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固着化する歯科業界に新たな市場基盤の創出を促進! 要介護患者と歯科医師をつなぐ「訪問歯科コンサルティング」
展開している事業の内容・特徴
千葉県下、5カ所にデンタルクリニックを展開する医療法人海星会が、ユニークな事業を行っている。2013年に立ち上げた社内ベンチャー「株式会社DENRICHE(デンリッシュ)」での事業、訪問歯科コンサルティングサービスである。
その概要は、老人ホームや介護保険施設などに営業を行い、歯科医師と各施設とをマッチングさせるといったもの。訪問歯科を展開したいが、施設とのコネクションを持たない、あるいは拡大させたい歯科医師を対象にしたサービスだ。訪問歯科実施までの施設開拓や契約等、面倒なタスクを同社が代行してくれ、歯科医師はスムーズな診療をスタートすることができる。
昨今、高齢者における口腔ケアの重要さは、一般にも浸透しつつある。高齢者の死亡原因の第4位は肺炎だが、このうちの7割を占める「誤嚥性肺炎」は、口腔機能の低下が要因。また、高齢者が罹患すると深刻になりやすい動脈硬化や糖尿病、心疾患などの病気は、歯周病が大きく関与する。このように、口腔環境で健康のリスクを負いやすいのが高齢者であり、特に自分でブラッシングや通院ができない要介護者にとっては深刻な問題だ。
だが一方で、要介護者に対する訪問歯科は圧倒的に不足している。平成20年の診療報酬制度の改定により、歯科医療の観点から在宅医療を支援すべく新設された「在宅療養支援歯科診療所」制度の認定クリニックは、平成23年時点で、68,156ものクリニックがあるうちの、わずか4,028カ所。これに対し、要介護者は508万人というから、その少なさは一目瞭然である(参考:一社日本訪問歯科協会「訪問歯科の現状」、厚生労働省「要介護度別認定者の推移」より)。この背景については、担い手不足があるというが、しかし、コンビニの数よりもクリニックの数の方が多いと、度々取り沙汰される昨今の歯科業界。人材不足とは一体どうしたことか。
同社によれば、人数こそ多いかもしれないが、それぞれが開業をめざしていることから、勤務歯科医自体は少ないのだという。つまり、人手不足で訪問歯科まで手が回らない傾向にあるということだ。だが、近年の歯科医療費は、ほぼ横ばいで約2.6〜2.7兆円を推移。業界は、増え続けてきたクリニック数により過当競争傾向にあり、地方では年収300万円以下の歯科医師も。さらには、廃業を余儀なくするクリニックも少なくないと聞く。さらに、“削って詰めて”が主流だったこれまでの治療スタイルは、近年で治療をしないための予防歯科への移行しつつあり、利益の安定化が難しくなっている。
あえて言うならば、介護分野への積極的な参入は、今後の歯科業界にとって欠かせないものなのではないだろうか。現在の訪問歯科受診者数がどのくらいかは定かではないが、2010年では、約60万人が訪問歯科を受診。1人あたりの年間診療費は187,000円であり、市場規模は1,122億円という推計もある(参考:野村リサーチ・アンド・アドバイザリー調べ)。これと、超高齢化を突き進む日本の動向を考えれば、訪問歯科の市場も拡大していくのは明らかだ。同社の訪問歯科コンサルティングは、この成長市場と固着化する歯科業界との間をつなぐ、ソリューションサービスだとも言えるだろう。
取締役・田村勇士氏によれば、現状では提携クリニックは8院。人材不足ゆえ苦戦しているそうだが、一方の提携介護施設・居宅介護支援先は千葉県内のみで約1,000件を数えるという。
歯科医療畑ではない、3人の国際派ビジネスパーソンが集結。訪問歯科コンサルティングほか、日本の歯科医療の輸出も主事業に据え実施。
ビジネスアイディア発想のきっかけ
DENRICHE社は、医療法人のベンチャーとしては珍しいチーム構成だ。代表取締役の角祥太郎氏は現役歯科医師であるものの、取締役の田村氏をはじめ、コアメンバーの太田氏、山崎氏は、医療畑ではないビジネスパーソン。しかも、田村氏は三菱UFJ・モルガンスタンレー証券、日本GE、太田氏は欧州・アジア・中東の外資系ホテルのマネージャー、山崎氏はP&Gとモンブラン社と、それぞれに名の知られた国際的企業でのキャリアを持つ。
これからもわかるように、同社は、訪問歯科コンサルティングと並ぶ主事業として、海外事業も実施。「海外へ日本の歯科医療を届ける」をミッションにさまざまなビジネスを進めている。そのひとつが日本人歯科医師の海外進出支援だ。
すでにカンボジアではクリニック設立および歯科医師派遣、日本人歯科医師が海外で診療を行っている。また、現在シンガポール、ベトナム、赤道ギニアへの歯科医師派遣も話が進んでいる最中だという。
特にカンボジア等の新興国は、地区や医師によって医療レベルの差が大きいそうで、日本の歯科医療はニーズが高いと、田村氏は話す。
歯科専門コンサルティングカンパニーとして、国内での事業拡大ならびに海外事業の本格進出を実現させ、日本の歯科医療界と世界中の人々の健康に貢献する。
将来の展望
同社は、国内・海外事業ともに、プロジェクトに賛同する歯科医師との提携を急務とする。国内においては、各介護施設のすべてのニーズに対応できる体制の整備が目下のミッションだ。結婚や出産で現場を離れた女性歯科医師など、さまざまな角度から人材の拡充を図っていきたいとしている。
海外では、各国に派遣する日本人歯科医師の増員を急ぐとともに、近々でカンボジアをはじめ、各新興国での第2第3のクリニック設立もめざす。また同時に、より広く日本の歯科医療をアピールできる方法を探る。その一例として、最近では、カンボジアの首都プノンペンにあるプティサストラ大学と連携。日本人歯科医師を招き、講演や研修を定期的に行う「カンボジアプログラム」を実施している。そのほか、カンボジアで制作した補綴物の国内展開など、さまざまに企画しているそうで、日本の歯科技術を世界に浸透させるべく、それらの活動をより本格化させていく構えだ。
取材の最後に田村氏に今後の展望を伺った。
「まだ、事業が走り出して間もないので、国内外のプロジェクトともに全力で取り組んでいくほかありません。治療を受けられず困っているアジアの人、そして、日本の要介護者の方が安心できる歯科医療環境を整えていく。また同時に、国内の歯科業界の課題改善に寄与していく。当社に参画する前は、歯科業界について無知でしたが、日々やりがいを感じています。先ほども少しお話ししましたが、当社は、私を含む医療畑ではない人材がプロジェクトを練り、サービスを展開しているベンチャー。そこに当社ならではの独自性と強みがあります。それを最大限活用し、これからも革新的で社会的意義がある事業を邁進させていきたいと思っています。」
株式会社DENRICHE | |
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代表者:角 祥太郎氏 取締役:田村 勇士氏・太田 祐輔氏 |
設立:2013年4月 |
URL:http://denriche.jp/ | スタッフ数:29名 |
事業内容: ・歯科医療コンサルティング ・訪問歯科診療マネジメント ・歯科技工所経営 ・海外歯科医院開業コサンルティング |
当記事の内容は 2016/04/14 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。