自分が食べている作物の由来が見える!
生産者と消費者を直接繋ぐ「KAKAXI」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 高橋 光二  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

農場の状況を“見える化”し
生産者と消費者の交流を取り持つ
展開している事業の内容・特徴

20160524-4人間が生きていく上で不可欠の“食”。しかし、食品流通がグローバル化する中、食品の“由来”は見えなくなる一方にある。私たちは、いつ、誰が、どのように栽培したものか全くわからない作物を毎日口にしている。「食の安全」をめぐる事件・事故も頻発している。消費者の食に対する不安が募りやすい環境にあるといえるだろう。

そんな環境を一変させる可能性を持つサービスが「kakaxi」だ。自社開発による小型モニタリングデバイスとスマートフォンアプリにより、生産者(農家)と消費者をダイレクトに繋ぐプラットフォームである。デバイスは、直径85mm×高さ280mmのボディにカメラやセンサーなどを内蔵。農場などに設置し、定期的に作物の栽培状況などを撮影するとともに、温度や湿度、日照時間を測定・記録する。これらのデータは、同社が運営するSNS上にイラストを活用してわかりやすく公開される。消費者は、自分がフォローする生産者の農園の状況を確認できる上に、SNSで生産者とやり取りもできる。さらに、フォローする消費者同士で、届いた作物を使った料理やレシピを共有するといった交流が楽しめるのだ。生産者にとっては、消費者に自らの作物をアピールし買ってもらうダイレクトチャネルの構築に役立つ。しかもデバイスが自動的に農場の状況を更新してくれるので、手間もかからずに済む。

生産者だけでなく、自社もしくは契約農園を持つフードサービス会社や食品スーパー、大学の食堂などの中間流通事業者に対し、消費者に原材料の安全性をアピールし付加価値を向上させるマーケティングにも活用できる。

この「kakaxi」は、まずは2016年8月頃により高い市場性が見込めるアメリカでリリースされる。同社はその後、日本などでも展開を図っていく計画だ。

食品の流通がグローバル化する中、
“生産者の顔が見える”を重視する傾向も強まると確信
ビジネスアイディア発想のきっかけ

米国法人CEOも務める代表取締役の大塚泰造氏は、Bリーグ「琉球ゴールデンキングス」を所有する沖縄バスケットボール株式会社など13社の設立を手がけたシリアルアントレプレナー。2年半前に双子を設けて、食への関心が様変わりしたことがこのビジネスを立ち上げるきっかけになったという。

「妻も食べ物にはさほど興味がありませんでした。ところが、子どもができて離乳食を与えるようになると180度変わったのです。いつも買い物していた近所のスーパーで売られている野菜は、どこの誰がどのようにつくっているのか全くわからない。不安で、我が子には食べさせられないわけです。そこで、有機野菜や自然食品の宅配サービスを利用するようになりました。そんな私たち夫婦みたいな人はほかにもたくさんいると考えたのです。現在は、農産物や加工食品の流通もグローバル化し、安い食品が豊富に手に入るようになりました。それを否定するつもりはありませんが、だからこそ“生産者の顔が見える”ことを重視するトレンドも強まるだろうと。そこにビジネスチャンスを感じたわけです。」

志を同じくする知人の高橋博之氏と、2013年5月、高橋氏の地元・岩手県花巻市にNPO法人東北開墾を設立。月1回『東北食べる通信』という生産者を紹介する印刷メディアとともに、その作物を届ける会員事業をスタートさせる。それとともに、会員限定のフェイスブックグループを立ち上げると、会員同士の料理やレシピの共有で大いに盛り上がった。しかし、一生産者の作物の量には上限があり、印刷物をつくるには多大な手間やコストを要する。ビジネスとしてスケールさせることは難しかった。

「これを拡大させるにはどうすればいいか考え、得意のITを組み合わせてつくったのが『kakaxi』です。」と大塚氏は説明する。そして、代表取締役社長に就任した高橋氏と共同で同社を創業した。

生産者と消費者をもっと近づけて
真にサスティナブルな世の中に
将来の展望

20160524-2大塚氏らは、2016年8月、日本で『食のフリマアプリ』事業を立ち上げる。農産物のフリマアプリのようなイメージだ。生産者が収穫した作物をアップし、会員が注文すると、提携先のヤマト運輸が発送伝票をプリントして生産者のところに集荷に行き、箱詰めされた商品に貼って注文した会員に届けるというサービスである。

「我々は手数料として受注額の15%しか頂かないので、生産者と消費者が直接やり取りするよりもデリバリーコストを安くできます。これで双方のユーザーを増やしていきたいと考えています。」

なお、「食のフリマアプリ」は、品質管理上「クール宅急便」のある日本でしか運営できないという。アメリカでスタートする「kakaxi」と、それぞれを育てながらいずれはシナジーを発揮させていく考えだ。

「生産者と消費者の心理的な距離を縮めるのが『kakaxi』で、物理的な距離を縮めるのが『食のフリマアプリ』という位置づけですね。」(大塚氏)

「食のフリマアプリ」としての目標について、大塚氏は次のように言う。

「現在はほぼゼロに近い、食べ物の由来を知って口にしている人の割合を15%まで持っていきたいと思っています。それぐらいの数になれば、一定の影響力を持てるのではないかという考えです。」

その先は、生産者と消費者を結ぶ独自の“地域内流通”にもアプローチしたいという。

「いわば、Uberの野菜を運ぶ版です(笑)。つくる人と食べる人が分断された状態をただ繋げるだけでなく、もっと近づけてその輪をどんどん小さくしていきたいと思っています。その時に、真にサスティナブルな世の中ができるのではないかと思っています。」

生産性一辺倒の社会がもたらす弊害は多いが、こと食の分野は人々の健康に関わるだけに見逃すことはできない。生産者と消費者の強固なネットワークをつくる「kakaxi」と「食のフリマアプリ」は、注目を集めるに違いないだろう。

株式会社KAKAXI
代表者:代表取締役社長 高橋博之氏
代表取締役 大塚泰造(米国法人CEO)氏
設立:2015年2月
URL:http://kakaxi.jp/ スタッフ数:6名
事業内容:食物生産者と消費者を直接繋げるデバイスやスマートフォンアプリ「kakaxi」の提供

当記事の内容は 2016/05/24 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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