子どものころからお菓子づくりが大好き。小学生時代には自宅の居間を喫茶店に見立て、手づくりのドーナツで来客をもてなしていたという森田さん。結婚後、“ パンづくりもやってみたい”と、軽い気持ちでベーカリースクールへ通い始めた。ところが、やがて熱が昂じ、そのスクールの講師資格と教室開講資格を取得。 5年前、自宅でパン教室を開いた。
「ご近所のみなさんと語らいながらパンを焼く。気がつくと、私自身のパンづくりの腕前もぐんぐんアップしていきました。その頃はそれだけで楽しくて、起業はもちろんのこと、教室を大きくしたいという気持ちさえもありませんでした」
起業やビジネスの類には一切興味ナシ。そんな森田さんの胸に一石を投じたのが、2年前に知人の紹介で登録したドリームゲートだった。多種多様な起業家の体験談を通じて、起業という形で夢をかなえる生き方に初めて興味を抱いたという。
やがて、定期的に送られてくるメルマガで知ったセミナーに参加する。 起業家未満の卵たちに、ビジネスプランの基本を伝授するセミナーだった。
このセミナーでの出会いが、森田さんの起業意欲を呼び醒ました。
「参加者は50人ほど。主婦やサラリーマンなど、プロフィールはさまざまですが、“何か新しいことを始めたい”という思いは同じ。おおいに刺激を受けましたね」
ほ どなく森田さんは、HPを通じて個別注文に応じるオーダーメードのパン屋というビジネスモデルを思いついた。自宅パン教室の生徒が何より楽しんでいるの は、コロネのクリームのかわりにポテサラを詰めるなど、自分なりの工夫をこめたオンリーワンのパンづくり。
懇親会でも、“街のパン屋さんでは食べたいパンがなかなか見つからない”という声を聞いた。
実際にパン屋を開くには多額の開業資金を要するが、ネットショップなら教室の機材をそのままいかせる。
また、パンを売るネットショップはすでにあるが、オーダーメードの業態はない。“もしかしたら、うまくいくのかも…”
そして2005年2月、森田さんの起業魂に火をつけ る決定的な“事件”が起こる。
自らのアイデアをベースにアドバイザーの助言を加味して練り上げたビジネスプランが、
「ドリームゲートグランプリ」で3位入賞を果たしたのだ。
一説には、パン教室を主宰する人は全国で3万人前後。森田さんのビジネスプランには、この人たちを対象とするネットショップのフランチャイズ構想が盛り込まれていた。単なるパン屋に終わらない将来構想の厚みも、高い評価につながったようだ。
「専門家の方の評価ももちろんですが、一般審査員のみなさんが支持してくださったことが何よりの自信になりましたね」
入賞賞金30万円の一部は、教室を製造工房に変える改造費に充てた。2005年3月には保健所の営業許可も取得。 ホームページも開設。
仕入れや流通システムの最終調整を重ねながら、販売の予行練習を兼ねて、知人やご近所の方たちにオーダーメードパンの販売を始めている」
ふとしたきっかけで芽生え、すくすくと育ったミセスのチャレンジが、いま開花の時を迎えている。
- 目次 -
【起業まで】
2004年2月 : ドリームゲート主催のセミナーに参加し、起業の夢を抱く
2005年2月 : 「ドリームゲートグランプリ」に九州代表として出場し、3位入賞
2005年3月 : パン製造業の営業許可を取得
【会社概要】
オーダーメードパン屋
店主 : 森田久美子さん
開業 : 2005年3月
従業員数 : 1名
URL :http://ordermade-panya.com/