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Facebookに特化した採用支援サービスがヒットし、顧客数は500社を突破。取引先には日立や三井物産、日本生命など名だたる有名企業が並ぶ
展開している事業・特徴
厚生労働省と文部科学省は2015年5月19日、今春に卒業した大学生の就職率(4月1日時点)が前年同時期に比べ2.3ポイント上昇し96.7%と発表した。これは1997年4月の調査開始以来、リーマンショック直前の2008年に次ぐ2番目の水準だという。
また、直近の有効求人倍率は1.17倍(※1)と、こちらも約23年ぶりとなる高い水準だ。
※1)厚生労働省が2015年5月29日に発表した統計資料より
このように最近は人材を採用するにも求人難といわれ、人材市場は活況を呈している。そんななか、2011年4月にスタートした「株式会社ソーシャルリクルーティング」は、Facebbokに特化した新卒採用支援サービスで急成長しているベンチャーだ。2015年時点で利用者数は年間20万人規模となっており、これは新卒者の1/3を占めるまでに成長している。また、顧客数は500社を突破。取引先は日立や三井物産、日本生命など名だたる有名企業が並ぶ。
新卒採用関連のマーケットといえば、リクルートをはじめ大手人材会社や体力ある大企業であれば自前での活動も積極的におこなっている猛烈な競争市場だが、そんななかでも優秀な学生にリーチするためにFacebookを通じた活動が重要になってきている。同社はそうしてニーズをいち早くつかみ、コンテンツ設計からページ制作、集客、運用等、採用成功まで一括して支援するサービスを展開することで、急成長を遂げている。
社員数も2015年6月時点で50名を超え、2015年内には90~100名体制まで拡大する予定で、事業自体も創業期からずっと営業黒字(※2)という。
※2)新規事業への投資などは除き、人材事業単体で見た場合。
そんな同社だが、安定軌道にのった人材ビジネス以外への進出として、2014年よりスマホに特化したメディア事業に投資を開始している。それに伴い、社名も株式会社ソーシャルリクルーティングから2015年3月10日にポート株式会社へと変更し、本社も西新宿の住友不動産新宿グランドタワー12Fに移転した。
メディア事業の第一弾として、2014年4月にリリースされたのが「キャリアパーク」。
2015年6月時点で350万ユーザーを突破し、早期に黒字化を果たしている。さらに2014年11月には旅行・おでかけに関するキュレーションメディア、Tabimo[タビモ]をリリース。ライフスタイル領域への参入を開始した。そして2015年1月に「納尼納尼網(ナニナニワン)」をサービスイン。このメディアは、中華圏から日本に観光で訪れる中国人向けの情報提供サイトだ。もともと同社は、日系企業に就職したい中国の人材にリーチするために中国のソーシャルメディアweibo、renren、we chatを活用し、月間リーチ数が最大1000万人に上るなど中華圏に強いリーチを持っていた。そのパワーを活用した新規事業となる。
同社代表の春日博文氏によれば、2015年中に8~10ほどのメディア立ち上げを予定しており、分野的には、ヘルスケア、マネー、旅行など幅広く考えているという 。
株式会社ソーシャルリクルーティング改め、ポート株式会社にした理由。人材ビジネスを基盤に、これからはスマホ・メディア事業へ勝負をかける
ビジネスアイディア発想のきっかけ
ポート株式会社の創業者である春日 博文氏は、学習院大学を卒業後、ソーシャルリクルーティング社を設立した。学生時代から個人事業として採用支援ビジネスを開始していたこともあり、大手外資系の会社に内定もしていたが、結局は就職をせず、そのまま法人化したというのが起業の経緯だ。
起業後は朝9時から深夜3時まで毎日猛烈に働いたそうで、オフィスもマンションの一室で会議室もないので、近くのマクドナルドで営業会議をしていたそうだ。
創業した2011年4月当時は、東日本大震災の直後。けっして良い経済状況とは言えないなかでの船出だった。そこで春日氏は震災支援の一環として、東北就活生支援プロジェクト「リクサポ」を立ち上げた。これは震災地域の学生のために東北で就職説明会を開いたり、Skypeでの面接などを取り入れたり、震災で被害を受けた学生の負担を軽減しようという取り組みだった。このプロジェクトには100社の企業が参画、学生も150名ほどが参加した。このプロジェクトがメディアに多く取り上げられたことで同社の知名度は一気に増し、事業は加速的に拡大しはじめた。
創業から3年で社員50名規模まで成長。その間、ベンチャーキャピタルからの投資などはうけず、自前の資金だけで組織を拡大させていった。
しかし、新卒採用支援の事業だけではより大きな成長は難しいと考え、2014年6月にグローバル・ブレインから第三者割当増資を受けて、調達した資金をメディア事業へ投資。メディアサイトの開発やコンテンツ制作スタッフ、記者などの大量採用を進めているという。
メディアの大変動が進んでいる今がチャンス
将来への展望
メディア事業への進出を決断した理由を春日氏に伺った。「これまでは、PCでGoogleなどの検索サイトを使い、目的のWebサイトにたどり着き、消費・アクションをするという流れが一般的だった。しかし、これからはスマホを開いた時の画面がトップのポータル画面と同じ概念となり、直接アプリを開き、そこからダイレクトに消費をしたり、Webサイトへ誘導されるといった、検索を介さない行動が主流になると考え、メディア事業への進出した」と言う。
つまり、情報との接触からアクションまでがスマホ内で完結するようになるため、スマホに最適化された分野特化型のポータル・メディアが、あらゆる業界でユーザーとのファーストタッチを取っていくだろうと春日氏は見ている。
そこで分野特化型でスマホ向けのメディアを大量に展開する事で、巨大なビジネスチャンスが生まれると考えて、事業参入した。
実際、ここ数年はニュース系アプリの成長が話題になることも多く、情報を得る手段としても、パソコンよりまずはスマホでニュースアプリを開くという方も多いのでなかろうか。
そうした消費者の行動変化が進んでいるなかで、そこに新たなビジネスが誕生するというのは、これまでのメディアの歴史を紐解いても、新聞からラジオ・テレビ、そしてインターネットメディアという変遷を経て、これからはスマホが主流メディアになるというストーリーには違和感がない。
インターネットが一般的に使われ始めたのが1995年前後。そこから20年間で、さまざまなビジネスが様変わりした。今やインターネットが無い世界は想像が出来ないほど生活に浸透しているが、スマートフォンを中心にして、更なる大変動が起き始めている。ベンチャーにとっては、またまだチャンスが埋もれていそうだ。
ポート株式会社 | |
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代表者:春日 博文氏 | 設立:2011年4月 |
URL: https://www.theport.jp/ |
スタッフ数:50名 |
事業内容: ・バーティカルメディア事業 ・採用コンサルティング事業 ・グローバル事業 |
当記事の内容は 2015/6/16時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。