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出品者、購入者、ホテルのニーズを満たす、
三方よしを超えたビジネスモデル
展開している事業の内容・特徴
ホテルや旅館に宿泊予約をしたものの、仕事や病気などで予約を取り消さなければならなくなり、やむを得ず高額なキャンセル料を払った経験がある方も多いはず。旅行に行けないばかりか、キャンセル料まで取られるのはかなりくやしい。そんな悩みを解決すべく、国内初の宿泊予約の権利売買サービス「Cansell(キャンセル)」を生み出したのが、Cansell株式会社代表の山下恭平氏だ。
「Cansell」利用の流れはこうだ。まず、売りたい宿泊予約をサイトに出品申請すると、スタッフによる簡単な審査が行われる。審査時間は最短で60分。審査をパスするとサイト上で売りに出すことができる。出品は無料で、万が一、売れた後に購入者がキャンセルを希望した場合でも代金は100%保証される。
売買成立後は、スタッフが宿泊者の名義変更作業を代行。一般的なオークションサイトと異なり、出品者と購入者間のやりとりが不要であるため、忙しいビジネスパーソンにとっても便利なサービスといえる。また、不正な転売目的の出品を防ぐため、予約時よりも高い価格は設定できない仕組みとなっている。
出品者側はキャンセル料を軽減でき、購入者側は通常より安く宿泊できる。また、ホテル側も空室を減らすことができる。そして、売買成立時の手数料(販売代金の15%)が同社の収益となる。「三方よし」ならぬ「四方よし」のビジネスモデルなのだ。
現在、実際に出品されているのは、キャンセル料が高いハイクラスのホテルや旅館が多いとのこと。「Cansellを利用すれば、ひとまず数カ月先の予約をしておき、行けなくなったら誰かに譲ることが簡単にできます。キャンセル料の心配を軽減した、“新たな旅行のカタチを提案できるサービス”として育てたいと思っています」(山下氏)。
キャンセル料を節約できるサービスで
旅行者の悩みを解決したい!
ビジネスアイディア発想のきっかけ
就職活動をしていたころから起業に興味があったという山下氏。2010年、新卒で、あるSIer企業に入社したものの、物足りなさを感じていた。当時、スタートアップ企業が続々と立ち上がっており、「自分も人生をかけたチャレンジがしたい」と考えていたときに転機が訪れる。リクエストの多い映画を映画館で上映できるオンデマンドサービスを展開する「ドリパス」創業者の五十嵐壮太郎氏と出会い意気投合。そのまま同社にジョインすることが決まった。
「ドリパスでは、資本政策から、プロダクトの企画、開発、サービス運営まで、スタートアップ企業に必要な業務の流れをすべて経験できました。三方よしの仕組みや複数のステークホルダーと向き合わなければならない点など、ドリパスとCansellには共通する部分が多くあります。ドリパスでの経験がなければ、今の自分はなかったと思います」。
2013年3月、「ドリパス」はヤフーに買収され、山下氏もそのまま移籍する。そして、2015年12月に退社し、2016年1月にグルメハント株式会社(2016年7月に現在の社名に変更)を起業した。同社は山下氏を含むメンバー3名全員がヤフー出身だ。開業資金は創業メンバー2名の貯蓄から供出した300万円だった。
起業当初、インバウンド向けの飲食店予約サービスの展開を予定していたが、ビジネスとしてスケールさせるのは難しいと判断し、わずか3カ月で方向転換を決定。そこからインバウンドや旅行に関する別のサービスを模索することになる。「これはいけるビジネスモデルになる」と実感したのは、自身のプライベート旅行を計画していたときだったという。
「沖縄旅行を計画していたのですが、予定していた日に台風が上陸する可能性が出てきたのです。飛行機が飛ばなければ、ホテルの多大なキャンセル料が発生してしまう。こんなとき、誰かにホテルの予約を譲ることができれば、あれこれ思い悩まなくても済むのになと。そのとき、宿泊予約の“権利売買”サービスのニーズは必ずあると確信しました」。
そんなプロセスを経て、2016年9月に新たに立ち上げたサービスが「Cansell」だ。山下氏たちは着想からわずか3カ月というスピードで同サービスのローンチを実現させている。
個人と業界・企業双方に貢献するサービスで
二次流通の新たな可能性を切り拓きたい!
将来の展望
2016年9月の「Cansell」プレビュー版リリース後、VCからの問い合わせが相次ぐなど、予想以上のうれしい反応が返ってきた。2017年1月には、DGインキュベーション、カカクコム、大和スタートアップ支援投資事業有限責任組合、イノベンチャーの計4社より総額4000万円の出資を得ている。
「宿泊権利の売買は今までにないサービスです。市場規模が未知数なだけにワクワク感も大きい」と山下氏は目を輝かせる。今後は、航空券の搭乗権利やイベントの参加権など、他ジャンルへの拡大も視野に入れているという。現在、名義変更を受け付けていないホテルに関しても、個別に交渉して提携を結ぶなどの対応をしていく構えだ。また、将来的に同サービスが旅行業に該当する可能性も鑑みて、旅行業の登録申請も計画しているという。
「今は、一人でも多くの方にCansellを知っていただくこと大事だと考えています。Cansellはプロダクトとしてはまだまだ未完成。さらなるサービスの拡充に努め、できる限り早く理想形に近づけたい。また、個人ユーザーの課題解決はもちろんですが、さまざまな業界、企業にも貢献できるサービス構築を目指しています。今後も『人々に必要とされるサービスを創る』という思いをぶらさず、二次流通の新たな可能性を切り拓いていきたいです」
山下氏とCansell株式会社の挑戦はまだ始まったばかり。今後どのようなイノベーションが生まれてくるのか、大きな期待とともに見守りたい。
Cansell株式会社 | |
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代表者:山下 恭平氏 | 設立:2016年1月 |
URL:https://cansell.jp/ | スタッフ数:3名 |
事業内容:宿泊権利売買サービスの企画・開発・運営 |
当記事の内容は 2017/1/26 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。