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手術をせずに裸眼生活を実現!
レーシックに次ぐ第4の視力矯正
展開している事業の内容・特徴
眼鏡やコンタクトを毎日つけるのはわずらわしい――。そんな近視の人の悩みを解決する方法としてレーシック手術があるが、レーザーで角膜を削ることに抵抗を感じる人も少なくない。また、レーシック手術を受けられるのは18歳以上という制限がある。こうしたなか、成長期の子どもたちにも快適な裸眼生活を送ってほしいとの思いから生まれたのが「オルソケラトロジーレンズ」だ。
開発・製造を手がけるのは、株式会社ユニバーサルビュー。眼科領域に特化した医療機器の開発ベンチャーだ。「オルソケラトロジーレンズ」は、夜寝る前に装着し、朝起きたときに外す視力矯正コンタクト。就寝時に角膜の形状を矯正することで、日中は裸眼で過ごすことができる。
現在、全国285軒の眼科で導入されており、ユーザーの約7割が18歳未満の若年層であるという。「オルソケラトロジーレンズ」は、もともと米国で開発されたものだ。日本国内で同レンズを取り扱っている企業は同社を含めて3社。その中で唯一、日本人の角膜特性に合わせたレンズ「ブレスオーコレクト」を自社開発し、特許を取得している。併せて、レンズの処方をサポートする眼科医向け専用アプリ「フィッティングマスター」も開発した。
折り曲げても割れない東レの素材を採用。一般のハードコンタクトレンズの1.5倍という世界最高水準の酸素透過性を誇るのが特徴だ。また、同社の臨床試験において、装用12週間後には89.5%の患者の視力が1.0以上に改善されたという結果が出ている。
2016年4月には、「MEDTECイノベーション大賞」を、同年11月には、日経トレンディの「夢がかなう商品120・健康&食部門」大賞を受賞した。併せて、電通からの出資を受け、啓蒙サイト「オルソためそ。」を開設し、徐々に認知を拡大。「ブレスオーコレクト」の処方数は“前年比200%の伸び”と急成長を続けている。
商社マン時代に培った交渉力で、
東レとの資本・業務提携を実現
ビジネスアイディア発想のきっかけ
同社代表の鈴木太郎氏は、三菱商事勤務を経て、2001年に医療機器輸入会社を設立。同時に、投資コンサルティング会社のパートナーとして、医療分野の新規事業立ち上げ支援に従事していた。そのとき、ユニバーサルビューの創業者と出会い、「人を助けたい」という熱い思いに共感。2006年に参画を決意する。
「プロスポーツ選手や一定の裸眼視力が必要な職業に就きたくても、夢をあきらめざるを得ない子どももいます。そうした子どもたちの夢をかなえることができる。それと同時に、世の中にイノベーションを起こすことができる製品であると確信しました」
とはいえ、その後の道のりは険しいものだった。東レに臨床試験用の素材提供を願い出るも、門前払いされたという。しかし、「何とかして製品を世に広めたい」という一心で、あらゆるつてをたどり、最終的に当時の副社長との面談の機会を得ることができ、その場で直談判。有償での素材提供が決まり、臨床試験がスタート。開発に向けて大きな一歩を踏み出した。
だが、臨床試験には億円単位の費用がかかる。そこで、VCや事業会社を回ったが、知名度の低いスタートアップであるがゆえに、資金調達は困難を極める。そんな矢先、不運にもリーマン・ショックが発生。一度は暗礁に乗り上げたかにみえたが、鈴木氏はあきらめず粘り強く交渉を続けていった。その結果、2009年に東レとの資本提携を実現。大手事業会社の信頼を得たことで、複数のVCからの資金調達も成功させた。
「交渉相手が投資検討する際には、技術だけでなく、人間性も見られると思っています。まずは、相手の要望に迅速に応える。そして、常に相手の期待値を超えたものを提供することで、一つひとつ信頼関係を築いていきました」
臨床試験にて有効性、安全性の検証を重ね、2012年には厚生労働省から医療機器の承認を取得。通常、新医療機器の承認を受けるには3年程度かかるといわれているなか、わずか1年半での取得を実現した。
「臨床試験のプロトコル(実施計画書)を綿密に作成するとともに、申請書の文面も審査項目に応じて、ここは簡潔に、ここは詳細にと、戦略的に作り込みました。また、外部の専門機関やコンサルティング会社などの協力を得て、ノウハウを提供してもらうことで、短期間での承認を実現できました」
世界初の万能コンタクトレンズで、
グローバル展開を目指す
将来の展望
現在、慶應義塾大学医学部との共同で新たに開発を進めているのが、世界初の度数を持たない「ピンホールコンタクトレンズ」だ。小さな穴を通して見ると、周囲のものがはっきり見えるという“ピンホール原理”を応用。1種類のデザインで、近視だけでなく、遠視、乱視、老眼、すべての視力矯正に対応できるため、災害用備蓄品としても注目を集めている。
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のベンチャー支援事業として採択され、国内外の特許を取得。2019年の販売開始を目途に開発を進めており、将来的には海外展開も視野に入れているという。
「近視、老眼対策に有効なコンタクトの世界的な潜在市場は非常に大きい。特に、新興アジア諸国は近視、老眼ともに人口比率が高く、欧州や北米、中東では、老眼人口比率が80%以上を占めているため、グローバル展開できる商材であると見込んでいます。また、ピンホールコンタクトレンズは、高額な検査機器が不要で処方が簡単であるため、眼鏡やコンタクトが普及していない途上国でも導入しやすいと考えています」
来季は通年での黒字化を達成できる見通しで、IPOを目指しているとのことだ。さらに、今後の中長期的な展開として、予防医療にも着手していく構えで、「スマートコンタクトレンズ」の開発も検討しているという。
「私たちのビジョンは、『見える』質を高めることで、人の夢をかなえること。そして、人の夢をかなえることは、世界をより良く変えることにもつながると考えています。このビジョンを実現するには、大学・研究機関、事業会社、医療メーカーなどとの連携が欠かせません。今後も開発型ベンチャーとしての強みを生かして、協力企業・機関との良好なパートナーシップを築くことで、世の中に新たな付加価値を提供していきたいです」
株式会社ユニバーサルビュー | |
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代表者:鈴木 太郎氏 | 設立:2001年 |
URL:http://www.universalview.jp/ | スタッフ数:19名 |
事業内容:眼科医療機器の開発・製造・販売 |
当記事の内容は 2017/04/11 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。