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住所も電話番号も非公開。
完全会員制の馬肉専門店
展開している事業の内容・特徴
ネット上で事業のアイデアをプレゼンし、賛同者から小口の出資を募るクラウドファンディング。起業時の資金調達手段として注目を集めているのはご存じのとおりだが、近年は飲食業での取り組みも活発になってきている。
東京都港区・広尾駅付近の某所にある「ローストホース」は、クラウドファンディングを活用してユニークなスタートアップを成功させた馬肉専門店だ。出資者をそのままメンバーにする完全会員制を採用しており、店舗の住所も電話番号も非公開。看板も設置していない完全クローズドな営業スタイルを貫く。
オーナーの平山峰吉氏は23歳から飲食業界で働き始めた人物。焼鳥店、100席クラスの京都料理店など、さまざまな業態でキャリアを積み、まずは大阪で馬肉専門店「けとばし屋チャンピオン」をオープン。その後、東京で「ロッキー馬力屋」を立ち上げ、いずれも予約困難なほどに繁盛させた凄腕の持ち主だ。「馬肉専門」というスタイルに着目したのは馬肉の旨さ、その希少性に惹かれたからだという。
「焼き鳥、ホルモン、焼肉、ラーメン……いろいろなジャンルを考えましたが、日本一になれるのは何か?と考えてたどり着いたのが馬肉です。起業後、僕のフォロワーが続々出て馬肉ブームが到来した感がありますが、牛肉は東京だけで1日1000頭ほどが出荷されているのに対し、馬肉は日本全国分が1日わずか10頭ほど。実はとても希少な肉なのです。馬肉業界のキーマンから熊本の生産者を紹介してもらえたことで、ウチは、最高グレードの馬肉を毎日仕入れることができています」
馬肉ブーム到来前からサプライヤーとパイプを築いていただけに、他店の4分の1の価格で最高級の馬肉を入手しているそうだ。ブルーオーシャンを見抜いたことで、先行者利益を享受できた平山氏。「日本一の馬肉専門店で、石釜で焼いた最高のローストホースを食べさせたい!」というコンセプトを掲げたクラウドファンディングを成功させたのも、納得できる話である。
スタートから9時間で目標額を達成!
自分も出資者も大満足の結果に
ビジネスアイディア発想のきっかけ
「ローストホース」のクラウドファンディングは、株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディングが運営するサービス「Makuake」を活用。目標額の300万円は、開始からわずか9時間で達成したのだという。
会員制を想定していただけに、支援者が集まりすぎると予約が困難になると判断。途中で募集を打ち切ったが、最終的には506人のサポーターから600万2111円を集めている。クラウドファンディングで得たのは開業資金だけではなく、優良な顧客でもある。この支援者リストは、信用のなさから貸し渋っていたテナントオーナーを説得させる材料にもなった。
そもそも、ITにはうとかったという平山氏。クラウドファンディングの仕組みを知り、活用できたのは人との縁だった。
「店長を努めていた『ロッキー馬力屋』は東京・渋谷にあり、常連さんにサイバーエージェントの社員がいらっしゃって、その方から『Makuake』を教えてもらったのがきっかけです。開業資金の用意はありましたが、僕が追求したかったのは石窯で焼いた馬肉を提供すること。厨房の設備費用は通常300万円ほどですが、石窯はフルオーダーメイドなので、導入には別途300万円が必要。初期投資が倍額になるということで、スピーディーに資金調達ができるクラウドファンディングを使ってみることにしました」
圧倒的な支援が集まった背景には、平山氏の輝かしい実績に加えて、「Makuake」の募集ページにアップした石窯試し焼きの動画の効果も。シズル感たっぷりの石窯焼き馬肉は“グルマン”たちの食欲をかきたて、支援の輪が急速に広がった。
2014年12月のオープン後は18時、21時の2部制で、25席が2回転。開業から1年間は1人6500円という破格値で、以後は1万円というおまかせディナーを提供し、舌の肥えたサポーターたちをとことん満足させている。
ちなみに、「Makuake」ではその後も飲食店のクラウドファンディング活用が相次いでいるが、平山氏の後に続いたのは多くが企業体。個人のクラウドファンディングとしては、いまだに「最短・最速・最高額」のレコードをキープしている。
ミニマムなチームを維持しながら、
フットワーク軽く飲食シーンを駆け抜ける
将来の展望
実は当初、オープンから1年のみの予定だった会員制営業だが、営業が好調なため継続することを決めた。今後も「日本一の馬肉専門店でしかできない体験を提供していきたい」と、身軽なスタイルを志向している。
「個店として日本で一番馬肉を買っていて、日本で一番高いグレードの馬肉を揃えていると自負しています。飲食店で独立する際に掲げた“日本一”は達成できた。グローバルな展開も模索していますが、あくまでミニマムなチームでいようと考えています。多店舗展開は考えていません。なぜなら、東京の繁華街の場合、1店舗開業するための資金がトータルで3000万~4000万円かかり、店舗保証金10カ月分の400万~500万円を店舗数分寝かせてしまうことになる。その方式で10~20店舗と広げていったら、リスクはとてつもなく大きくなりますから」
2016年4月の熊本地震で馬肉生産業者が被災。そのため馬肉の供給がストップし、営業休止を余儀なくされたこともあった。ローリスクで店舗を回していくためには一軒の飲食店をミニマムなチームで運営し、知名度を上げて複数の販売チャンネルを持つのが理想、と平山氏は語る。
「東京で一番の馬肉専門店からの仕入れがウリになるようなら、うちがサプライヤーになるのもアリでしょう。また、馬肉ハンバーグをつくって別ルートで売るプランも考えられます。とにかくフットワークが軽い存在であることが、今の時代では重要なのです」
石窯焼き馬肉という圧倒的な商品力、そして「支援した会員だけが食べられる」という明解なリターンはネットのサポーターに熱く支持された。「ローストホース」が持つスピード感とフットワークの軽さ。それは、ネットを活用して開業を目指す個人飲食店にとって、理想的なスタートアップ手法といえるだろう。
ローストホース | |
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代表者:平山 峰吉氏 | 設立:2014年12月 |
スタッフ数:4名 | 事業内容:完全会員制の馬肉専門店の経営 |
当記事の内容は 2016/06/23 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。