こんにゃくスポンジなどユニークな健康製品を次々に開発 / (有)山本農場

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

017「新しいビジネスチャンスは伝統産業のなかにこそある」

成功を収めた先端ビジネスの経営者 たちは最近、こう言う人が少なくない。なぜか。長く続いてきた産業には、「伝統」の名による確かな技術が継承されている。そして、なによりも、時代を経て も変わらない「ニーズの根底」を押さえているからだ。「伝統」に現代の最先端の技術を組み合わせて、深い井戸の底から、人間が求めてやまない「本当の声」 をくみ出すことができたらなら、これは成功間違いなしだ。もっとも、「本当の声」を聞き取る感性を持っていればの話だが。

いわば事業 家としてのセンスがあるかどうかということだが、実はお手本のような人がいる。こんにゃく製造という伝統的な「農」の世界から、「健康」をキーワードにユ ニークな商品を次々と生み出しているのが、山本農場を経営する山本浩さんだ。最大のヒット作はなんと、こんにゃくでできたスポンジである。

「冬 にたまたま外にこんにゃくを置いたままにしていたんです。翌朝外に出てみると、凍った天然のスポンジができあがっているではありませんか。それをお風呂に 持ち込んで使ってみると、これがなんとも気持ちがいい。うちのばあさんに聞くと、昔は冬になると外にこんにゃくを置いてスポンジをよく作っていたと言うん です。それを聞いて、『これはビジネスになる!』って直感的に思いました」

こんにゃく繊維だけでできたスポンジは、水やお湯につけるとふ んわりと膨らむ。植物性繊維 100%のため、従来のナイロン製などの製品と比べて肌にやさしく安全なのはいうまでもない。「生活の知恵」として、もともとは赤ちゃんの産湯にも愛用さ れてきたというだけあって、いま問題となっているアトピーや 敏感肌の人も安心して使えるという。こんにゃくスポンジのほかにも、山本農場は無添加の化粧 水やせっけん、下仁田ネギの栽培や健康食品の輸出など、次々と新しい商品とビジネスを開拓している。

「日本人に長く親しまれてきたこん にゃくは、さまざまな優れた特性を持っているんです。ここに新しい技術やアイデアを導入し、こんにゃくの持つ特性をより鮮明に発揮させれば、予想もしない 新しい製品や分野が開けてくる。それが当社の追求するテーマであり、ビジネスモデルです」

アイデアマンにして、事業意欲旺盛な山本さんだが、もともとはストレスや悩みを抱えるごく普通の会社員だった。

「地 元のこんにゃく製造会社に15年間勤めました。だんだんオジサンになるにしたがって、『自分はなんのために存在しているのか』とか『会社の存在価値って何 だ』と悩み始めたんです。青臭いんですが、会社員として限界を感じていました。そこで自分が長年、思い描いてきた自然の素材を基にした製品を開発し、安心 と健康を求めるお客様に届けるビジネスを起こそうと、90年に独立したんです」

独立し、実家の農家を基盤にした山本農場を立ち上げて開発したのが、先のこんにゃくスポンジ。アイデアは斬新でも、量産は容易ではない。製品化には 1年を要した。

「1000 万円を投入し冷凍庫を作ってこんにゃくを冷凍したんですが、中まで凍らないうちに破裂してしまう。それで、製造過程が似ている凍み豆腐のメーカーに通いつ めたりと、試行錯誤を続けました。結局、上州の空っ風、気温、湿度をいかに再現するか。より自然の状況を作り出すかにかかっているということに気がついた んです」

1年後、ようやく開発に成功。特許も取得した。いまでは年間35万個を生産している。

「完成まで10トンのこんにゃくを捨てましたよ(笑)。でも十分に元はとりました。だからといって単純な規模の拡大を図るつもりはありません。安心・うるおい・やすらぎを基本にした高付加価値商品の開発、提供を続けながら新しい農業の経営形態を確立したいですね」

 

【山本 浩氏プロフィール】

群馬県生まれ。こんにゃく芋の生産農家の長男として生まれる。大学中退後、地元のこんにゃく製造会社に15年間勤める。「自 然の素材を使った安全でやさしい商品を」という長年の思いを実現するために90年 8月に独立。(有)山本農場を設立。自社製品のほかに現在は化粧品や医薬品メーカーの OEM(相手先ブランド生産)を手がけるなど技術への信頼も高い。

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