わずか15歳でレンタルサーバーサービスを提供する(株)クララオンラインを設立した家本賢太郎さん。当然、会社の設立資金も限られていたので、ま ずは、自宅をオフィスとしてスタート。接客スペースがなかったので、打ち合わせの時はなるべく家本さんが出向くようにしたので、さほど問題はなかったと か。逆に、オフィスをもつという目標が励みになり、仕事も頑張れたという。創業1年後には、念願のオフィスをゲット!
創業当初、想定外に良いことが多かったという家本さん。当時、パソコン通信で偶然知り合った大手広告代理店勤務の方に、「創業記念に」とビジネス誌の記者を紹介してもらい、 15歳の起業家ということで取材を受けた。記事が掲載されたことで、会社の信頼度も上がり、営業先との話もスムーズになった。
「15歳の当時では、その価値は理解しきれていませんでしたが、その後、取引の現場では『記事を見たことあるよ』と、声をかけていただいたことも多く、何もバックがない当社にとっては、相当な力になりました」
営業面では、当初見込んでいた売り上げが上がらず苦労したことも。Webサイト上に広告を掲載すれば注文が入ると読んでいたが、あまり広告の効果が出ず、思 うように受注できない。家本さんはすぐに考え方を切り変え、すべてを自社で完結するのではなく、自社のサービスを紹介してくれる見込みのある企業に、積極 的に営業を行った。結果、自社営業と、それ以外の営業チャネルをもつことで問題はクリア。順調に売り上げを伸ばす仕組みづくりに成功した。
家本さんが、起業の際に注意すべきこととしてあげてくれたことがある。
「経 営者は常に孤独な存在であるという事実は、実は経営者にとって解決し難いかなりの問題です。これを解決しようとするために、経営者同士のコミュニティをつ くってお互いの悩みを共有することが多いのですが、時として『同じ時期に創業したのに、あの会社は自社よりもっと成長している』ように見えてしまうので す。そうすると、自分たちも早く成長しなければと思うあまり、背伸びしたくなる時があります。しかし、この背伸びが危険で、会社にいろいろなゆがみをつく り出すことに繋がりかねません。周囲は良いことと言いますが、それぞれの会社では内々で苦労しているものなのです。他人は他人、自分は自分。指標を他との 比較におくのではなく、本来もっている自分の目標に設定することを忘れてはならないと思います」
最後に、今後起業する人たちへのアドバイスを家本さんからもらった。
「経営者は、会社のすべてのことに関して理解する必要があります。例えば、技術職だった人が社長になると、技術のことしかわからないといいますが、それでは経 営者失格です。経営者には、総合的な力が要求されるのです。私自身も、創業から人事労務に疎かったことを、最近になって悔やんでいます。自分に不足してい る点を常に探し、足りない点は他から学べばいいのです。それが会社の形であって、経営者を強くする唯一の道だと思います」
想定内だったこと
●オフィス
自宅の一室をオフィスにして、事業をスタートしました。おかげで、資本金100万円でも何とか起業することができました。当時は、まだSOHOが一般的でなかったため、来客の際に自宅と兼用で驚かれることもありましたね。
想定外だったこと
●記事掲載
知人から紹介してもらったビジネス誌の記者の方が、雑誌で大きく取り上げてくれました。その後、営業活動をしていると多くの方に「記事を見たよ」と言ってもらい、設立直後の小さな会社でしたが、信用度はアップしました。
●営業
「Webサイトにサービス広告を出して、それを広告すれば注文が入るに違いない」と思っていましたが、考え方が甘かった!起業前に考えていたほど営業の成果が上がらず、苦しんだことも……。
●ロゴ制作
パソコン通信で知り合った大手広告代理店勤務の方に、著名なデザイナーさんを紹介してもらうことができ、会社のロゴを制作してもらいました。
想定外な出来事を回避するためには?
飲 食店やショップが、雑誌などに取り上げられたことがきっかけで、来店者数が伸びたという話は多い。雑誌に取り上げられるような店づくりをして、偶然取材さ れるのを待つのもいいが、自分から雑誌の編集部に告知するのも有効な手段。ただし、飲食店などの場合、来店者数が伸びた場合の受け入れ態勢ができていない と、逆に悪評につながる恐れもあるので、タイミングを見計らうことも大切だ。