ストレスに悩まされる日々の中、自然の『癒し』をテーマに起業 / グリーン・コーディネータ

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

カウンター業務に憧れ旅行業への転職を決意

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アガタさんが高校を卒業して初めて就職したのは、石油会社の広報部。
一見華やかそうに見える反面、毎年同じことの繰り返し。
空虚な気持ちは膨らむばかりの日々だった。

このころ、海外旅行に行く楽しさ を覚え、旅行関係の仕事を目指して退社。
専門学校に2年間通い、旅行会社のカウンター業務の求人を探していた。

しかし、年齢制限もあっ てなかなか就職できない。
そこで添乗員派遣会社に登録し、さまざまな旅行会社の国内ツアーに添乗する仕事を始めることにした。
その後、国内線航空機予約セ ンターで受付業務を行う仕事を経て、ついに外資系旅行会社のカウンター業務の仕事にたどり着いた。
しかし、バブルが弾け景気の沈下とともにリストラが進み、今まで感じたことのないストレスに悩まされるようになる。

「そんな時、たまたま行ったキャンプで自然と触れ合ったことで、とても癒される自分を感じました」
 

きっとみんなも疲れている。自然回帰の時代を予感

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こういう厳しい状況におかれているのは自分だけではないはず。
自然に関わりながら、人を癒せる仕事がしたい。
そう考えたアガタさんは、グリーン・インテリアの専門学校に通うことを決意する。

「当時、やりたかったのはグリーンを通じて”ちょっと楽しい暮らし”をコーディネートすることでした」
 

いくつかのスクールを受講し、グリーン・アドバイザーの資格を取得。
園芸によってリハビリする園芸療法を学んだり、アメリカまでホーティカルチャー(園芸作業)セラピーの技術を見学に行くこともあった。

96年、昭和女子大の女性起業家支援講座を受講。
今まで通ったどのスクールよりも、みな真剣で緊張感があった。
あっという間に 2カ月が経ったその最後の日、話をしたこともない受講者5人で駅まで一緒に帰ることになった。

「偶然一緒に帰った彼女たちと、1ヶ月後にそれぞれの近況報告をしようと、再会を約束したのです」

みな夢はあるが、まだ独立一歩手前の仲間ばかり。
食事をしながらやりたいこと、不安などを口々に話し合った。
そして定期的に会い、情報交換をし、個々の人脈をひろげていくことになった。

異業種ネットワーク「シグマジェイ」(http://www.sigmajay.net)のスタートである。
 

紹介された仕事がきっかけでブレイク

98 年、専門学校で知り合った人から、初めて大きな仕事を頼まれた。
ゴールデンウイークにデパートが行うガーデニングフェアの講師をやってくれないかというもの。
材料の手配や教本作りなどを一人で全部やらなくてはならない。

まだ、仕入先すらもわからない状態だったが、思い切って引き受けた。
折りしもその年は ガーデニングブーム。
イベントで講師依頼が多く、一気に多忙になった。

その頃、シグマジェイの知り合いから、栃木県の小山グランドホテルのグリーン・コーディネートを依頼された。

「今までやったこともないような大きな仕事。
チャペルガーデンを作ったり、宴会場のグリーンも設計するなど、とても私一人の力では難しい仕事でした」

やっと巡ってきた大きなプロジェクト。
挑戦してみたいという気持ちがアガタさんの胸にわいた。
そこで、学生時代のグリーン・コーディネータの友人と2人でプロジェクトに取り掛かった。

「造園会社やグリーン・レンタルの会社はホテルからの指定でした。
しかし、とても尊敬のできる方たちでしたので、お互いの役割分担を理解して、よい仕事が一緒にできたと思います」

とはいえ、すべてが順調というわけではなかった。

建物の工事が遅れて作業が進められなかったり、オープニングまで変更事項が相次ぐなど、予期せぬトラブルも多発。初めての場面にも直面し、厳しい判断をせまられ困ることもしばしばだった。

しかし、アガタさんは文句を言う前に、
「いつも新しいことを教えてもらっている」という謙虚な姿勢を心がけて仕事をしたという。

「職人さんも時代に乗り遅れまいと、私の意見をよく聞いてくれましたよ。
私にとってはすべてが勉強でした」

彼女のひたむきな頑張りもあって、この大プロジェクトは成功を収めた。
それぞれの役割を尊重しつつ最大限の力を発揮して、ひとつのものをつくりあげる。
アガタさんにとっては、忘れがたい仕事となったと同時に、
グリーン・コーディネータの醍醐味を味わった瞬間だったのだろう。

アガタさんは、知り合う人から得た知識や人脈が、チャンスをつかむ原動力になり、助けとなっているという。

「自分がどういう分野でどんなことができる人なのか、この印象を相手に残すようにしています」

彼女は、人と植物の距離をもっと縮めるために役立つ仕事をしたいと思っている。
一見遠回りをしてきたようだが、やっと一生の仕事に巡り合えたと感じることができたのだ。

現在は、雑誌やカタログ撮影のグリーンに関するスタイリングや、個人宅の庭やベランダ、モデルルームなどのデザイン設計を多く手掛ける。
彼女の目指す、グリーンを身近に感じる生活の提案はこれからも続いていく。
 

【アガタ トモコさん プロフィール】

東京都生まれ。
高校卒業後、共同石油(現ジャパンエナジー)に就職。
その後、国際観光専門学校で旅行業を学び、旅程管理主任者資格を取得。
旅行会社の 契約社員として国内ツアーの添乗。
88年、(株)JALコーディネーションサービスにて国内線予約のオペレーション。
そして、89年クラブメッドで憧れのカウンター業務に。
95年、WACOAインテリアスクールグリーン・コーディネータ科に入学し、
(社)家庭園芸普及協会の公認アドバイザーの資格取得。
97年に起業。
著書に 『365日の花』(ブティック社出版)、『英語でガーデニング!』(増進会出版社)がある。

URL   :http://www.agata-tomoko.com
開業   1997年 7月
売上高   非公開
業務内容   ガーデンデザイン設計・施工
(個人邸、マンションのベランダ・専用庭、モデルルーム、店舗)、
撮影用グリーンコーディネート (雑誌、カタログ、パンフレット)、
ガーデニング講師(各種イベント)、
ガーデニングライター(雑誌、Webコンテンツ)

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