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個々人の体調に合わせたサプリ・ドリンクを自動生成する小型サーバを開発中のベンチャー
展開している事業・特徴
自分の健康状態を気にする人にとって、サプリメントはもはや欠かせないアイテム。今では、コンビニなどで手軽に買えるが、自分に本当に必要なサプリメントは何なのか、栄養学的な裏付けをしっかり確認して摂取している人は少ないのではないか。
今回紹介するのは、モバイルアプリによる登録情報やウェアラブルデバイスから取得した活動量や生体情報などから、健康状態に合わせたサプリメントを自動的に調合し、ドリンクにして提供してくれる小型サプリメントサーバ「healthServer(ヘルスサーバ)」を開発しているベンチャー、ドリコス株式会社だ。
ドリコスは、2015年6月から「healthServer」の開発に着手。取材をした2015年11月時点では試作機が完成しており、本格販売は2016年夏頃の予定。まずは健康への意識が高く、具体的なアクションを起こしているユーザーをターゲットとして、スポーツジムなどに設置を進めていく計画だ。また、数年以内には一般家庭に設置できるモデルも開発する予定である。
使い方は簡単。ウェアラブルデバイスやサーバ本体から収集できる活動量や生体情報と、専用アプリで「今まで何をしていたか」「これから何をするか」を選択をするという2つの方法がある。それをBluetooth経由で「healthServer」に送信。受け取った情報をもとに必要なサプリを配合して、「あなただけの栄養ドリンク」を生成するという仕組みだ。ただし、あくまで食品としての提供であり薬事法の対象外となるため、効果は謳えない。ちなみに味は配合サプリメントの種類や量によって変わる。
サプリメント・健康食品市場は日本国内で1.5兆円(※1)、世界全体では1,098億ドル、2020年までに1,798億ドル(※2)に達する見込みといわれている。ドリコス代表の竹 康宏氏によれば、同社が行った調査では自分に合ったサプリに強い関心がある人の割合は62.6%になり、その市場規模は約9380億円になると推計している。
また、最近は福利厚生の一環としてウォーターサーバが設置されているオフィスも多く、一般家庭への普及も急速に進んでいる。この市場規模は2015年度で約1247億円(※3)という統計も出ている。
一方で、Apple WatchやFitBitなどに代表されるウェアラブルデバイス市場も急速に立ち上がりつつあり、活動量を計測・保存しておくユーザーが急増している。サプリメント×ウェアラブルデバイス×ウォーターサーバといった成長領域を複合して新しいサービスとして構想したのが「healthServer」というわけだ。
サーバ自体は無償もしくは低価格で提供し、栄養素成分のカートリッジを販売することで収益を得る予定。ちなみに、海外でも遺伝子を調べて、個人別に最適配合したサプリを送付してくれるサービスはあるが、その場で調合してドリンクとして提供するものは世界でも例がない。
※1) インテージ 健康食品・サプリメント市場実態把握レポートより
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg/kenko/130419/item2-2_4.pdf
※2) 健康産業新聞1575号B(2015.7.1)より
http://this.ne.jp/news/detail.php?nid=602
※3) 一般社団法人 日本宅配水&サーバー協会のホームページより
http://www.jdsa-net.org/jdsa/value.html
「社会的課題を理工学で解決したい」と、学生起業。大学での研究とビジネスを両輪で進める
ビジネスアイデア発想のきっかけ
2015年に竹氏は、慶應義塾大学大学院理工学研究科で博士(工学)を取得している。性能進展が著しい半導体集積回路分野にて数多くの研究成果を挙げ、その成果が認められ慶應義塾大学理工学部電子工学科の教員も務める若き研究者だ。
一方、高校生の頃から起業を意識していたということで、2012年に学生ベンチャーとして起業もしている。創業時に取り組んでいたpattle事業は、マイボトルユーザーのための飲料自販機「pattle」。アイデアのきっかけは、竹氏の地元・横須賀にあったペットボトルのリサイクル工場にある。日々、大量のペットボトルがリサイクル工場に運ばれる様子を見て、これをなんとかしたいと考えるようになった。
pattle事業のアイデアは、さまざまなビジネスコンテストで高い評価をうけ、キャンパスベンチャーグランプリテクノロジー部門最優秀賞・同文部科学大臣賞、横浜ビジネスグランプリ最優秀賞など7つの賞を受賞している。
2014年10月にサービスを開始し、東京工業大学大岡山キャンパスやフェリス女学院大学緑園都市キャンパスに自販機を設置したものの、事業としてはなかなか伸びず、2015年7月に撤退することとなった。
同社は、ヒトが生きていく上で不可欠である「飲む」という行動を、理工学によってより付加価値のある行動に変えるという事業理念を掲げている。この理念をもとにpattle事業の反省を踏まえて生まれたのが「healthServer」事業だ。
もちろん、製品化にはまだまだいくつもの課題がある。特に、飲料を提供する機械のため厳密な安全性が求められる。まだ本格的な生産体制の構築には至っていないが、試作機は竹氏が3Dプリンターなどを駆使して、手づくりしているそうだ。ポイントは栄養素を配合する「healthServer」の機構で、この部分については特許申請も準備している。
コンセプトやサービス内容のわかりやすさからか、2015年10月26・27日に開催された第3回ILSでも大きな注目を集め、同社の出展ブースには多数の関係者が列をなした。今後、大手企業との連携や本格的な販売体制に向けての資金調達などを行っていく予定だ。
健康管理を助けてくれる飲料サーバを、いずれは一家に一台普及させたい
将来への展望
来夏の販売開始に向けて開発・準備を急ピッチで進めている同社だが、当初はさまざまな協力者の意見を聞き、それらを集約して進めようしていた。しかし、合議制だとなかなか前に進まないことが課題だった。その際、同社のもう1人の創業メンバー・取締役の大久保直樹氏から「まずは創業者である竹さん自身が欲しいものをつくると割り切ってはどうか」という助言が。この一言に救われたのだという。
そこで竹氏が思い描いた製品像は、「自宅のデスクサイドにおける小さなドリンクサーバ」。これなら一家に一台置くことができる。実際、試作品も15cm角と非常にコンパクトな外形をしている。
Apple社の創業者でありiPhoneやiPodなど革新的製品を世に出したステーブ・ジョブズも、製品開発においては独善的ともいえる姿勢を貫き、とにかく自分の理想とする製品開発を追及した結果、大成功したという話は有名だ。
足りない栄養素を科学的に分析・数値化して、ドリンクとして摂取するというサービスはまだ存在していない。同社は市場・文化自体をつくり出すところから挑戦しているが、創業者の強い思いがなければこの高いハードルは突破できないだろう。
薬事法の関連で効果を謳うことは難しいが、ゆくゆくは、化粧品や医療分野にもこの考え方をもとに参入したいのだという。理工学の力で人々を病気から救うのではなく、病気にならない社会を創りたい。これが同社の理想であり、目標だ。
ドリコス株式会社 | |
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代表者:竹 康宏氏 | 設立:2012年1月 |
URL:http://dricos.co.jp/ | スタッフ数: |
事業内容: ・生体状態に応じたサプリメントを自動生成する世界初の小型サプリサーバの開発 |
当記事の内容は 2015/11/17 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。