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贈る側も受け取る側も都合がつけやすい、
スマホ時代の気軽なギフトサービス
展開している事業の内容・特徴
ギフトのカジュアル化が進んでいる。お中元、お歳暮や引き出物などの格式張ったギフトに代わり、今、人間関係の潤滑油となっているのは、気軽な手土産やスモールギフト。手ぶらは味気ない、けれどもお返しの気を遣わせたくない。そんな今どきの感覚にフィットするのが、スマホ一台で手軽にギフトチケットが贈れる「eギフト」サービスだ。
贈り主は、ラインナップされたギフト商品のなかから贈りたいものを選び、決済。決済後に表示されるURLをLINEなどSNSやメールで贈りたい相手に送信すると、相手は好きな時間に好きな場所で、その画面を示してギフトを受け取れる。
株式会社ギフティが展開するeギフトサービス「giftee」は、アメリカや韓国に比べて遅れていた国内eギフト市場を最前線で切り拓いてきた。サービス開始は2011年。サービスが充実した2013年頃から会員数が急増し、現在では約66万人が利用(2017年2月末時点)、毎月約5万件のギフトを送信している。
贈られるギフトの平均価格は600円と、ギフトとしては少額だ。あえて、この価格帯を狙う理由をギフティ代表の太田睦氏はこう語る。
「ギフトというとフォーマルなイメージがありますが、お礼やお祝い、お詫びや激励など、本来ならば会って伝えたい、しかし、そこまでの労力はかけられないという場面もありますよね。そうした場合、従来はメッセージを送ることしかできませんでした。けれども、もしそこでメッセージと一緒にギフトを贈れたら、もう一歩、踏み込んだコミュニケーションができるのではないか。それが、このサービスをスタートしたきっかけです。そのため、気を遣わせない“少額”にこだわっています」
オンライン上でスマートに気軽なプレゼントをしたいというニーズは確かにありそうだ。しかし、そうなると来店型のギフトは手間のようにも思える。そこにも理由があった。
「個人情報は聞き出しにくい時代ですが、来店型ギフトなら相手の住所がわからなくても贈ることができます。コンビニやチェーンなど全国展開しているお店の商品ならば、相手も自分の都合にあわせて受け取ることができ、お互いに気楽です」
また、受け取り主が来店すれば、送料がかからずに済む。ギフト自体が少額のため、これも見逃せないポイントだ。
「どれだけ技術が進んでもWeb上での表現は限られます。リアルに体験することで感じとれる情報のほうがはるかに多い。そこに便利なスマホを掛け合わせることで、より豊かなコミュニケーションが可能になると思うのです」
サービスの原点は「コーヒー一杯」。
受け取る側と店舗の負担軽減で急拡大
ビジネスアイディア発想のきっかけ
そもそも、太田氏自身がオンライン上でギフトを贈りたい一人だった。「社会人になりたての頃、Facebookで誕生日のお祝いメッセージをよく送っていました。住所を聞き出して何かプレゼントを贈ったり、日程を調整して会ったりするほどではないけれども、メッセージだけでは味気ない。コーヒー一杯でも贈れたらというのが最初の発想でした」。
学生時代からスタートアップへの関心はあった。しかし、これといったテーマが見つからず、まずは社会にでてみようと就職する。自分が解決したい課題を探るなかで、スマホで気軽に贈れるeギフトサービスというアイデアにたどり着いた。
「ほかにもいろいろ考えては、これはビジネスにならないなどと悶々としていましたが、eギフトは自然にやりたいと思えました。直接的な起業のきっかけはアクセラレータープログラムへの参加です。当時はSEとして働いていましたが、平日の夜や土日を使い、サービス化に奔走しました」
このコンセプトで走ろうと決めたのは、多くの人たちが自分と同様の悩みを持っていると感じたから。友人や家族にアンケートをとってみると、ちょっと何かを贈りたいという課題に対して、誰も有効な解決手段を持っていなかった。また、店側にもヒアリングして可能性を確かめた。
「当時、飲食店ではWebを使った集客手段として値引きクーポンがはやっていました。一方、僕らのサービスはギフトなので“定価”での取引になります。ギフトとして扱われるためイメージもよく、店舗側からも好感触を得られました」
