国内インキュベーション施設の草分けとして知られるかながわサイエンスパークで、2016年2月4日、ケイエスピー、四国産業・技術振興センター、横浜銀行、産業技術総合研究所の主催による「協創マッチングフォーラム」が開催された。高い技術を持ったものづくりスタートアップと新たな技術を探す企業を引き合わせる場として、共同開発やOEM、資本提携等による事業創出を目的とした同フォーラム。今回は、各地の研究機構、産業振興会等が支援する、独自技術を持った中小ベンチャー46社が一同に介し、中堅・大企業へプレゼンを行った。持ち時間1社5分という短いピッチが次々繰り広げられたが、各スタートアップの持つ技術、ビジョンが大いに語られ、場内は熱気に沸いた。本稿では、そのプレゼンの一部を紹介する。
協創マッチングフォーラム
http://www.ksp.co.jp/incubation/matching/forum/
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網膜走査型レーザーアイウェア技術で、フォーカス・フリーの完全ARを目指す株式会社QDレーザ
富士通の量子ドットレーザ技術にもとづく光デバイスのベンチャー企業として、2006年4月に富士通株式会社と三井物産株式会社によって設立された同社は、超小型のレーザープロジェクターによって網膜に直接画像を投影する技術を持つ。従来のスマートグラスやヘッドマウントディスプレイと違い、国内に150万人いると言われている視機能が弱く矯正もできないロービジョン患者のQoL(生活の質)を向上させる医療機器として開発が進められている。同社の技術は、装着者がどこを見ていてもピントが合うように画像を重ねて投影できる「フォーカス・フリー」が特徴。実際の視界に映像を重ねた際、ボケのないPiP(Picture In Pictue)スタイルから完全ARを実現する技術としても注目を集めている。
同社のレーザーアイウェアは超小型半導体レーザープロジェクタをメガネフレーム上に配置し、装着者の網膜をスクリーンとしてデジタル画像情報を提供する。この仕組みは従来の液晶等を使った方式には無い、次のような優れた特長を有している。
1. プロジェクター方式のため小型デバイスでも大画面を提供可能。
2. RGB単色光源の半導体レーザーを用いているため、高輝度・高色再現・低電力。
3. 網膜の任意の位置に画像を直接描画することが可能。
4. 光学的にフォーカス・フリーとなるため、装着者はその視力にかかわらずクリアな像を見ることができる。
2014年6月にウェアラブル情報端末「レーザアイウェア」としてプロトタイプの開発に成功。現在は国内大学病院、教育機関と連携して性能検証を進めるとともに、医療機器としての製品開発を行い、2016年3月までに商品化をする構えだ。
企業データ | |
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社名:株式会社QDレーザ | Webサイト:http://www.qdlaser.com/ |
所在地:神奈川県川崎市川崎区南渡田町1番1号京浜ビル1階 | |
代表者:菅原 充氏 |
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優れた制菌・抗菌作用と安全性を備えた、「白金ナノ粒子」を活用した機能性繊維加工技術を持つ西染工株式会社
タオル製造で賑わう“タオルの街”、愛媛県今治市に本社・工場を構える染色メーカー、西染工株式会社。「染まるものは何でも染めてみる」をモットーに、さまざまな繊維製品の繊維加工を実施する一方で、化学染料によらない染色技術の開発にも取り組み、いち早く天然繊維による量産体制を確立させたことでも知られる。同社が近年、自社製品開発として取り組んできたテーマは「制菌・抗菌」。
同社が開発した「白金ナノ粒子加工技術」は、白金(プラチナ)のナノ粒子を繊維表面に固着化させ、白金の持つ優れた制菌・抗菌作用を繊維製品に付与することが可能だ。類似技術としては従来では銅、近年では、銀を用いたものがあるが、このような機能性繊維の開発動向の中で、同等またはそれ以上の作用を期待できるものとして、同社は白金に着目し、開発に至った。
同技術加工の最大のウリは「制菌・抗菌」と「安全性」である。制菌・抗菌作用では、大腸菌・黄色ブドウ球菌、MRSA等に対する抗菌ほか、A型インフルエンザウィルスを不活性化させる働きも確認。また、雑菌繁殖の抑制作用に伴う防臭効果の持続も実現しており、自社製品ラインアップ「プラチナナノ加工ウェットタオル」は3週間放置していても全く臭わないという(検証実験では4ヶ月を達成)。安全性については、白金は食品添加物に指定されている物質であるため人体に無害。例え口に含んでも悪影響を及ぼさないそうだ。これらの性能から、同技術は「繊維評価技術協議会」が認定する繊維製品認証基準であり、医療機関等向け製品への適用が認可される赤色SEKマークを取得している。
同社が現在、同技術の普及を期待しているのは、「洗濯できず、取り外し・取替えができない」繊維製品。ソファやベッドマット、車や飛行機のシート、加湿器やエアコン等のフィルターなどへの適用。また、防臭作用ほか、洗濯による白金の脱落はなく、80℃で50回の洗濯でも効果が持続することから、「繰り返し使用する」製品にも最適であるとし、例えば飲食店のおしぼりや、部屋干し対応製品などへの提案も進めていきたいとしている。
