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人工知能とWeb接客センターが24時間体制で
ECサイト来訪者の買い物をサポート
展開している事業の内容・特徴
「仕事に使えるキレイめな服を探している」と訪ねてきた買い物客に、「こちらの服はいかがでしょうか」と販売員が提案する――。リアルのアパレル店舗でよく見られるコミュニケーションが、今、ECサイトやアプリ、SNSなどインターネット上でも繰り広げられている。その仕組みを企業向けに開発し、提供・運営しているのが株式会社空色だ。
同社が手がけるWeb接客ソリューション「OK SKY」は、チャットを使ってインターネット上で接客できるシステム。例えば、ECサイトに導入した場合、サイト来訪者の欲しい商品を探したり、相談に応じたりといったことを、テキストや画像をやり取りしながらリアルタイムに行うことができる。なぜ、こうしたシステムを開発したのか? 代表の中嶋洋巳氏に伺った。
「通常、ECサイトでは、来訪者自らが商品の詳細を調べたり、口コミを参考にしたりして情報を取捨選択しながら買い物をします。しかし、掲載商品数が多ければ多いほど、何を選んでいいかわからなくなって何も買わなかったり、一番値段の安いものを選んだりしてしまいがちです。そんな来訪者に商品の価値をしっかり伝え、よりよい商品を買っていただき、企業と顧客双方の利益を担保したい。そう考えて『OK SKY』を開発しました」
チャット対応は、導入企業内でまかなうのが困難な場合、空色が構築するWeb接客センターでサポートする。同センターは、夜間対応が可能なコールセンターと業務提携しているため、24時間接客できるのが強み。また、「返品は可能ですか?」など、典型的な質問に対しては人工知能が対応し、従来の人的作業の30%強を削減する。なお、今後は商品提案などの自動化も予定されている。
さらに、チャットだけに留まらず、電話やメール、店舗など複数のコミュニケーションチャネルを横断したサービス展開も可能だ。例えば、チャットを経て店舗に訪れた買い物客に対し、店舗の販売員がチャットでの会話を事前に把握、商品をあらかじめ用意しておく――そんな対応もできるのだ。
コミュニケーションツールが変わるたびに
新たな市場が生まれ、定着していく
ビジネスアイディア発想のきっかけ
中嶋氏は起業前、大手通信会社の事業開発部に勤務し、新規事業の立ち上げに携わっていた。その仕事を通じて、過去の事業の変遷を振り返ることで、コミュニケーション事業の可能性を見いだしたという。「固定電話が普及したときはアウトバウンドテレマーケティングが立ち上がり、インターネットが普及したときはインターネット通信販売が広がった。つまり、日常で使われるコミュニケーションツールが変わるたびに、新たな市場が生まれるということに気づいたのです。その市場は一度定着すればなくならない、ということも」。
そして、中嶋氏は当時普及し始めていた“チャット”に着目して起業。まずはB to C事業でトライアルし、将来的にB to B事業に展開しようと考えた。前者として考案したのが、チャットを使ってスタイリストからファッションアドバイスが受けられる「PRIMODE」というアプリだ。しかし、実現させるにはファッションアドバイスができるスタイリストの協力を得なくてはならない。中嶋氏はまず、スタイリストを集めるための別事業から取りかかった。
「スタイリストを集めるには、スタイリストの困りごとを解決するサービスを提供するのが一番です。ヒアリングの結果、多くのスタイリストが撮影用アイテムのレンタルに苦戦しているとわかり、それらを無料で貸し出す『Stylee』というサイトを立ち上げました。ブランドの情報を発信したい企業から撮影用アイテムを提供していただき、そのアイテムが実際に撮影で使用され、クレジットが掲載されたら成果報酬をいただく仕組みです。それまで都内のスタイリストとなかなか接点が持てなかった企業から大きな反響があり、全国約100社から数千もの撮影用アイテムが提供されました。そして、わずか3カ月で、会社員時代と同じかそれ以上の報酬が得られるようになりました。目標としていたスタイリストの人数も揃い、順調に踏み出せたと思います」
その後、中嶋氏は「PRIMODE」の運営を通して、チャットの可能性、人工知能の必要性などを確信。2015年、前章で紹介した「OK SKY」をリリースした。
「なぜ買うのか?」がわかるサービスを提供し、
買い物をする喜びを増やしていきたい
将来の展望
現在、「OK SKY」は数十社の企業に導入されている。導入先では、インターネット上で接客したサイト来訪者の20%を購入に導いたり、購入単価を最大250%に引き上げたりといった成果を出し始めている。「アパレルをはじめ、金融機関、自動車メーカーなど幅広い業界で活用されています。とりわけ企業規模の大きな顧客が多く、逆に年商1億円を切る企業は少ない。年商が数兆円規模の企業も当社の顧客となっています」と中嶋氏。
事業の成長を加速できたのは、2016年に大手企業3社とベンチャーキャピタル1社から出資を受けたことも要因の一つといえる。「起業してから、一部上場企業の役員や、銀行の常務の方々にお会いできる機会が増えました。そういう方々のビジョンや課題を積極的にヒアリングしてきたからこそ、多くの企業に共感していただける事業を展開できているのだと思います」
「OK SKY」の提供価値が明確になってきた今、中嶋氏は次なる目標を掲げる。「来期は、これから事業規模を拡大しようとしている企業にも価値を提供していきたい。そのためには、より多くの企業に弊社の事業を知っていただかなくてはなりません。認知度向上に本気で取り組むべく、法人向けサービスのマーケティング経験者の採用にも力を入れています」
中嶋氏は、今後数年で顧客数が数百社にまで増えると予想している。その先に、目指しているのはどんな未来なのか。「今の世の中、“誰がどこで何を買ったか?”は、さまざまな方法でわかります。しかし、“なぜ買ったか?”はわからない。その“なぜ”がわかるサービスを提供できるようになれば、買い物をされる方の感情を変化させることに携われるはずです。買い物をされる方が喜び、『欲しい』『面白い』と感じられるような会話や、コミュニケーションを企業がしっかり提供していく。『OK SKY』がその足がかりになれたらと思います」
株式会社空色 | |
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代表者:中嶋 洋巳 氏 | 設立:2013年10月 |
URL:http://www.solairo.co.jp | スタッフ数:30名 |
事業内容: Web接客ソリューション「OK SKY」の開発・運営、Web接客センターの設計・運営 |
当記事の内容は 2017/08/17 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。