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眼鏡にセットしてウインクで撮影。
新感覚のウェアラブルカメラ
展開している事業の内容・特徴
Blink(まばたき)で撮影するカメラだから、「BLINCAM」。株式会社Blincamが開発したのは、センサーでウインクを検知して撮影する新感覚のウェアラブルカメラだ。普通のカメラではシャッターを押したり、スマホであれば画面をタップしたりするところ、この「BLINCAM」なら両手はフリー。25gと軽量なため、眼鏡に簡単にセットして使える。自分が見たままの世界を画角に切り取れるのが大きなポイントなのだ。
Blincam代表の高瀬昇太氏によると、着想の段階から、「ウインクで撮影する」というプロダクトコンセプトに揺らぎはなかったという。
「『BLINCAM』は、意識的に強くウインクしたときにだけ反応する独自のセンサーを搭載しています。まばたきで撮れると、山のように写真が撮れてしまいますからね(笑)。もともと、僕が子どもと接していて思いついたアイデア。子どもにカメラやスマホを構えるとタイミングを逸したり、恥ずかしがったりして、なかなかうまく撮れません。自然な表情や仕草を見たままに切り取るのは簡単ではないんです。視界を脳に焼き付けるように残せるデバイスが作れないものか――開発の原点には、そんな思いがあります」
子どもや動物の自然な表情をスムーズに撮影できるだけではない。ハンズフリーで撮影できる「BLINCAM」は、料理、工作、スポーツなどの分野でも活用の可能性が広がっていくだろう。こんな新感覚の「眼で撮るカメラ」にガジェット好きのアーリーアダプターが食いつかないはずはない。2016年にはクラウドファンディングサイト「Makuake」で1300人以上から2643万円もの支援を集めた。そのうち約25%が海外からの支援だったという。
「BLINCAM」は「Makuake」出資者分への発送を終え、2018年内の一般販売に向けて量産の準備に入っている。「撮りたい瞬間をそのまま切り取れるカメラ」が一般に向け、広く届けられる日も近い。
モノを作って、世の中に出すまで、
「モノ+コト」を設計していく思想
ビジネスアイディア発想のきっかけ
起業前は外資系の医療機器メーカーでITシステムの開発をしていた高瀬氏。起業家を支援するピッチイベントをボランティアでサポートするうち、サラリーマンからのスタートアップが身近なものに思えてきたという。
「起業というと、借金をして背水の陣で臨む――そんなイメージを持っていましたが、私が接する起業家たちは一様にカジュアルに、自分がやりたいこと、解決したい課題に一生懸命に取り組み、ビジネスを立ち上げていました。それは忙しそうで、とても気軽には見えないけれど、どこか楽しげな姿に映りました。会社のため、出世のためではなく、自分の人生をかけられるものは、自分が起こしたビジネスの中にあるのかもしれない。そんな思いから、私もスタートアップに自然と進んでいったのです」
起業支援イベントのアシスト側から参加者へと立場を移した高瀬氏。モノづくりの経験、知識はなかったが、「BLINCAM」の独自性には自信があった。技術者、マーケター、クリエイティブなど、志に賛同する仲間が集まり、「BLINCAM」が単なる「モノ」ではなく「パッケージされたサービス」として形作られていく。
「目の回りで使うデバイスを開発しているモノ作りベンチャーはたくさん存在しています。『BLINCAM』もデバイス単体ではユニークさを訴求できず、埋没してしまったかもしれない。だけど、このカメラのストロングポイントは、『ウインクで撮影』という機能だけではありません。撮影した写真をチェックするアプリ、バックグラウンドで支えるクラウド、直感的に操作できるUXデザイン、さらにPRやプロモーション、マーケティングも考えました。ただモノを作るだけではなく、世の中に広く届けていくことを視野に入れて開発してきたのです」
クラウドファンディングで多くの支援を集めたのも、メディアの露出アップ施策、海外の支援者にもわかりやすいPV展開などがあったからだ。モノ単体の開発にとどまらず、サービスやUIまで設計していく「モノ+コト」作りの思想がそこにある。
究極のライフログツールとして、
眼鏡の先のウェアラブルカメラが起動する
将来の展望
「BLINCAM」を支えるのは特許出願済みのウインクセンサーだ。まばたき、ウインクではなく「強いウインク」を検知することで初めてカメラが作動する。さらに、アプリやクラウドネットワークとつながることでサービスは使いやすいものになった。センシング、クラウドを駆使した、IoT時代らしいモノづくりといえる。
今後、一般販売を考えると解像度やズームなど、カメラとしての機能向上が必須だろう。しかし、高瀬氏らはサービスのあり方について話し合い、構想を広げているという。今後は高度なセンシングに加え、ビッグデータを解析するAIとの連動を視野に入れてブラッシュアップを目指す。その先に見えるのは「人生をありのままに記録するカメラ」の姿だ。
「『BLINCAM』は眼鏡に付け、その人が見ている世界を主観的に映し出すカメラです。付けたまま日常を送ることで、日々のさまざまなシーンを自動的に撮影していくことも可能でしょう。撮りためた膨大なデータをAIが仕分けして、ここぞという重要なシーンを切り分けて保存することができるようになるかもしれません。その人が見た人生をそのまま記憶するツールにもなり得るのです」
これぞ、自分の視点をそのまま記録する究極のライフログツール。装着したまま年を重ねていけば、ICTによるバーチャル走馬灯すら再現できるかもしれない。もちろん、ハンズフリーで撮影できるウェアラブルカメラとしてのポテンシャルにも期待がかかる。災害現場を報道するメディア、スポーツなど、パーソナルユースから商業的な利用まで可能性は広がるだろう。「これまで記録できていなかった瞬間を可視化し、世界をビジュアライズしていきたい」と高瀬氏はビジョンを語る。「BLINCAM」は、私たちのどんな未来を切り取ってくれるのだろうか。
株式会社Blincam | |
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代表者:高瀬 昇太 氏 | 設立:2015年 |
URL:https://www.blincam.co/ | スタッフ数:4名 |
事業内容: 事業内容: ウエアラブルデバイス「BLINCAM」のソフトウェア、およびハードウェアの企画、開発、設計、製造、販売。 |
当記事の内容は 2017/10/12 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。