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たった1行のコードをHTMLに追加するだけで、Webサイトを自動的に多言語化してくれる!
展開している事業の内容・特徴
訪日外国人による日本国内での消費、いわゆるインバウンドへの対応の重要性が日に日に高まっている。これまで頑なに国内だけを相手にしていたビジネスも、人口減に伴う市場縮小を勘案すると、いよいよ本腰を入れてグローバル展開しなければならない時代となった。
外国人に向けた情報発信を行う場合、まず自社サイトを多言語化するところから始めるケースが多いと思う。しかし、Web制作会社やSIer、あるいは翻訳業者に見積もりを取ると、その金額の高さに驚いてしまうだろう。
今回は、そんな悩みを解決してくれるサービスを紹介したい。たった1行のコードをHTMLに追加するだけで自社のWebサイトを多言語化してくれる「WOVN.io(ウォーブン)」だ。
利用手続きは非常に簡単。同サービスの利用登録をすると、Java Scriptのコードが案内される。それをサイトにはめ込むだけ。なんと、5分もあれば完了してしまう。
対応言語数は27を用意。なかでも英語や中国語、韓国語が人気で、スペイン語、インドネシア語、タイ語、ベトナム語などにも対応している。また、ログインが必要な会員制サイト、ECサイトなどでも利用可能。翻訳はすべて同社のサーバ側が自動的に処理しているが、独特な言い回しや、より自然な翻訳にしたい場合には、プロの翻訳家に1文字5円から依頼することもできる。同社のマイページから見積もりを依頼すると、24時間以内に返答してくれるそうだ。
同サービスがリリースされたのは2014年8月。取材をした2016年2月時点で、約6000事業者が導入し、翻訳対象のページは40万近くなるという。顧客にはリクルート、ベネッセ、サイバーエージェントなど大手企業も多い。
同サービスは無料で使えるが、その場合、翻訳できるページ数は15ページまで、言語も1言語だけに限られる。有料プランは月5000円からで、プランによって翻訳できるページ数や言語数が増えていく仕組みだ。
例えば、中堅規模のECサイトやメディアサイトなどの利用を想定している月額2万5000円のビジネスプランでは、翻訳対象は1万ぺージまで、言語数は3つまで選べる。同プランでは30日間の無料トライアルも実施しているので、気になった方はぜひチェックしてみてほしい。
無料トライアルの詳細はこちら:https://wovn.io/jp/trial
趣味の開発からアイディアを思いつき、起業へ
ビジネスアイディア発想のきっかけ
「WOVN.io」のサービスを展開している株式会社ミニマル・テクノロジーズは、2014年3月に設立されたベンチャーだ。創業者の林鷹治氏は、もともとは車載機のコンピューター設計などを手がけていたエンジニア。特に車両とサーバ間の通信処理などを担当し、今でいうIoTのような仕組みづくりに取り組んでいたという。そうしたサーバ・ネットワーク処理のスキルを生かす道として、2006年頃にソーシャルゲームの世界に転身。Gumiで働いたのち、無料EC構築サービス「STORES.jp」の開発などを経て、友人であるJeff Sandford氏と一緒に起業した。
起業のきっかけになったのは、仕事でA/Bテストサービスを使っていた時、「この仕組みは、多言語化サービスにも使えるのでは?」と気付いたこと。その後、週末の時間を活用しながら、趣味がてら多言語化サービスの開発を始めた。
林氏によれば、それまで起業することはまったく考えていなかったという。
2014年3月に会社を設立し、インキュベートファンドから2014年4月に450万円、同年8月に2640万円の出資を受けた。さらに2015年9月にはニッセイ・キャピタルやオプトベンチャーズなどから合計1億3000万円を調達している。
2016年2月時点で、林氏やJeff氏も含めたエンジニアチーム7割、セールス・マーケティングチームが3割という布陣だ。
開発にあたっては、大量の翻訳処理をリアルタイムで自動化する仕組みのため、導入されているサイトと常に同程度のトラフィックを扱わなければならず、膨大なサーバ間処理をスムーズに行うシステムの開発に苦労したという。単に一度だけ翻訳するだけでなく、導入先のサイトで更新があればそれも追跡する。さらに会員制サイトの場合、ログインしなければ見られないページについても同様に処理を行う仕組みを提供している。
また、もっとも苦労した点については「営業」というキーワードが上がった。というのも、林氏もJeff氏も生粋のエンジニアで営業経験がほとんどない。営業組織や営業計画のつくり方、価格の決め方など、すべてを手探りしながらここまで進めてきたのだ。
世界の全ドメインの4分の1が使ってくれるサービスを目指す
将来の展望
林氏に今後の展望を伺った。まず課題であった営業体制については、投資を受けたVCからのサポートなどもあって整った。
中期的には2020年の東京オリンピックが一つのマイルストーンになる。2020年には非常に多くの外国人が日本を訪れることが確実だ。訪日外国人に、よりよい体験をしてもらうべく、日本発信の情報に関してはできるだけ多く、言語の壁を取り払った状態にしたいと林氏は語ってくれた。
さらにその先に目指すのは、「Word Pressである」とコメントしてくれた。Word Pressは簡単にWebサイトを構築・運営できるCMSと呼ばれるソフトウェアだが、全世界のドメインのうち、実に20~30%がWord Pressで構築されているという統計がある。ざっくり世界のWebサイトの4分の1にあたるが、同社のサービスもこのレベルでの普及を目指しているという。
Word Pressに代表されるCMSによって、Webサイトの構築や運営はとても楽になった。同様に同社は、WebサイトやECサイトの多言語対応を楽に便利にするという目標を掲げている。これまでコストの問題で外国人対応ができなかった中小零細のECも、初期コストゼロで多言語対応ができれば、日本から海外への販売などが加速するだろう。
日本はこれから人口減、超高齢化社会を迎える。国内の消費市場が縮小していくことには疑いないが、その穴埋めをインバウンド消費、あるいは越境ECなどでカバーしていければ、日本はまだまだ成長していけるはずだ。そうした新しいビジネスを生み出していくために欠かせないインフラ構築に挑戦するミニマル・テクノロジーズを、ぜひ応援していきたい。
株式会社ミニマル・テクノロジーズ | |
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代表者:林 鷹治氏 | 設立:2014年3月 |
URL:https://wovn.io/jp/trial | スタッフ数: |
事業内容: ・Webサイト多言語化サービス「WOVN.io」の開発・運営 |
当記事の内容は 2016/02/23 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。