半年で6000件以上が注文される大ヒット!
僧侶と2人の個人が考案した「お守り」とは?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 本多 小百合  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

オーダーメイドで悩みや願い事に応じた
お守りを届けてくれるWebサービス
展開している事業の内容・特徴

20160728-1一般的に、「お守り」といえば、神社やお寺を参詣する人が買い求めるもの――なのであるが、そんな常識を覆すWebサービスが登場した。インターネットでオリジナルお守りを販売する「OMAMO」である。

お守りの布に使われる日本古来の紋様をモチーフにした和柄にはそれぞれ意味があり、たとえば亀甲は長寿を、矢絣(やがすり)は厄よけを表す。OMAMOのポップなデザインのお守りは、従来のお守りとは一線を画している。40種類もの和柄の中から、現役の僧侶が願いに合わせてふさわしい柄を選び、あなただけのお守りをつくってくれるのだ。

2015年の暮れにリリースされた同サービスは、とあるニュースサイトで取り上げられたことから話題となり、爆発的人気を呼んだ。英語のナレーションが入った動画の効果もあり、なんと世界69カ国から注文が殺到したという。予想以上の反響に、現在も生産が追いつかない状況となっている。

OMAMOは「BASIC」と「MAKE」の2タイプがラインナップされている。「BASIC」(1500円)は、ネットショッピングの感覚で、好きなデザインのお守りをカートに入れれば注文完了。一方の「MAKE」(3000円)は、完全なカスタムオーダーとなる。自分の願いや悩みを入力フォームに書き込むと、それにちなんだ柄の組み合わせの提案がメールで届く。デザインを確認して決済すれば注文完了。池上実相寺の酒井智幸副住職が一人ひとりの名前を読み上げ、ご祈祷をしてお守りに魂を込めてくれる。

ちなみに通常、お寺で売られているお守りは、仏具屋の販売カタログを見て注文したものを使う。「お守りの製造にかかわったのは初めてです」と酒井副住職。「クリエイターと協力することで、我々だけでは発想できなかった新しいお守りができました。思い切った取り組みでしたが、業界からも『そんな手があったか』と好意的に受け止められています」。

お寺でのご祈祷は内容を周囲に聞かれてしまう可能性があるが、インターネットなら誰にも知られずに悩みや願い事を打ち明けられる。そんなポイントも人気の理由のようだ。

お寺と悩める人との関係をリデザイン。
大人の部活感覚で始めたサービスが大当たり
ビジネスアイディア発想のきっかけ

20160728-2OMAMOを運営するのは法人組織ではなく、3人の個人から成るチームだ。全体監修は酒井副住職。OMAMOの精神的支柱である。販売元であるSheepmeは藤本卓也氏が共同で立ち上げた小さなデザイン会社。OMAMOの運営責任を負う。そして、本企画の発案者は、アートディレクターの古野照雄氏。古野氏は企業に所属しながら社外でのクリエイティブ活動として、OMAMOの運営にかかわっている。

そんな成り立ちからもわかるとおり、OMAMOのスタートは営利を目的としたものではなかった。「会社の同期だった藤本に、面白いことをやっているからと誘われて飲み会に参加したのがきっかけ」と古野氏。ふたりが参加した飲み会は、東京・池上のまちを盛り上げるため、お寺での映画祭を企画していたグループが企画したものだった。その席で古野氏は「映画祭の集客に役立てば」と、一般の人がお寺に興味を持つようなアイデアを提案する。そのうちの1つがOMAMOの原型だった。

映画祭の企画をリードしていたのは、酒井副住職の妹さん。バーテンダーが客に合わせてカクテルをつくるように、僧侶が個人に合わせてお守りをつくるという提案を聞き、「それならば兄が適任!」と酒井副住職をふたりに紹介した。健康長寿や商売繁盛といった一般的なご祈祷より、もっと個人の“想い”に寄り添えないかと考えていた酒井副住職にとっては格好の提案だった。

クリエイティブを担当する古野氏と藤本氏は、サービスをゼロから立ち上げるのはOMAMOが初めての経験。何度となく壁にぶつかった。「どこの工場でお守りをつくるか、」「ポップなイメージに合うデザインをどう実現するか「サービス名はどうするか」……。本業をこなしながらの活動は困難を極めた。

しかし、「いいことをしていると、いい人が集まってくる」らしい。「プロモーション映像の制作も、出世払いでお願いすることができました。予算ありきのビジネスの手法では、具体化できなかったと思います」と藤本氏。

3人とも、OMAMOは商業的な成功を求めるものではなく、人々とお寺をつなぐものという認識で一致していた。PR活動はリリース配信サイトへの1本の投稿のみ。月に50個売れれば御の字と考えていたが、ふたをあけてみると、わずか3カ月で6000個以上の注文が舞い込む大人気サービスとなった。

お焚き上げや日本の習わしの創出など、
お守りの新しいカタチを探っていきたい
将来の展望

20160728-3喫緊の課題はどんどん届く注文に応えること。そもそもOMAMOの仕組みは、効率を重視して設計されていない。入力された悩みやお願いごとは、クリエイターの藤本氏と古野氏が読み、柄の組み合わせを考えて酒井副住職のチェックを受ける。入力された言葉から自動で柄を選ぶわけではなく、時間がかかる。ちなみに、誰の願いや悩みかは酒井副住職以外に知られないよう、システムへのアクセス権限を切り分けているそうだから安心してほしい。

また、お経には決まったパターンがあり、内容の似たものをまとめてご祈祷することもできたが、簡略化はしなかった。酒井副住職は「僧侶として自分ができるのは一人ひとりの願いや悩みに真摯に向き合い、お守りに魂を込めること」と語る。僧侶を増やして生産効率を上げることも考えていないそうだ。大切なのはOMAMOが結んだご縁であり、お寺に頼ってくれる人々にOMAMOを通じて前向きな気持ちになってもらうことである。

現状の納品待ちが解消できたら、サービス開始後に気付いた新たなニーズにも応えていきたいという。たとえば、FAXでの受注だ。若い人や遠方の人にも関心を持ってもらうためにWebサービスとして始めたが、インターネットに疎い高齢者にも好評なのだ。

また、役目を終えたお守りを処分する仕組みも構想している。1年経ったらお焚き上げをして、また新たなお守りを持つというしきたりを実現できるよう、サービスの持続的発展を目指す。ほかにもアイデアは尽きない。「年始に、大切な人のためにお守りをつくる習慣ができたら」と古野氏。「外国人観光客にも日本の縁起物として興味を持ってもらえたら」とは藤本氏。

目を輝かせてOMAMOの未来を話す3人が出会ったのは2015年5月。リリースは同年12月。サービスのミッションが明確であれば、次々に未来が切り拓いていけるのだということをOMAMOの取り組みが実証してくれた。

OMAMO
監修:酒井 智康氏(池上実相寺副住職)
企画・デザイン:古野 照雄氏(I&S BBDO所属)
運営・販売:藤本 卓也氏(Sheepme代表)
      古野 照雄氏(I&S BBDO所属)
設立:2015年5月
URL:https://omamo.me/ スタッフ数:3名
事業内容:オーダーメイドお守りの販売

当記事の内容は 2016/07/28 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

無料で始める