企業データ | |
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社名:西染工株式会社 | Webサイト:http://nishisenkoh.com/ |
所在地:愛媛県今治市南大門町4丁目5-1 | |
代表者:山本 敏明氏 |
スーパーゼネコン案件に実績を持つ金網技術の拡大と、それを応用展開させた研究開発で新市場開拓をめざす竹中金網株式会社
愛媛県今治市に本社・工場を置く、「工業用金網」の専業メーカー、竹中金網株式会社。創業40年の歴史で培った開発・製造クオリティは高い評価を得ており、引き合いは食品加工装置から化学プラントまで多岐にわたる。特に、近年開発した「クリンプ金網 バンブースクリーン」は、数々のスーパーゼネコン案件に採用。建築業界における「環境」、「効率化」といった課題改善にも、大きく寄与する性能を持つ。
バンブースクリーンは、塗料ロス等の課題に着目し開発された金網である。スーパーゼネコンの高層建築の金網仕様は、意匠性高めるため黒色の吹付塗装が行われる。しかし、空間が多い金網への吹き付けのため、約80パーセントの塗料がロスとなっており、そのコストは金網自体のコストを上回っていた。また、塗装業者による後塗装のため、金網運搬等にかかる労力や時間、品質の安定化にも課題があり、さらにVOC大量放出による環境問題も懸念されていた。そこで同社は、これらの課題を改善でき、かつ塗装までを自社で行える金網の開発に着手する。
素線には、市場価格が高騰する既存のステンレス鉄線ではなく、高耐食性能の合金めっき鉄線を採用。塗装は、工場内で塗装可能なデップ焼付塗装処理を施した。そうして誕生した金網は、従来製品と比較して塗料使用量を80パーセント、製造原価を40パーセント削減。納期短縮、作業環境の改善、VOCの削減も達成するものとなった。同金網は2009年、東京国際空港国際線地区 旅客ターミナルビル等新築工事の全工区採用の快挙を遂げた。
だが、この事例により、大型物件への適用に対する課題が明確化。そこから、再度同社は生産設備の自動化や品質の安定化を見直し、新しい取り付け方法開発等、数々の試行錯誤を重ねる。そうして、満を持して開発に至ったのが、バンブースクリーンである。これまでに渋谷ヒカリエ、赤坂センタービル、銀座歌舞伎座等の採用実績を築き、直近では豊洲市場建設工事の全工区にも採用されている。
今後、同社はバンブースクリーンの一層の普及を図るとともに、同金網で確立したクリンプ金型の自社製造技術等を駆使し「高機能金属等を仕様した工業向け金網製品の製造および加工・研究開発」にも取り組んでいきたいとしている。化学プラントなど、高機能金属等を使用している製造・研究設備を想定し、それぞれに最適化された難削材金網の開発・製造で、新市場開拓をめざす。
企業データ | |
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社名:竹中金網株式会社 | Webサイト:http://www.takenaka-kanaami.co.jp/ |
所在地:愛媛県今治市大西町九王甲281番地 | |
代表者:竹中 健造氏 |
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さまざまな可能性を秘めた「マイクロニードル」であらゆる産業にイノベーションを目指すシンクランド株式会社
IoT、光学技術、高速信号処理技術を融合、一本の柱として事業展開する横浜発ベンチャー。医療機器・検査測定機器を開発ドメインにしながらも、医療のみにとどまらず産業全体にインパクトを与えるものづくりをモットーにしている。その一つが、千葉大学との産学連携で開発した「マイクロニードル」だ。
その名が表すように、極小の針であり、直径は10〜20マイクロメートル、長さは100マイクロメートルほど。なかなか実感の湧かない数値だが、髪の毛の太さが約100マイクロメートルだというから、まさに極小である。同社によれば、マイクロニードルは、鉄材、セラミックス、ガラス、シリコンなどベース材を問わず製作ができ、針先の形状も用途に応じてさまざまな調整が可能だという。
医療領域で採用が期待される事例としては、注射針の代替。髪の毛の数分の1ほどの太さの針は、従来の注射に伴う痛みや注射痕をなくし、既存の注射のスタイルにも変革をもたらすと注目される。また、計測器への応用も可能であり、現在GoogleとDexcomが開発を行うウェアラブル血糖値測定器のような提案もでき、実現すれば糖尿病患者などの測定による日々の負担を大幅に軽減し得るとも考えられている。またさらに、有機材料を材料に用いることで、パッチ型ワクチンの製作も可能。肌に貼るだけで皮下にワクチンや美容物質を浸透させることができるようになることから、創薬やアンチエイジング業界からの注目も高いという。
一方で、同技術は産業にもおいてもさまざまな可能性を秘める。そのひとつが、ロータス効果と呼ばれる撥水効果だ。身近な例を挙げれば市販のヨーグルト容器の裏蓋一面に施された細かな剣山のような加工だが、これがあることで蓋にヨーグルトがくっつかない。マイクロニードルでは、既存製品に後加工で効果を付与することもでき、針先の形状等の工夫により防汚加工技術としての応用展開も可能である。
