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非動物由来の人工コラーゲンを基材として、
アレルギーを引き起こさない製品を供給
展開している事業の内容・特徴
我々人間の皮膚や骨、あらゆる臓器は、すべからく細胞からできている。それら細胞の外側にあり、形成を支え、固定するなど重要な役割を持つタンパク質を、「細胞外基質」という。その働きが、細胞から成り立つ臓器を形作り、細胞の増殖・分化、遺伝的な性質や機能の制御、さらに、細胞が生きる環境を整える。中でも、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸は「三大細胞外基質」といわれ、それぞれに、異なる働きや特徴がある。たとえば、コラーゲンの場合、保湿力を持ち、繊維状を形成するなどして細胞を支える。エラスチンは弾力性を有し、ヒアルロン酸は体内に水分を取り込むための保湿基質として存在している。
近年、細胞外基質が持つさまざまな性質や機能を利用して、特徴的な化粧品(皮膚のしわやたるみなどを改善する効能・効果を持つ化粧品)、医薬品、再生医療用のシートといった医療材を製造するなどの、幅広い取り組みが行われている。
ユニクス株式会社は、非動物由来の原料から生成した人工コラーゲンを使用し、医薬品、医療材、医薬部外品や化粧品などの製品開発および製造・販売に取り組むバイオベンチャーだ。現在、コスメ、ペット医療、メディカルを中核とした事業展開を行っている。
2016年からは、人工コラーゲン(ハイブリッドコラーゲンともいう)を使った製品群を展開し、アトピー性皮膚炎患者や肌の弱い消費者向けの化粧品などの製品化を実現した。それにしても、なぜ人工的に作るのか?
「細胞外基質は、人間の体内に存在しており、人間が生きていくためには不可欠なものです。そのため、ヒトから抽出して、他の誰かに移植するというわけにはいきません。市場においては、人工皮膚といった医療材に、コラーゲンが用いられていますが、その多くは豚のコラーゲンです。しかし、動物から抽出したコラーゲンを使用すると、アレルギーによる炎症を増幅させてしまうことや、ウィルスなどの病原体の混入の懸念、さらに、動物特有の臭いを伴うなどの課題があります。そこで、アレルギーなどの問題が起きない細胞外基質、すなわち、非動物由来のコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸を人工的に作り、それらをベースにした安心・安全な製品を提供したいと取り組みを始めました。それがユニクスの出発点です」と代表取締役の竹林貴史氏が説明してくれた。
自分が目指すものをつくるために
起業家の道を選んだ
ビジネスアイディア発想のきっかけ
竹林氏は、大学卒業後30年にわたり、大手化学メーカーでバイオ系エンジニアとして勤務し、人工コラーゲンの実用化に向けた開発のプロジェクトリーダーを任されていた。
「仕事は楽しかったのですが、会社は応用開発を止め、末端製品化を断念することになりました。私は、そのタイミングで、会社からスピンアウトし、開発していた素材を活用しながら応用製品を作るために、ユニクスを2012年5月に設立。それから5年が経過し、研究課題も増え、それに合わせた製品開発が進み、さまざまな製品が誕生しています」
「基礎研究よりも、実用化研究の方が性に合っていた」と言う竹林氏。「現在、製品の企画・開発はすべて私が担当しています。起業の最大のメリットは、会社員時代とは異なり、意思決定は私自身で行い、スピード感を持って製品開発ができるという点にあります。前職でお付き合いのあった会社との関係は現在も継続しており、試作や製造については、それぞれの企業の得意分野に応じて依頼しています」
同社が開発している人工コラーゲンは、発酵法というバイオ技術で作られたアミノ酸を化学合成によって結合し作られたもの。動物由来ではないため、アレルギーの原因となる物質が含まれていないこと、ウィルスの混入の心配や動物特有の臭いがなく、さらに、熱にも強い。現在、同社製品の主要な販売チャネルは、顧客企業へのOEM供給だ。ユニクスのプライベートブランドとして提供し、委託販売を行う製品もあるという。
製品はハラールにも対応可能。
2021年をめどにIPOを目指す!
将来の展望
竹林氏は明確なビジョンを描いている。「2021年のIPOを計画しており、上場時には、80億円程度の年商を見込んでいます。当社にはビジネス的に大掛かりな大砲はありませんが、多くの機関銃を有しており、ひとつひとつばら撒いてきた種の芽が、今出始めているところです。いずれ、それらのビジネスの中から幹に成長してくれるものが出てくれば、IPOは達成できるでしょう。将来は、コスメ、ペット医療、メディカルの各事業を分社化し、それぞれの事業をそれぞれの判断で拡大していきたい」
コスメ事業で培った技術はペット医療事業に貢献できる。そして、その過程で得られた知見はヒトのメディカル事業につながる。「スタートはコスメですが、すでに並行して他の事業もかたちになりつつある。治癒例が増えれば、医薬部外品への応用も進み、横展開に弾みがつくでしょう」と語る竹林氏。2020年からは人工エラスチン(ハイブリッドエラスチン)製品群の開発、2021年には人工ヒアルロン酸(ハイブリッドヒアルロン酸)製品群の開発にも取り組む計画だ。
一方、海外事業も視野に入った。同社が開発した「人工コラーゲン」はハラール(イスラム法上で食べることが許されている食材や料理)にも対応できる。「ハラールと聞くと、食べ物を思い浮かべますが、彼らは、豚など動物由来の医薬品や医薬部外品なども使うことはできません。当社の人工コラーゲンは、そうした国や地域のニーズに応えることが可能と考えています」。もちろん、ハラール対応のみならず、広く海外への事業展開を考えている。実際、同社が開発した介護用の化粧品は、中国からの引き合いもある。
2016年度の年商は約2000万円、2017年度は5000万円、2018年度は3億円の年商を見込む。オーダーが急増しており、現在、開発や供給が追い付かない状況だという。
「経営資源を拡充し、当社の製品を必要としている方々のニーズにお応えできるよう、一刻も早く体制を整えたい。細胞外基質を単独で使用した製品群の開発に加え、将来は、3種類の細胞外基質を組成化し、新たな材料を作ることも考えており、現在、増資の計画も進めています。当社に興味のある企業、とりわけ、バイオケミカルやヘルスケア分野で、ご支援を検討されている方がいらっしゃれば、ぜひお声掛けください」
細胞外基質にどのような付加価値をつければどのような製品が開発できるのか。そして、その製品はどんな社会貢献ができるのか。そのアイデアが、竹林氏の頭の中にまだまだある。
ユニクス株式会社 | |
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代表者:竹林 貴史 氏 | 設立:2012年5月 |
URL:http://www.uniqs.co.jp/index.php | スタッフ数:2名 |
事業内容: 事業内容: 機能性化粧品、医薬部外品、および関連製品の開発と製造販売など |
当記事の内容は 2017/10/10 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。