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パーソナルAIで家族の個性を学習。
一家に一台欲しい、パートナーロボット
展開している事業の内容・特徴
ロボットが身近な存在になってきた。携帯ショップや企業の受付では、人型ロボットが出迎えてくれることもある。トレンドに乗って、さまざまなロボットが誕生しているが、ユニロボット株式会社がこの秋に発売する「ユニボ」(家庭向け:本体価格16万2000円、月額利用料5400円(いずれも税込み))は、一家に一台置いてもらうことを想定したパートナーロボットだ。
会話を楽しめるほか、「電気を消して」「写真を撮って」などと言えば、内蔵の学習リモコンやセンサー、カメラ等を駆使して、頼んだ内容を実行してくれる。購入時の基本機能は8種類。スケジュール管理や、食事や休みの過ごし方等の提案、ビデオ通話なども可能だ。専用の開発キットを使えば、「スキルパック」と呼ばれるユニボのサービスを追加することもできる。
ユニボが数あるロボットと違うのは、自動的に利用者の個性を学んでいく点だ。「最大の特徴はパーソナルAIです」と語るのは、ユニロボット株式会社代表の酒井拓氏。
「ユニボはパーソナルAIで、話しかけた人の顔や会話の内容を認識し、家族各人の好みや生活スタイルを学習します。学習した情報を元に、相手に合わせて提案をするので、話しかければ話しかけるほど、その人に最適な提案ができるようになります。目指しているのは、いつものび太くんと一緒にいるドラえもん。自然なコミュニケーションをとりながら個性を学び、人に寄り添う提案ができるロボットを目指しました」
著名デザイナーの手による愛らしい姿のユニボだが、こだわったキャラクター設定はほとんどない。ユニボのキャラクターに好き嫌いなどはなく、声(オプション)や動作も自由に変えることができる。これはどんな人でもユニボに親近感を持てるようにするための配慮。ほぼまっさらな状態のユニボに感情移入していけば、中身もどんどん我が家の一員らしくなっていく――これもパートナーロボットを標榜するユニボの大きな魅力の一つだ。
PCと縁遠い高齢者にこそロボットが必要。
“死の谷”を乗り越えたのは揺るぎない信念
ビジネスアイディア発想のきっかけ
以前は大手総合商社で、基幹系のシステム開発に携わっていた酒井氏。アメリカで最先端の技術に触れ、テクノロジーで社会を変えたいという思いを持っていた。10年に一度は大きな技術変革があるだろうとの予測から、関心を持っていたのがロボットだ。なかでもコミュニケーションに照準を当てたのには、理由があった。
「テクノロジーで社会に貢献したいと考えた時に気になったのが高齢者世代でした。インターネットで何でも検索できる時代ですが、膨大な情報の中から自分の欲しい情報に辿りつくことはPCを使いこなしている世代でも簡単ではありません。必要な情報をタイムリーに理解し、適切なリコメンドをするためには、話しかけると答えてくれるロボットが現時点では最良のインターフェースだと判断しました」
当時、すでに会話をするソフトウェアとして、Siri(Apple)があったが、せいぜい「検索して」程度で、会話を楽しんでいる人を見たことがなかった。そこで、ハードウェアを開発し身体性を持たせれば、ぬいぐるみやペットに話しかけるような感覚でパーソナルデータが入力・蓄積されるのではないかと考えたのだ。
しかし、このハードウェアの開発が後に、酒井氏に苦労を強いることになる。手づくりのプロトタイプ1体にかかった製作費は100万円。販売価格を一桁減らすために、金型をつくり量産化することは必至だった。ところが、一般販売するための安全性、耐久性試験等は厳しく、何度も再設計を迫られた。
「プロトタイプを作って、少しでも見落としを発見すると、その都度、設計を見直さなくてはいけません。その度に資金が飛ぶようになくなっていきます。試作品づくりで成功しても、量産化は別次元の厳しさで、資金や人的リソースもちゃんとバッファー込みで準備しておかないと、スタートアップベンチャーでは、乗り越えられないハードルでした。まさに“死の谷”でした」と酒井氏。
ハードウェアは改善に時には1、2カ月はかかる。納期を短縮して遅れを取り戻そうとすると、品質リスクが高まる。受託業務等は一切していないため、量産体制を整えるのと平行して、まとまった額の資金調達をする必要もあった。試作段階のロボットへの投資を躊躇する企業も多く、一時は資金が枯渇する寸前までいったという。
それでも諦めなかったのは、社会を変えたいという強い思いがあったからだ。商社時代から有志団体を主宰し、ゴミ拾いやNPO支援などの社会貢献活動に取り組んできた。だが、東日本大震災の被害の大きさを目のあたりにして「月に1回のゴミ拾いで世界が変わるだろうか」と思うようになり、起業して本気で社会貢献事業に取り組もうと決めた。その固い意志が“死の谷”を乗り越える原動力になった。
ロボットは冷蔵庫と会話する世界への通過点。
プラットフォーム構想を胸に事業会社と連携
将来の展望
ようやく迎えた、ユニボの発売。しかし、ゴールはまだまだ先にあると酒井氏は語る。
「ロボットは基本機能だけでは勝負できないと思っています。他のロボットをみても、基本機能の上に、さまざまなサービスをAdd-On開発し、サービスとしてロボットを提供しています。業界業種や、下手すれば家族ごとにロボットの使い方や、期待されていることが異なるため、重要なのはやはり拡張性で、今後より多くのパートナー様と協業をし、ユニボにさまざまなサービスが入り込めるような仕組みをつくりたいと考えています」
そこで、心がけているのが、事業会社との提携だ。とりわけ、創業期は大手との付き合いを重視しているという。ILSなど出会いの場を積極的に活用し、今もネットワークをどんどん広げているそうだ。
「商社時代に、あらゆる業種の大手企業と付き合うことの重要性を学びました。リソースが足りていないハードウェア系のスタートアップが生き延びていくには、大手の信用力を活用することも必要です。オープンイノベーションの大きな輪の中に入り、ユニボを開かれたロボットにすることで、社会へのインパクトを強めていきたい」
「ユニボストア」と名付けたアプリストアのようなものをつくり、ユニボのサービスを拡げるスキルパックを誰でも自由に作成し、公開できるようにしているのも、プラットフォームを意識しているため。拡張性や自由度を高めれば、大手も参入しやすくなる。
「将来的にはパーソナルAIだけでビジネスとして成立させることを目指しています。パーソナルAIが一般化すれば、あらゆる場所で気の利いたサービスが受けられます。たとえば、パーソナルAIのチップを組み込んだ冷蔵庫と『今日の献立は○○でどうでしょう?』『じゃあ、買物リストを出して』といった会話が可能になります。あるいは、ホテルがパーソナルAIを活用することで、初めて利用する顧客の好みの飲み物をあらかじめ用意することもできるでしょう」と酒井氏。
現在、受付中のユニボの先行予約は家庭向け、法人向けとも上々の滑り出しだという。冷蔵庫と会話する世界に向けた変革が今、始まろうとしている。
ユニロボット株式会社 | |
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代表者:酒井 拓 氏 | 設立:2014年8月 |
URL:https://www.unirobot.com/ | スタッフ数:15名 |
事業内容: 事業内容: 次世代型ソーシャルロボットの開発・製造・販売、人工知能・最先端技術に関する研究開発、これに付帯する組み込みソフトウェア全般の開発 |
当記事の内容は 2017/10/17 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。