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ディープラーニングと住み分けて先鋭化!
フットワークの軽いAIプログラムを開発
事業や製品・サービスの紹介
世界最速にして軽量実装が可能。株式会社エイシングが開発した「Deep Binary Tree(以下DBT)」は、これまでになかったAIプログラムである。AIといえばディープラーニングが知られる。画像や音声など多変量データの認識・解析に本領を発揮し、複雑なタスクにも対応できるアルゴリズムだ。
一方、DBTは真逆のアプローチ。100変数以下の少変量データを高速・高精度に扱うことに特化しており、ディープラーニングが苦手とする追加学習能力にも優れる。機械制御や統計解析に秀でたAIとして、自動運転、工業用ロボット、フィンテックなどへの活用に期待がかかる。
DBT導入のメリットは、高給のエンジニアを雇わずとも低コストでAIが導入できること。自動車部品メーカー、システムインテグレーター、製薬会社など、機械制御・統計解析分野の現場で採用が始まっている。表計算ソフト感覚で導入・活用ができるSaaS版の提供もあり、販路はさらに広がってきた。
DBTを搭載したAIチップは、従来のチップではあり得なかったスタンドアローンでの追加学習を可能にした。このチップにより、スマートフォンなどに搭載したAIの高精度で高速の応答が可能になる。エイシングは国内外のメーカーに、共同開発を提案していく構えだ。
2030年のAI世界市場は200兆円規模。
視線の先にはブルーオーシャンが広がる
対象市場と優位性
現在は空前のAI起業・事業化ブームといえる。ベンチャーや大手企業もAIを活用した機械学習モデル、サービスを提供している。しかし、そのほとんどはディープラーニングをベースにしたもの。グーグルやアップルなどもしのぎを削るレッドオーシャンでのビジネスなのだ。
エイシングはDBTという独自のアルゴリズムを擁し、ブルーオーシャンを形成。機能を機械制御にフォーカスして、ディープラーニングとの住み分けを明確に。リアルタイムに応答でき、逐次学習ができる「リアルタイム軽量AI」の分野を先導していく。
AIの市場は拡大の一途で、2030年には日本市場が78兆円、世界市場が1700兆円という試算もある。DBTがねらうリアルタイム軽量AIの分野は、エイシングの試算によると日本市場が12兆円、世界では200兆円というスケールだ。
自動車会社、自動車部品メーカー、ファクトリーオートメーションを扱うメーカー、センサー関連の企業と、IoT、ロボット関連の潤沢なマーケットが広がる。見込みどおり、それらの分野からはコンサルティング、共同開発などのオファーが続々。競合が見当たらないなか、日本発のアルゴリズムとして市場の寡占が視野に入ってきた。
DBTの技術優位性で2億円の調達に成功
世界市場の寡占に野望を燃やす
事業にかける思い
DBTを開発した金天海氏は、岩手大学の准教授。エイシング代表の出澤純一氏とは、同じ大学研究室の先輩後輩の間柄だ。
「金はロボット工学の研究に邁進。私はベンチャーを起業して医療機器を販売する一方、AIの事業化を模索し続けてきました。そこで出合ったのが、金が開発したDBTです。その先進性、独自性に可能性を感じ、AI開発に特化してエイシングを設立しました」(出澤氏)
DBTは高い評価を受け、2億円規模の資金調達にも成功した。大きな転機は、ピッチコンテスト「未来2017」で日本総研賞を受賞したことだったという。
「二次審査を突破したことでメンタリングの特典がついたんです。経験豊富な講師に事業計画や資金調達、チームビルディングまで徹底的に叩き込まれました。設立から半年で2億円の資金が調達できたのは、とことん実践的な指導があったからです。DBTの技術優位性があっても、適切なピッチがなければビジネスは進められません」
先進的なDBTを磨き、競合がないフロンティアをゆくエイシング。出澤氏は「軽量AIが求められる分野で、市場の寡占を本気で目指す」との野望を掲げる。日本発のAIアルゴリズムは、世界を目指す。
株式会社エイシング | |
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代表者:出澤純一 氏 | 設立:2016年12月 |
URL:https://www.aising.jp/ | スタッフ数:10名 |
事業内容: AIアルゴリズムの開発、AIチップの開発。AIに関するコンサルティング。 |
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これまでの資金調達額(出資額)と主な投資会社名: 合同会社テックアクセルベンチャーズより1億9800万円 |
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ILS2017 大手企業との商談数: 12社 |
当記事の内容は 2017/12/14 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。