元コピーライターが開いた「東京料理」レストランとは? / 東京料理タケハーナ

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

東京料理タケハーナオーナー 竹花いち子さん(48歳)
どんなに好きな仕事であっても、どこかで自分の気持ちとすれ違ってくることはある。
そんなとき、あなたならどうしますか? 

コピーライター、そして作詞家として華々しいキャリアを積み上げてきた竹花いち子さんも、仕事と自分の気持ちに違和感を抱いたという。
そんな竹花さんが15年の 赫々(かくかく)たる実績を捨てて、
選んだ次なる夢は「レストランの開業」。
もちろん、そこには行き当たりばったりではなく、コピーライターとして培った
豊かなイメージの具現化、そして綿密な準備があった。

「へんぴな場所」にありながら、根強いファンと新たな顧客をひきつける
不思議なレストラン「東京料理タケハーナ」ををご紹介。
 

【夢が生まれた瞬間】

人気レストランを始める前、竹花さんは知る人ぞ知るコピーライターだった。
美大を卒業後、すぐにフリーのコピーライターとして独立。
もやもやとした時代のイ メージを、簡潔な言葉に収斂させる腕は鮮やかだった。
時を経ずしてコピー1本何百万円の仕事も舞い込む人気クリエーターとなった。

「当時はバブル真っ最中でしたからね。
仕事はたくさんありました。
だから、お金も知らず知らずのうちに入ってきて、
お店の開店資金の3,000万円もこのとき貯まったお金です(笑)」

仕事はどんどん広がり、コピーの世界から作詞の領域まで及ぶ。
人気アーティストに頼られる作詞家としても知られる存在となった。
ところが周囲の驚きをよそに、竹花さんは自ら築いた15年のキャリアをあっさりと捨ててしまったのだ。

「好きな仕事でしたが、どうしてもクライアントの意向に左右され、自分のやりたいこととギャップが生じるんです。
辞める5年前ぐらいから違和感を感じていまし た。
作詞を辞めたのは単純な理由。そ
のころザ・ブルーハーツが登場して、その詩に圧倒されたから。
そのとき36歳の自分に聞いたんです。
最高の自分を表現できるのは何だ?って。
で、気づいたのが小学校の頃から料理本を愛読した『食の世界』でした」

【起業への第一歩】

『食の世界』といっても、料理研究家としてレシピ本の執筆や料理学校の設立など、さまざまな選択肢があった。

「夢の表現方法には迷いましたが、最終的に選んだのは自分の店を持つことでした。
理由はお客様の喜ぶ顔を直接見たかったからです。
コピーライターの頃は、自分の作品が本当に喜ばれているのかどうかわかりませんでしたから」

レストラン開業の夢を実現するために、竹花さんは2年間かけて準備した。
自主トレと称して、週末ごとに友人を自宅に招いてオリジナルメニューを振る舞い、その一方で物件探しに奔走。
誰に教わるでもなく、すべてが自己流だった。

「たとえば、開業コンサルタントに相談するとかは、一切やりませんでした。
ただ内装業者さんのアドバイスはとても役に立ちましたね。
格安の物件や閉店した店の厨房設備を紹介していただけたので、
思ったよりずっといい条件でお店を開くことができました」

【その後、夢は育ってる?】

竹花さんが誰のまねもせず、自分のイメージに忠実に作り上げた店は一風変わっている。
最寄り駅からなんと徒歩15分。
歩いて行くにはちょっと不便だ。
しかも 看板も出ていない。

「へんぴなところなので、看板ぐらい出した方がいいって言われるんですが、あえて出さなかったんです。
きちんと店を切り盛りできないうちに、いろんなお客 さんが入ってきて、
結局、店のイメージを確立できないということは、どうしても避けたかったので……」

竹花さんの客に媚びない「やせがま ん」は功を奏し、
「オクラのピクルス」や「東京チャーハン」「さばみそみりん干しのサラダ」など、
竹花さん考案のオリジナルメニューはたちまち評判となっ た。

徒歩15分の立地も、
「腹が減るだけおいしい料理がたらふく食える。歩いてみるだけの価値はあり!」
とグルメのサイトで紹介されるなどハンディにはな らず。
口コミで評判は広がり、開店以来、予約が途絶えることはない。

起業について「自分のやりたいイメージを持ち、妥協しないことが大事」と語る竹花さんの次なる夢は?

「屋台ですね。いつか自分ひとりで完結できる屋台をぜひやってみたい。
私の考えるサービスの理想の形なんです」

【竹花いち子氏プロフィール】
た けはな・いちこ 神奈川県生まれ。
77年に武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科を卒業と同時にフリーのコピーライターとなる。
1年目で大きな 新人賞を受賞するなど一躍、有名コピーライターとなりキリンビールやパルコのコピーを手がける。
一方で作詞活動でも人気アーティストに詩を提供するなど活躍。
15年のキャリアに終止符を打って91年にコピーライターを廃業。
レストラン開業の準備を始める。
93年、世田谷区代沢に「東京料理タケハーナ」を開店。
不思議な雰囲気とおいしい創作料理で人気を博す。

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