創業2年でプロ人材1万人をネットワーキングし、350社/700プロジェクトの実績をあげる急成長ベンチャー、株式会社サーキュレーション。

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

企業の経営課題を抽出→ミドル~シニア層のプロ人材を外部経営幹部人材としてアサイン、解決するサービスを展開。
展開している事業の内容・特徴

20160331-1国内の人材系市場は約9兆円と言われており、そのうち5兆円が派遣サービスとなっている。クラウドソーシング系サービスも隆盛だが、実際には単価の低い仕事も多く、生計を立てるのに十二分な報酬を得るのはなかなか難しいようだ。市場的には、今まで派遣でまかなわれてきたようなタスクが、より低コストのフリーランスにシフトしているとも見られ、大手のクラウドソーシング系会社の関係者に話を聞いても、大手企業から単純作業系の業務を大量に引き受けて、それを多数のフリーランサーで回すといった案件が大きな売り上げになっているという。

一方で、非常に高い技術・職能を有して、複数の企業と仕事をしているような人材も少なからずいる。米国ではそうした人材をインディペンデント・コントラクターと呼び、約3000万人にも達するといわれている。また、年代も20〜30歳代だけではなく、40代、50代、60代以上にも数多く広がっているという。

しかし、日本では高い職能を有していても、定年退職後は同じ企業に再雇用(それも給与が大幅に下がる事が多い)される以外では、その職能や経験を生かして新たな仕事やポジションを探す事は難しい。大企業で部長まで務めたような人材が、定年後にハローワークにいくと介護職や清掃員といった仕事しか紹介されないといった話も聞く。日本ではまだまだフリーランスやインディペンデント・コントラクターといった働き方は、定着しているとは言い難い。

そこで紹介するのが、株式会社サーキュレーションと言うベンチャーだ。2014年1月に設立されたばかりだが、すでに1万人のプロ人材をネットワーキングし、350社/700プロジェクトの実績を誇る。創業して2年で社員数は50名を超え、黒字経営で成長を続けている。また、登録されているプロ人材も、一部上場企業のCTOを務めた方や有名ベンチャー企業の役員を複数歴任されている方、弁理士の資格を持つマーケティング・ブランディングの専門家など多士済済。年間 1,000 万円以上の報酬を稼ぐ方もいるという。

同社の収益モデルは大きく3つに分けられる。ひとつはプロジェクトフィー。企業の経営課題毎にプロジェクトチームを有機的に組成し、課題解決に取り組む。プロジェクトチームに参画したプロ人材への報酬は同社が支払う。次に、人材紹介。参加人材をクライアントが気に入り、社内に迎え入れたいとなった場合、成功報酬型で紹介料をいただく。最後に、クラウドサービス「X-book」。これは専門知識、高いスキルを持ったプロ人材と経営課題を持つ企業をつなぐマッチングサービスで、1 回1~ 2 時間、Skypeや電話などで業界分析・情報提供などを行っている。

インテリジェンスで初めてのイントレプレナーとして事業創出を成功。その経験を生かして起業へ。
ビジネスアイディア発想のきっかけ

20160331-2株式会社サーキュレーションを創業した久保田 雅俊氏がはじめて起業したのは19歳。さらに21歳の時には父親が倒れ、父親の経営していた会社の清算という辛い経験もしている。

その後、大手人材会社であるインテリジェンスに入社し、同社初のイントレプレナー(社内起業家)として、顧問ビジネスを立ち上げ、カンパニー社長に就任した。同ビジネスを社員40人まで拡大させたのちに退任し、2014年1月に株式会社サーキュレーションを起業した。

インテリジェンスの既存事業とのカニバリゼーションや、社内ベンチャーでは新しいことに挑戦するのに時間がかかるといったジレンマもあり、自分の本当にやりたいことをやるために起業という選択をした久保田氏。

同氏によると、人材紹介業界ではシニアはターゲット外、35 歳を超えるとなかなか転職が出来ず、50歳を超えるとエージェントは会うことすらしないという。そうした状況下で、「シニアの経験・知見と中小企業のリアルビジネスを結ぶ」という事業をインテリジェンスの社内ベンチャーで立ち上げた。そこでシニアの方、3,000人ぐらいに会った経験や、プロフェッショナル人材の労働環境をより広げられる可能性を感じたことで、サーキュレーションの設立にいたった。

同社では改革に取り組みたい企業から、まず経営課題を抽出し、プロジェクト化する。そのうえで、10,000名のプロ人材ネットワークから適任者をアサインし、企業側とチームを組成する。人事部は通さず、経営者や経営管理・事業企画部門などが対象となる。顧客となる企業は、売上数億程度のベンチャーから300億円ほどの中堅企業が7割、残りの3割が大企業という割合。基本的には新規事業が多数を占め、その中でも立ち上げフェーズとなる「0→1」が2割で、すでに立ち上がっている事業を拡大する、いわゆる「1→10」が8割となる。

