未経験者に5日の研修でパンづくりを伝授!
業界の異端児によるミニベーカリー開業支援

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執筆者: 本多 小百合  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

職人の技術を徹底排除、初期投資も最低限に
抑えたミニベーカリーの開業パッケージ
展開している事業の内容・特徴

20160915-1ベーカリーといえば職人の世界。分割、成形、発酵など製パンに欠かせない技術を習得するには何年もかかる。ところが、まったくパンづくりの経験がない人でもたった5日でパンがつくれるようになるという、嘘のような本当の話がある。それが、株式会社おかやま工房が展開する、「リエゾンプロジェクト」によるミニベーカリーの開業支援パッケージだ。

座学が1日、見学が1日、実技が2日、販売研修が1日。この5日間の研修で、5種類のパン生地で15種類のパンづくりをマスターする。研修を終えると修了証が発行され、開業の意志を固めた人とは契約を締結し、開業に向けたサポートを開始する。

たった5日でおいしいパンがつくれるのは、オリジナルの小麦粉を使っているから。薬品は使用せず、国産小麦をベストの配合で混ぜ合わせたものだが、専用レシピに従えば150品目以上のバリエーションがつくれる。難しい小麦粉の調合を覚える必要がなく、レシピも温度と時間と大きさという誰にでもわかる数値の目安。マニュアルどおりに進めれば、誰でもおいしいパンが焼けるようになっているのだ。

契約後のサポートは、物件の選定、レシピ提供、工房レイアウトの提案、機械や融資の斡旋、従業員の研修と至れり尽くせり。オーナーの要望に応じて、カフェを併設するなら、カフェメニューを提案し、オリジナル商品を販売するなら、レシピも開発する。開業後もフォローは万全。随時、相談ができ、代表の河上祐隆氏が主宰するオーナーの勉強会にも参加できる。

リエゾンプロジェクトから巣立っていく、ベーカリー・オーナーの大半は脱サラ組。パンづくりも経営も初めての人ばかりだが、こうしたパッケージによりほぼ100%が開業に成功している。

「36年この業界にいますが、店が繁盛する唯一の法則は“焼きたて”です。ミニベーカリーでは初期投資を抑えるため、当社が厨房機器メーカーと共同開発した小型機器を使います。一般的なベーカリーとは違い、営業時間中も常に焼き続けることになりますが、ロス率も下がりますし、常に焼きたてパンが並べられるため、お客さまにも喜ばれます。“窯だしパン屋”と名付けていますが、こうすると近隣のパン屋とはほぼ競合することがありません」

異業種からの無理な相談に全力で応えたら
新たなベーカリーの可能性が見えた
ビジネスアイディア発想のきっかけ

20160915-218歳でベーカリー業界に入り、修行中に2店舗の立ち上げを経験、22歳で自分の店を持った河上氏。独立後には200坪を越える大型店やアジア圏での店舗プロデュースなど、業界では異例の取り組みに挑戦してきた。

あるとき、付き合いのある飲食店のオーナーから「ベーカリーをつくりたい」と相談を受けた。聞けばレストランで使うパンを自前でつくり、隣接するジェラートショップでもパンを販売して、レストラン来店につなげたいという。

「絶対に無理だ」と答えたが、粘るオーナーにミニベーカリーならと考えを変えた。しかし、当時、海外でも仕事をしていた河上氏は多忙を極めており、現地に入れる期間は1週間しかない。限られた時間で確実にオープンにこぎ着けるため、未経験の人材を集めるように指示した。自分の流儀にこだわる職人よりも、教えられたままに動く素人の方がスムーズだと判断したからだ。

その読みは当たった。国産小麦無添加パンのお店は開店初日、なんと20万円を売り上げた。翌日にはもう自分たちだけでおいしいパンをつくっており、安心して見ていられたという。

