太陽光発電のキーテクノロジーを武器に、
日本を世界に誇るスマートシティ先進国へ!

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執筆者: 髙橋 光二  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

稼働済みの中古太陽光発電所の流通、
IoT遠隔制御、デマンドレスポンス
展開している事業の内容・特徴

20170518-1太陽光発電およびその遠隔制御、デマンドレスポンス(節電買取)、蓄電池など総合的な要素技術で、“スマートシティ”の発展に貢献する、地域エネルギー株式会社(英文名称:ComPower Inc.)。現在、同社が展開している主な事業は次のとおりだ。

まず、80億円の事業組合(ファンド)を組成して、国内各地に設置した計20MW分のメガソーラーの発電区画を投資家に販売し、売電収入を還元するソーラー(太陽光発電)事業だ。また、太陽光発電所のセカンダリー市場が形成されてきていることから、発電所の売買マッチングサイト「太陽光買取.com」の運営もスタートしている。

しかし、“野ざらし状態”の太陽光発電所は、経年劣化や落雷、動物の侵入などで故障する場合が少なくない。当然だが、これらを放置しておくと発電量が落ち、オーナーは損失を被ることになる。しかし、太陽光発電所は遠隔地につくられる場合が多いため、細かなメンテナンスに多くのオーナーが限界を感じている。

そのニーズに応えるため、独自開発した、PCやスマートフォンで発電所の状況チェックや遠隔制御などができるシステムを、太陽光発電所オーナーに提供している。そのサービスが、太陽光発電遠隔制御・モニタリングシステム「ami 001」である。また、経済産業省による発電所点検技術高度化実証実験の委託事業者に選定され、目下、ドローンやIoT技術を用いたメンテナンス技術など、さらなるソリューションの研究開発にも取り組んでいる。

そして現在進めているのが、デマンドレスポンス事業だ。電力需要が高まる時間帯にピークカット(節電)することにより、電力会社は電力の需給バランスを調整している。そこで、電力を利用する側の需要家が、一定の節電を行うと電力会社がその分を買い取る「デマンドレスポンス制度」が導入されている。同社は、需要家と電力会社を仲介する“アグリゲーター”として、地域のオフィス・商業ビル、工場・倉庫、各種インフラ、自治体などの需要家をそれぞれ束ねた「地域バーチャル・パワー・プラント(VPP)」を2017年度から手がける運びだ。

「固定価格買取制度」のスタートを機に
エネルギービジネスに乗り出す
ビジネスアイディア発想のきっかけ

20170518-2同社代表取締役の福井エドワード氏は、東京大学法学部を卒業後、建設省(現・国土交通省)に入省する。その後、北米のプライベートエクイティファームに転職し、その後は、投資銀行、プライベートエクイティ投資コンサルティング会社で金融ビジネスのキャリアを積んだ。

「2007年頃から、金融ビジネスのコモディティ化が急速に進み、2008年には“リーマンショック”が起こりました。金融の次に自分が進むべき道を模索していたとき、時代の流れと環境分野の可能性を感じ、エネルギー産業のリサーチを始めたのです」

2009年に、アメリカ大統領に就任したオバマ氏は、「グリーン・ニューディール政策」を提唱。その一環となる「スマートグリッド構想」が、新たなビジネスを創出するマーケットとなると世界中から注目を集めた。ここに注目した福井氏は、同年12月に自著『スマートグリッド入門』(アスキー新書)を出版、同書は数万部を発行するベストセラーとなった。

そして忘れもしない、2011年3月11日、東日本大震災が発生。ご存じのとおり、この大災害が日本の電力業界に大きな転換期をもたらした。翌年には、「固定価格買取制度」がスタートし、再生可能エネルギー事業にビジネスチャンスが到来したのだ。福井氏はこのタイミングで本格的な参入を決断し、地域と結びついて再生可能エネルギーを普及させていく、PVかながわ株式会社(現・地域エネルギー株式会社)を設立する。

神奈川県の県立高校の屋根を借りた100Kwの自社太陽光発電を皮切りに、その後約3年間をかけて、大分県の県営住宅、滋賀県の町役場など、各地の自治体と発電事業に取り組んできた。それらのプロジェクトとほぼ同時並行で、スマートグリッド事業へも参入し、その核となるデバイス「ami 001」を開発する。

その後、2015年7月の資源エネルギー庁によるデマンドレスポンス実証実験、同年8月の新エネルギー・産業技術総合開発機構による発電所メンテナンスコスト低減実証実験などに同社の取り組みが続々と採択され、公的な支援のなかで他社の追随を許さないノウハウを深める機会を得ていった。

JR品川・田町駅間に誕生する新駅一帯の
“スマートシティ”実現を狙う!
将来の展望

会社設立から3年間は、固定買取制度の追い風を受け、設立3期目の2014年度、ピークとなる5億円の年商を上げた。しかし、同制度の見直し後の2年間は、1億5000万円程度の年商に低迷してしまう……。「お祭り騒ぎのようだった3年間の後は、一転して次のステップアップのための研究開発期間と割り切りました。今、その芽が徐々に出始めているところです」と福井氏。

まずは、ドローンやIoT技術を用いたメンテナンス技術の高度化。このメンテナンス技術で海外進出も狙う。中国やインドには日本の10~100倍というケタ違いのメガソーラーが稼働しているが、ドローンによるメンテナンスサービスはまさに最適。この技術を完成させている企業は世界にもまだなく、同社は大きなブルーオーシャンを目前にしているのだ。「『PVエキスポ』という展示会に出展しましたが、多くの関係者から好感触を得えています」(福井氏)。

ドローンによるメンテナンスサービスは、太陽光発電所だけでなく、道路や橋梁などのインフラ全般にも活用できる可能性がある。ドローンはまだまだホビーユースが大半であるが、メンテナンス業務に使用する場合、使用用途に応じた専門知識、運転技術が必要となる。そこで同社はその知識・技術を体系化し、関連会社のClean Green Forum Japan株式会社を通じて、講習会および実力テストの運営をスタートさせた。

2016年、経済産業省による「ZEH(ゼッチ=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)制度
が施行され、2020年までに国内の注文戸建住宅の過半数でZEH導入を目標とする取り組みが始まっている。このマーケットに同社は「分散型発電装置+蓄電池」を商品化して本格参入する構えだ。

そして、東京オリンピックが開催される2020年、同社は、本記事で説明した各種技術の集大成となる“スマートシティ”の実現を目指している。そのターゲットに目論んでいるのは、同社本社のある東京都港区、JR品川・田町駅間に開業する新駅と、その周辺エリアだ。JR社などには、すでにスマートシティ化計画案をプレゼンテーション済みだという。このプロジェクトを獲得できれば、同社が苦労しながら育ててきた“先行者メリット”が何十倍にもふくらむことは間違いないだろう。

地域エネルギー株式会社
代表者:代表取締役 福井エドワード氏 設立:2012年5月
URL:http://amii.compower.jp ②http://www.taiyokokaitori.com スタッフ数:15名
事業内容:中古太陽光発電所の流通、節電買取による節電推進事業、ドローンによるメンテナンス事業、IoT遠隔制御ソリューション事業

当記事の内容は 2017/05/18 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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