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顧客を待たせず、現金決済を介さず――。
店舗オペレーションをとことん効率化
展開している事業の内容・特徴
モバイルウォレットをコンセプトとした事前注文・決済・CRMサービス「O:der」(オーダー)の展開や、その基本機能モジュールを活用したアプリなどのコンサルティング・サービス開発を手がける株式会社Showcase Gig(ショーケース・ギグ)。
現在、同社が基幹ビジネスとして育てようとしている「O:der」は、店に行かずとも事前にクレジットカード情報を登録したスマートフォンアプリで注文・決済でき、飲食店の場合であれば調理が完了のタイミングでユーザーに知らせてくれるという画期的なサービスだ。
ユーザーにとっては、面倒くさい待ち時間が解消され、現金を持たずに買い物ができる利便性がある。また店舗側にとっても、顧客を待たせずに済むことでサービスレベルが向上し、現金決済を介さないことでオペレーションが効率化されるというメリットが生まれる。それ以外にも、スタッフが現金に触れる機会を減らすことで清潔を保ち、また使い込みなどのトラブル防止にもつながるなど数々の効果を提供している。
さらに「O:der」には、顧客の来店状況やプロフィール情報に合わせてリアルタイムに特典やニュースが配信できる「クーポン」や「Push配信」機能も搭載されている。ちなみに、「O:der」はインターネット環境と、スマホかタブレットがあれば導入可能。利用料金は1店舗あたり月額2万円という設定となっている。
また、「O:der Cognis」という、実店舗やECサイト向けの関連サービスも用意。AIによるチャットボットで、例えば「おすすめ商品を教えて」といった顧客の問い合わせに素早く回答し、おすすめされた商品はそのままチャット上で注文・決済することも可能。注文画面が煩わしいユーザーは、ストレスフリーで手軽に注文できるというわけだ。
2013年にβ版からスタートした「O:der」だが、2017年2月現在、120店舗以上への導入実績がある。現在もその数は日に日に伸び続けている。
世界最先端のリアルイベントと
ECを融合させた試みが原点
ビジネスアイディア発想のきっかけ
2012年2月にShowcase Gigを創業した新田剛史氏は、大学卒業後に出版社に勤めた後、かの「東京ガールズコレクション(TGC)」のプロデュースや関連するモバイルEコマース、メディア事業を手がけていた。
「2000年代の半ばにスタートしたTGCのリアルイベントとECを融合させる試みは、シリコンバレーでもなかった世界最先端の仕かけでした。実は、この時の経験が『O:der』につながっています」
2009年、新田氏はミクシィに転じる。“ソーシャルビジネス”の創始者の一人として数々のヒットアプリを世に送り出し、また先駆的なコンビニエンスストアのオムニチャネル型キャンペーンを成功させるなど、ミクシィで数々のトラックレコードを築いた。
「何万人という人を動かして購買につなげる経験をするなか、テクノロジーは射幸心をあおることより正しく世の中を発展させることに用いるべきという確信を深めました。ミクシィの新規事業を推進するなか、2010年頃には『O:der』の原型となる着想は得ていましたが、自分の力を試すには独立してやるべきと腹を決めました」
2012年2月、エンジニアなど3名のメンバーとShowcase Gigを立ち上げ、2013年7月には「O:der」のβ版をリリースするとともに特許を出願し、先ごろ取得した。
「特許を出願した時、すでに同様のものが出ているのかと思いましたが、欧米にも『O:der』ほどのものは見当たりませんでした。おそらく世界初のイノベーションなのだと思います」と新田氏は胸を張る。
大手ポスレジメーカーとの提携し、
「O:der」の市場拡大を急ぐ
将来の展望
ところが、2015年にスターバックスが同様のサービスを導入、現在までに全米約1万店に展開しているという。また、横並びを気にする日本企業は「O:der」を導入することにおよび腰であった。
「どこも導入一番店になりたくないのであれば、自分たちでやるしかない」と、新田氏は、2016年3月、東京・渋谷に「O:der」のショールームとして「The Local」というコーヒーショップをオープンさせた。
「未来の店舗像を日本の飲食店チェーンやリテール企業にリアルに体験していただく狙いです。これを機に、潮目が変わりましたね」。また、アメリカではスターバックスに続き、マクドナルドやタコベルといったチェーンも追随。そうした情報が入り始めるとともに、同社への問い合わせが急増し始めた。
「現在、いくつかの大手チェーンで実験が始まっています。また、国内トップシェアの大手ポスレジメーカーとの提携が決まり、今年、一気に『O:der』の展開が広がるめどが立ちました」
なお、同社の関連ビジネスとしては、「O:der」の基本機能モジュールを活用したJR九州の列車予約アプリや、ローソンのデジタル会員証アプリなどの開発にも取り組み、売り上げの半数を確保。創業以来、成長を続けており、現在の第6期も、前年対比200%の年商を目標に掲げている。
「IPOは考えていますが、そのためにも無理はせず着実に収益を上げていける経営基盤をつくりたいと考えています。GoogleやFacebookは国産ではないので、日本発の企業として当社のIoTプラットフォームを土台として、かつての高度成長期をけん引した家電メーカーなどのように、歴史に名を刻めるような企業になりたいですね」
株式会社Showcase Gig | |
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代表者:代表取締役 新田 剛史氏 | 設立:2012年2月 |
URL:https://www.showcase-gig.com/ | スタッフ数:40名 |
事業内容:プラットフォーム事業(「O:der」の提供)、ソリューション事業 |
当記事の内容は 2017/2/28 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。