「その経験から、これは新たなビジネスになると直感しました。職人は高みを目指すあまり、顧客ニーズを見落として、おいしいパンをつくりながらも廃業してしまうことが多い。しかし、毎日食べるパンは定番で充分です。日常食としてのパンを職人不在でつくるスタイルに可能性を感じ、2009年にリエゾンプロジェクトを本格的に始動させました」。

準備を始めた当時、ちょうど団塊世代の大量退職が話題になっていた。体力が落ち始めたリタイア層でも継続できる店舗運営の仕組みを2年間かけて、つくりあげた。しかし、最初の2年はふるわなかった。たしかに5日の研修で未経験者がベーカリーをオープンできるとは素人でもにわかには信じがたい。何千万円の赤字となり、税理士や銀行、コンサルタントは本業に徹するよう諭した。

「けれども、絶対に大きくなるビジネスだと確信していました。前例がないので、どれほど時間がかかるかは分かりませんが、確実に何千店舗はできるというイメージがあったんです」。軌道に乗ったきっかけは、開業を支援した東京と大阪のベーカリーが大繁盛したこと。「大都市での成功例は大きかったですね。半信半疑だった人も実際に独立したオーナーに話を聞くと納得されます。お陰さまで現在までに、100店舗以上のベーカリーの開業をご支援してきました」。

目指すはリエゾンプロジェクトの拡大と応用。
日本中、世界中に焼きたてパンを届けたい
将来の展望

20160915-3これから我が国の人口は減っていくが、パンの需要は横ばいだと業界では言われている。なぜなら、調理が不要で胃への負担も少ないため、高齢者のパン食が増えているからだ。ただ一定のニーズがある一方で、ベーカリーの数は減少の一途。この10年で半減というペースである。一番の理由は後継者不足だ。今どき、一発当てられるわけでもなく、独立までの道のりが長く厳しいパン職人を志す若者は少ない。体力の限界で廃業していくオーナーも増えている。

リエゾンプロジェクトのミニベーカリーは、オーナーに合ったスタイルで営業でき、細く長く続けられる。作業も分かりやすく、軽度の障がい者でもパンをつくることができるため、障がい者施設でも導入されている。

「まだ開業できる場所は山ほどあります。本気で国内1000店舗を目指します」という河上氏。ちなみに、おかやま工房は直営店も経営している。自ら競合を増やすような目標だが、河上氏は、焼きたてパンを食べるお客さまの笑顔を増やしたいのだ。

「これから5日でできる「河上式パン学校」を国内外で開校する準備を進めていきます。ここでも国産小麦を使用したオリジナルの小麦粉を使います。日本で生産・製粉した小麦粉の流通量が増えれば、日本の農業再生にもつながります」

また、もう一つの新規事業創出にも取り組む。リエゾンプロジェクト方式の冷凍生地の工場をつくり、ホテルや病院に卸すというビジネスモデルだ。薬品を使わないため、生地の保存期間は3日しかないが、毎日つくって出荷すれば、ホテルの顧客や病院の患者さんに焼きたてパンが提供できる。ちなみにこの11月には、最初の工場が稼動を開始する予定とのこと。生地づくりの工程がなくなれば、研修も3日で済む。ミキシングの機械も不要のため、個人でも1000万円以下で開業できるようになる。手軽に無理なく、焼きたてパンを届ける仕組みづくりはますます洗練されていくようだ。

「私の理想は小学校区にひとつはパン屋さんがあり、いつでも焼きたてパンを食べられること。国内にも海外にもパン屋にとってのフロンティアはまだあります。業界の常識にとらわれず、ちょっと歩けば安全でおいしく食べられるパンが買える環境を世界中につくっていきたいですね」

株式会社おかやま工房・リエゾンプロジェクト事業部
代表者:河上 祐隆氏 設立:2009年1月
URL:http://www.liaisonproject.jp/ スタッフ数:11名
事業内容:・製パン未経験者を対象とするミニベーカリーの開業支援

当記事の内容は 2016/09/15 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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