レガシーな鮮魚流通業界に切り込む! 漁業者と飲食店を直接つなげるアプリ「SAKAMA(サカマ)」

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執筆者: ドリームゲート事務局

2015年8月19日にリリースされたばかりの「漁業者」「産地漁業組合」と「小売店・飲食店」を直接つなぐマッチングアプリ。すでに30店舗が利用。年内にはユーザー数100店舗へ
展開している事業・特徴

20150915-1市場規模3.8兆円ともいわれている鮮魚流通の世界にも、ディスラプティブ(破壊的な)サービスが登場している。従来の鮮魚流通は、漁業者から卸売市場や仲卸を経て、小売店というのが一般的だが、近年は卸売市場を介さずに直接取引できるサービスが登場している。国内のベンチャーで有名どころは2011年よりサービスを開始している八面六臂株式会社、海外ではフーディソンというベンチャーがオンライン上に鮮魚流通のプラットフォームを構築している。

今回紹介する株式会社SAKAMAは2015年2月に設立されたばかりのベンチャーで、スマホアプリに特化して鮮魚流通業界に挑戦している。

2015年8月19日より提供を開始した「仕入れアプリSAKAMA(さかま)」は、「漁業者」「産地漁業組合」と「小売店・飲食店」をダイレクトにつなぐ、マッチングアプリ。

鮮魚流通のプロセスは、「漁業者」→「産地漁業組合」→「中央卸売市場」→「仲卸」→「小売店・飲食店」となっているが、八面六臂やフーディソンのサービスは中央卸市場以降のプロセスを軸足にしているのに対して、SAKAMAは産地の漁業者・組合を直接ユーザーとしている点が大きく違う。

アプリの利用は無料。小売店・飲食店ユーザーと漁業者・組合ユーザーとのマッチングをベースにしたチャットツールをイメージしてもらえると良いだろう。八面六臂やフーディソンのサービスはどちらかというと業務システム的なイメージだが、SAKAMAはあくまでコミュニケーションツールとしての立場をとっている。

SAKAMAを通じて鮮魚を注文すると、当然だが卸市場を介さないため、小売店・飲食店は従来の相場よりも安く鮮魚を購入することが可能。

もちろん安さだけがポイントではない。鮮度抜群の鮮魚が手に入ることも強み。中央卸売市場では、「とめもの」と呼ばれる、市場に集められ2〜3日が経過した魚が販売されていて、“目利き”が必要だが、同アプリはすべて産直なため鮮度が担保されている。さらに、中央市場には出荷されないような珍しい魚種も購入することも可能だ。

先行する鮮魚流通プラットフォームサービスはFAXや電話など従来からある連絡手段がほとんどだが、それだと情報の管理が不徹底となり、効率が悪い。そこで同社はあえて鮮魚情報のやり取りをアプリのみにすることで、特に効率的な流通システムを目指している。

取引先の登録も基本的にLINEなどのSNSアカウントや電話番号など。スマホに登録されている電話番号から自動的に取引先候補を見つけてくれる。

同社の収益源は今のところゼロ。まずは利用者を拡大という事だが、鮮魚を購入する各小売店・飲食店ユーザーが鮮魚を購入したときの取引手数料を予定している。2015年内には決済機能のリリースとともに、マネタイズを開始する予定だ。

ユーザー数は現在、小売店・飲食店約30店舗。居酒屋やイタリアン料理店が多い。漁業者・組合に関しては、上記の飲食店と以前から付き合いのある漁業者・組合が口コミ経由で登録してきているとの事。

30才を機にITエンジニアの道へ。海鮮居酒屋の悩みからビジネスモデルを構想。
ビジネスアイデア発想のきっかけ

20150915-2株式会社SAKAMA 代表を務める柴田壮潤氏は東京理科大学理工学部卒業後、ドライバーズネット株式会社(現パーク24株式会社)にてフリーペーパー事業の新規立ち上げを行った後、株式会社アドウィズにて広告営業に従事。その後、ブリヂストン化成品株式会社にて生産技術、商品開発などに携わった。30歳になったことを機に、かねてから興味のあったITエンジニアへ転身した。自分のサービスを世に出したいと考えていた柴田氏が、SAKAMAのビジネスモデルを構想したきっかけは、同社の共同創業者である中本 亮氏の親戚が営む、鮮魚居酒屋の話を聞いたことだった。

