあるんです。
自分が薬について何も知らなかったから始めてしまったけど、
もし、これだけ時間とお金がかかると知っていたら手が出せなかったかもしれないですね」

県の産業振興公社に協力を得たり、ベンチャーキャピタルからの投資を受けるなどで、
約5億円程資金を集められたものの、すぐに研究にお金は消えてしまう。
常に資金繰りとの戦いだった。

 

研究期間14年、開発費用15億円!共同開発でついに誕生した新医薬品

転機が訪れたのは、会社設立4年後の1995年。
製薬会社と共同開発をすることにしたのだ。

「最初は自社で開発しようと思っていましたけど、研究を進めていくうちに自社の力だけで
医薬品の開発なんて到底不可能、他社の力が必要だと気づいたんです。
それで共同開発に協力してくれる会社を探して、開発力に定評のあった
三菱ウェルファーマ株式会社(当時は吉冨製薬株式会社、後に改名)と提携すること に決めました」

共同開発という判断は正しい選択だった。
三菱ウェルファーマの協力を得たことで不足していた資金力も技術力も補え、開発が進んだのだ。
新医薬品としての製造承認申請も先方が申請者となることで承認が得られた。

「当時は、既存のメーカーしか製造承認の許可が下りなかったんです。
そんなことも知らずにやっていたぐらいですから、自社だけでやろうとしていたらどうなっていたことか」

2005年3月、研究期間14年、開発費用15億円を費やし、ついに新医薬品「ジオン」の販売が始められた。

製品に提携先として自社の名前を入れることは絶対条件だったという。

「沖縄には医薬品のメーカーがないんです。
だから新しい産業として発信するためにも、沖縄の会社である
レキオファーマの名前を入れることが必要だったんで す。
今後、ジオン以外の医薬品や健康食品を手がけることも視野に入れています。
他社の力が必要なときは協力を頼むことが大切だとわかったので、
これからも 他社と共同開発していくことが多いと思います。
でも、沖縄の産業としてこだわりたいので、必ず自社で販売していくつもりです」

奥キヌ子さんプロフィール

奥キヌ子さん
撮影:国吉和夫

沖縄県生まれ。
大学卒業後、沖縄に産業を生みたいと5年間貿易業を営む。
その後、約20年間、飲食店を経営。
この間の1989年頃、痔の薬と出合い開 発を目指す。
1992年、前身の株式会社中薬研を設立し、代表取締役専務に就任。
1994年、同社代表取締役社長に就任。
2000年、レキオファーマ株式 会社に改名する。

会社概要

レキオファーマ株式会社
設立/1991年2月
資本金/8億8698万円

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