そして、参加する企業を20~30店舗ほど開拓したタイミングで、念願のコーヒー一杯を贈るサービスをスタートさせた。しかし、課題もあった。
「最初は特定の地域の小規模店がほとんどで、受け取る側が生活圏内にないお店に出向かなければなりませんでした。そのためギフトの利用率はよくても3割ほど。結果、受け取る側に喜んでもらえないため、リピートにつながりませんでした。そこで、全国規模の店舗に参加してもらえるよう、店舗向けのシステム開発に取り組みました」
画面を見せるだけのギフトチケットは使用済みであることを確認できないと、何度も使えてしまう。そこで、eギフトが繰り返し使用できない「消込」という技術を開発し、SaaS「eGift System」の提供を開始。これを提供することで対応店舗が急増した。ギフトのラインナップが充実すると、一気にリピート率は上昇。今では月に5~6回、利用するヘビーユーザーもいるという。
強みはWebとリアルをつなぐ仕組み。
企業の販促や地域通貨の決済にも展開
将来の展望
対応店舗拡大のために開発した「eGift System」は、今、ギフティに新たな展開の可能性をもたらしている。
一つが法人需要だ。企業にもちょっとしたギフトを贈りたいシチュエーションはある。たとえば、見積りや資料請求、アンケートなどに対するお礼、会員向けの誕生日プレゼントや販促キャンペーンなどだ。住所不要で送料もかからずにギフトを贈れる仕組みはこれらの個人向けサービスにも役立つ。こうした企業からのニーズに応えるべく、今年から「giftee for Business」という新しいサービスを始めた。
「最初はCtoCのサービスを提供したくてスタートしましたが、サービス拡充のためにSaaSを開発したところ、CtoCが伸びると同時に、BtoCの領域にもニーズを見出し、『giftee for Business』を始めました。最近ではさらに、この基幹技術を電子地域通貨の運用に応用した電子地域通貨システム『Welcome ! STAMP(ウェルカム スタンプ)』の提供を開始しています」
「Welcome ! STAMP」の第1号となる導入案件は、長崎県内関係離島市町(壱岐市、五島市、小値賀町、新上五島町、佐世保市宇久町)で組織された、しま共通地域通貨発行委員会が発行する電子地域通貨 「しまとく通貨」。こちらは昨年10月から運用が始まっている。
「しまとく通貨という、長崎県の島内のみで使える紙で発行していたプレミアム付き商品券なのですが、3年間で100億円と相当な金額が流通していました。これに伴い、加盟店舗側では、しまとく通貨を換金するための精算業務が発生し、大きな負担になっていました。そこで、『Welcome ! STAMP 』を使って地域通貨を電子化し効率化できないかという話が持ち上がったのです」
「ここまでくるとギフトサービスからは離れますが、これまで手がけてきたサービスと共通するのはWebとリアルの結節点をつくるという点です。ここは今後も我々が取り組んでいきたい領域です」
スマホでコーヒー一杯を贈るためのシステムは大きく進化を遂げつつある。「もちろん『giftee』にも力を入れていきたいと思っています。今後はギフティの外でもギフトチケットを販売できるよう、ディストリビューターとも提携し、eギフトの流通量を増やすとともに、日頃の気持ちを伝える手段として気軽にギフトを贈り合う習慣や文化の創出を目指します」。
ギフティは何に挑戦しているのか。最後にそれが端的にわかるギフティのミッションを紹介して本稿を終えたい。「新しいギフトの文化を創出し、人と人とのコミュニケーションを豊かにする」。
株式会社ギフティ | |
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代表者:太田 睦氏 | 設立:2010年8月 |
URL:株式会社ギフティ:https://giftee.co.jp giftee:https://giftee.co |
スタッフ数:約27名(2017年2月時点) |
事業内容:eギフトサービス「giftee」の運営、「eGift System」の提供 |
当記事の内容は 2017/04/13 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。