現在、このように材料表面に機能を付与するためには、大掛かりな製造環境の整備や各種工程を持つ「射出成型技術」加工が主流になっている。だが、同技術は高出力レーザー光源を用いたレーザー照射による製造法で、従来製法と比較し製造の自由度が極めて高い。さらに材料への依存性も低いことから、さまざまな材料の小ロットから大量生産加工までの提案が可能だ。
企業データ | |
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社名:シンクランド株式会社 | Webサイト:http://www.think-lands.jp/ |
所在地:神奈川県横浜市鶴見区小野町75-1 | |
代表者:宮地 邦男氏 |
機能性フィルム開発製造の雄。優れた技術力で、既存包装資材にイノベーションを起こす日生化学株式会社
本社・工場を香川県かがわ市に置く、発泡ポリチレンフィルムを中心とした機能性フィルムの開発・製造加工メーカー、日生化学株式会社。プラスチックを再生する「リサイクル技術」、プラスチックの性質を変える「改質技術」、超臨界ガスを駆使した「発泡技術」の3本柱をコア技術として、さまざまな分野の製品の包装を提供している。近年ではパッケージコンテスト菓子包装部門賞や芦原科学賞の受賞などで知られる。そして、同社のその技術力を如実に表すのが「HONIC(ハニック)」と「HS-PET(エイチエスペット)」である。
HONICは、発泡フィルムと未発泡フィルムの2層構造からなる機能性発泡シーラントフィルムで、優れた断熱性を持つ。HONICと一般的なフィルムで包装した保冷剤を使った断熱性能の比較検証実験では、それぞれの保冷剤を20秒間指先で触れた後、サーモグラフィによる指先の温度検証を実施。一般的なフィルムに比べ、高い断熱性を持ち抵触温感性を低減することが実証された。また、水を入れて冷凍したボトル缶の一部をHONICで包装し、外気に曝して結露状態を観察した実験では、包装部が結露を抑え水滴発生を大幅に防ぎ、結露の緩和に優れた効果を持つことも確認されている。
上記性能ほか、「プラスチックフィルムにより紙粉、繊維クズが発生しない」、「不織布+食品接触フィルムと比較しコスト減」、「ドライラミ工程の不要によるVOC排出量の削減」といった特長を持つことから、同フィルムはロッテ社の手でもみほぐしながら食べるアイスクリーム「クーリッシュ」の包装材料として採用されている。同フィルムは熱いものでも抵触温感性の低減を期待できるため、同社は今後、ホット飲料やおでん、麺類といった飲食物、または電子レンジを使用する食品の包装材料としての提案も行なっていく。
次のHS-PETは熱圧着ペット・フィルムである。通常、ペット・フィルムはヒートシールと呼ばれる熱圧着が不可であるが、同製品では本来の機能である透明性や保香性低温を維持したまま、低温ヒートシールが可能。また、従来のバリアフィルムの課題である、内包する物体成分の吸着の心配もない。以上の性能から、現在採用されている虫よけ材の内体ほか、医療品やコスメ等への採用にも最適であるとのこと。
同社は、HONIC、HS-PETの両技術で、さまざまな分野の包装材市場のシェア獲得に取り組んでいきたいとしている。
企業データ | |
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社名:日生化学株式会社 | Webサイト:http://www.nissei-grp.com/ |
所在地:香川県東かがわ市馬篠1番地 | |
代表者:田中 秀和氏 |
光の金型「ホログラム・レンズ」でレーザーを自由自在に操る
2015年7月につくば市に設立されたベンチャー。ホログラム・レンズ設計技術とレーザー微細加工技術に強みを持ち、ホログラム・レンズの設計受託や超精密レーザー受託加工などを手がけている。
ホログラム・レンズとは簡単に説明すると「光の金型」。1本のレーザー光をホログラム・レンズに通すと、複雑な形状に成形することができる。例えば、石英ガラス基板に複雑・微細なパターンの穴あけ加工をする際、一点集光のレーザーを逐次に照射して加工する方式と比べて、ホログラム・レンズに通したレーザーであれば高速に一括的に行う事ができる。
また、同レンズは波長(紫外線~赤外線)ごとに設計可能なため、医療分野で使われている近赤外レーザーなどにも対応可能。その他の特長としては、光強度の均一性が高い、加工時の反射光(0次光)の影響が少ない、拡大縮小など既存レンズとの組み合わせが容易、三次元的に集光も可能といった点がある。加工できる単位は1ミクロンメートル単位。ガラス、金属、樹脂などに微細加工が行える。
同社ではホログラム・レンズの設計に最適位相パターン生成アルゴリズムを用いており、これは同社が独自開発した新技術である。
企業データ | |
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社名:株式会社スペースフォトン | Webサイト:http://www.spacephoton.jp/ |
所在地:茨城県つくば市千現2-1-6 つくば研究支援センター つくば創業プラザ102 | |
代表者:川島 勇人氏 |
当記事の内容は 2016/02/25 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。