また、大手企業の新規事業案件では最初から投下資金が数十億円といった巨額の予算が組まれている場合もあり、こうしたケースでは新しい事業の立ち上げから、相応の売上目標まで設定された、「0→100」というべき案件もあるという。

上記のようなタスクを社内にいる人材だけで回せれば苦労はないが、大半の企業ではそうではないだろう。そこで同社は事業立ち上げの経験が豊富な人材や大企業で経営幹部、役員経験のある人材を集めているため、そうしたプロジェクトに対応できる。競合は戦略コンサルティング会社などになるが、実際に事業を推進するプロ人材を多数有している点、そしてプロ人材自らが課題解決にコミットして実働型で支援する点が強みだ。

これまでそうしたプロ人材を扱う人材会社は皆無だったため、同社はプロ人材の新しい働き方や活躍の場を提供できる稀有な存在であるといえる。もちろん、企業の課題解決にアサインするに当たっては、人材の質担保はマストだ。そのため同社ではプロ人材一人ひとりを、約1時間程度の面談を行っている。スキルは勿論、その人の潜在的な能力や人となりを確認し、プロジェクトアサイン時の判断材料として活かしている。

また、IBMのワトソンを用いたデータ解析や、暗黙知の研究で知られる東京大学の某研究所とも連携し、これまで登録した人材、過去の案件を人工知能で分析。人材と案件の適合率の向上を進めている。

ちなみに、同社ではプロ人材のなかでも、特にビジネス系のフリーランスを「ビジネスノマド」と呼んでおり、日本にビジネスノマドの文化をつくりあげることを目指している。

同社の登録人材は3つのケースに分かれる。まずは、すでに独立してプロ人材として活躍中の人が、空いた時間を活用するケース。週に3日プロジェクトを回しているが2日は時間が空いている。または、プロジェクト終わりでしばらく時間が空くなど。次に、在職あるいは起業中で、自分のスキルを活かして他の仕事をしたい人。起業して会社づくりを進めながら、ビジネスノマドとして働いている人や、新たなやりがいを見つけたい、仕事を引退したシニア層など。最後は、潜在的興味を持った人。例えば、外資キャリアから結婚・出産し家庭に入った女性。育児も落ち着き働こうとするが、今の生活スタイルでは前職には戻れないケース。こうした人々が自由に働き方を決められるようにする、ビジネスノマド文化を確立するというのが目標だ。

オープンイノベーション×新しい働き方のマーケットを創出する
将来の展望

久保田氏に今後の展望を伺ったところ、「オープンイノベーション×新しい働き方のマーケットを創出する」というメッセージをいただいた。

この目標実現のために、「経験・知見を循環させる」ビジネスを根幹として、地方創生にも取り組んでいるという。久保田氏は内閣府委託事業「プロフェッショナル人材向けセミナー」で「地方創生とオープンイノベーション」をテーマに、Iターン、Uターンではなく、プロ人材であれば地方に高い労働力を提供でき、その人材の活躍により地方企業が経営活性化し、その結果地方企業の東京進出や事業仕訳にも貢献できる旨を講演した。同社ではこれまでプロ人材を活用した地方中小企業の実績が100件以上もあり、すでに実証をしている形だ。

そして、地方創生とともに、進めている柱がクラウドサービス。IBMや東京大学との共同開発・連携でのサービス構築を進めているが、インターネット上にどうやってプロ人材の知見やノウハウを、サービスとして落としこめるかという課題に積極的に取り組んでいる。

また、あらゆるイノベーションが急速に進むアメリカでは、人材活用のスピードと人材プールの幅が違うと久保田氏は語る。例えばLinkedin。これは米国ではヘッドハンターやリクルーターの人々のデータベースになっており、Linkedin自体にプロジェクトが組成されて、そこで働いている人もいる。その背景には、企業の経営と執行の分離がある。役割責任とその干渉領域をきちんと仕組化していくのが米国の潮流で、簡単に言えば、組織のプロジェクト化である。実際に、コンプライアンスやガバナンス、事業を管理する組織など、企業内部の切り分けが進んできている。そして、各組織で働く人材も20代〜60代まで幅広く、大企業のビジネスパーソンより複数の企業で働くビジネスノマドのほうが報酬も高いという。

同社の掲げるビジネスノマドが文化として定着し、プロ人材が複数の企業と仕事をするようになれば、そうした人材が起点となりイノベーションが進むだろう。株式会社サーキュレーションの今後に、ぜひ期待したい。

株式会社サーキュレーション
代表者:久保田 雅俊氏 設立:2014年1月
URL:http://www.circu.co.jp/ スタッフ数:50名
事業内容:ビジネスノマド、シニアエクゼクティブによるオープンイノベーションサービス

当記事の内容は 2016/03/31 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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