柴田氏はプログラムを学ぶために通っていたデジタルハリウッドで、中本氏と出会った。その後、柴田氏はiPhone/Androidoのエンジニア育成事業「A.i.camp2」を経てフリーエンジニアに、中本氏はe-コマース事業とそれぞれ違う場で活躍していたが、3年ぶりに再開し意気投合。ITを駆使したサービスを企画しようという事になり、アイデアを練るなかで、ヒントになったのが中本氏の親戚が営む海鮮居酒屋の件だった。

電話やFAXで問い合わせや発注する手間や、新規の取引先だと良い魚は売ってくれないなど、といった問題があることを知った。それならばITで改善できるのではないかと考え、ビジネスモデルを具体化していった。

まず、鮮魚の発注が手軽にできるモックアップを開発。海鮮居酒屋に使用してもらい検証を進めた。将来のマネタイズを見据えて、アプリを介した鮮魚の売買ができる機能も設計し、2014年末には事業計画書が完成。それを持参し、サムライインキュベートの門をたたいた。

そこで資金調達に成功し、2015年2月3日にSAKAMA社を設立。そこから、約半年の開発期間を経て、2015年8月19日にアプリを正式リリースした。

同アプリはまだ登場したばかりのためすべての機能はリリースされていない(2015年内に大規模なアップデートを予定)。2015年9月時点ではサカマユーザーである各小売店・飲食店、漁業者・組合間の情報配信、問い合わせ、注文などのチャット機能と、受発注データ管理機能のみとなる。

SAKAMAは、今まで従来の流通では見えなかった荷受以前のプロセスを見える化した、小売店・飲食店にとって便利な仕入れツールを目指している。欲しい魚リストを入力しておけば、会員である全国の漁業者と組合に情報が伝わる、ウォンテッド機能もある。

一方、売り手となる漁業者・組合などにとっては、安定した収入を望めるツールとなる。従来の流通で鮮魚の価値を決めるのは卸市場の役目だ。各地から運ばれてきた魚の質や獲れ高を比べ、セリで卸値を決定する。そのため価格は変動的で、時には予想以上に低い値段になることもある。また、鮮魚を卸すには、サイズや傷の有無などの規格が決められていて、規格外は卸すことができず、なかなか収入が安定しない。

これに対して同アプリは、全国の小売店・飲食店と直に取引ができるため、安定した相場が自然につくられるという仕組みだ。また規格の制約もないため、通常では流通しない鮮魚が売れることもある。

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将来への展望

柴田氏に今後の展望や事業の狙いなどを伺った。まず、SAKAMAのメインターゲットは都内を中心としたエリアに店を構える飲食店としている。その理由は、そうした店舗の店主、経営者は、ITリテラシーが高くスマホを使いこなす若い世代が多いため、SAKAMAのコンセプトにピッタリとはまる。取引先の開拓や注文量は好調に伸びているそうで、絶えず良い鮮魚を探している状態との事だ。

目下の課題はUI。ITリテラシーの高い若い小売・飲食の店主は問題ないが、一方の漁業者・組合のユーザーは年齢層が高く、スマホは持っているがアプリを使い慣れていないため、そうした層でも初見ですぐ使えるアプリにしないといけない。UIの改善が事業上の重要な課題だ。

当面はユーザー獲得に注力し、2015年内には小売店・飲食店ユーザー100店舗を突破する事を目標にしている。また、大型店との取引も進めており、例えば東京・大阪・福岡で開業する「魚や金さん」という魚屋とのコネクションを構築。同店は日本全国の港の4分の1にあたる港120か所との取引があるという。

中期目標としては、2020年までに約3.8兆円といわれている国内の鮮魚市場取扱高の1割、3800億円を目標にしている。また20年以降は海外での展開も視野に入れている。

株式会社SAKAMA
代表者:柴田 壮潤氏 設立:2015年2月
URL:
http://sakama.tokyo/
スタッフ数:
事業内容:
鮮魚仕入れシステム・仕入管理アプリ「SAKAMA」の開発・運営

当記事の内容は 2015/9/17 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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