オープンデータで病院経営を高度化&医師評価情報を提供するサービスで成長中のベンチャー「リーズンホワイ」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

病院の健全な経営と生活者の健康な暮らしを結ぶリーズンホワイ株式会社のサービスは次世代の医療インフラの姿
展開している事業内容・特徴

厚生労働省の発表によれば、平成25年度の医療費は総額39兆円強。財政逼迫の要因の1つとして年々増え続ける医療費には、絶えず削減というキーワードがつきまとう。しかし、医療関連の制度改革が実施されるたび、その対応に追われる病院側も疲弊していることが多く、経営が振るわない病院も多い。実に公的病院の約8割は赤字という統計もあるほどだ。
※参考資料:http://www.mhlw.go.jp/topics/medias/year/13/dl/iryouhi_data.pdf

20150330-1一方で、盤石な経営を行っている病院も存在する。その違いは何か? そして、経営不振が顕在化した病院がとるべき戦略とはどんなものだろうか? その答えを打ち出し、健全な病院経営を促す事業を推進しているのが、今回紹介するベンチャー、リーズンホワイ株式会社だ。

同社が開発・提供している「リーズンホワイ」というサービスは、厚生労働省が公表している病院関連のオープンデータを解析し、各病院が経営戦略に活かせるように、情報を「見える化」させたものだ。例えば、周辺地域の疾病毎の罹患率などの分析結果をグラフなどで簡単に把握することができる。超高齢化に突入した現代において、これから先も病院へのニーズはうなぎ登りであるとも言える。

だが、ある病院は潤い、とある病院は不振に陥る。このアンバランスの要因は、データ不在によるところが大きい。簡単に言えば、ある病気に対する高度な診療体制を整えていても、その病気の患者が周辺に不在であれば、意味がない。つまり、周辺の地区に住む生活者の動向と情報がカギなのだ。リーズンホワイ社ではそうしたピンポイントのデータを「見える化」して提供しており、クライアントである病院側は「見える化」された情報をもとに、実践的な経営戦略を練ることが可能というわけである。

また、リーズンホワイ社は、今年4月から「ユアホスピタル」というサービスも提供し、注目を集めている。コンシューマー向けである同サービスは、治療を受ける前に自分に適した病院がわかるといったもの。例えば、子供が生まれとき、あらかじめ質の高い小児科のある病院を探すことができる。もちろん、自分の住んでいるエリアに近い病院の検索なども可能だ。

ポイントは病名から検索できる機能。その病気の症状や診断・治療法などの解説もあり、いざ病気を患うまでは触れがたかった医療知識も身に付けられる。さらに、病名・病気ごとに病院を比較検証することも可能だ。また、同サービスはAPIを介した提供も行っており、さまざまなWebサイトの中にユアホスピタルを実装することが可能。この機能は保険会社、クレジットカード会社、旅行会社などから高い評価を得ている。

ビジネス向けのサービス「リーズンホワイシリーズ」は、病院のほか、製薬メーカーや卸会社が自社の営業ツールとしても利用できると好評で、導入クライアントの総勢は200社以上にのぼる。また、コンシューマー向けのユアホスピタルも、リリースして1年足らずで、月額3000円の有償サービスながら会員数は3000人超と、上々の滑り出しを見せている。

医療現場の課題を自ら実感。よりよい医療のカタチを求める中で、ビジネスアイデアをひらめく
ビジネスアイデア発想のきっかけ

20150330-2リーズンホワイ株式会社の創業者である塩飽(しわく)哲生氏は、医師の家庭に育った。しかし、塩飽氏自身は思うところあり医師をめざさなかったものの、東京大学では医療安全分野を専攻・研究することになり、その時にやはり自分は医療の道から離れることはないと確信したという。

塩飽氏が現在のビジネスアイデアを思いついたのは、大学院修了後に就職した医療コンサル会社でのこと。クライアントの病院の経営指標を分析し、採算性の低い診療料は縮小して、儲かる診療料を見つけて伸ばすという戦略立案を仕事にしていた。当然のことながら、経営がよくなればクライアントはよろこび、塩飽氏もやりがいを感じていた。

だが、必ずしも病院の経営好転が患者のためにはならないという事実に、仕事そのものへ疑問を感じてしまった。そんななか、関東のとある病院を担当した塩飽氏。その病院が得意とするのは循環器であることから、循環器疾患の中でも罹患者が多く、診療報酬が高い狭心症の受け入れを促す戦略を立てた。

結果、患者は増加し、経営は好調した。だが、その反面、クライアントはしだいに急性心筋梗塞など緊急を要する患者を受け入れなくなっていったという。このような事例から、当時の医療が抱く、病院の供給と患者の需要とのバランスの問題に直面し、患者の情報データがないことが、そもそもの要因だと実感するに至った。

そうして、経営を安定させながらも、各病院の地域での立ち位置を明確にできる医療サービスの構想を閃き、その社会的価値とニーズを直感。前々から、自分のアイデアで事業を成したいとの思いを抱いていた塩飽氏は、2009年にリーズンホワイ社の前身となる会社を立ち上げた。

しかし、創業当初の事業は難航の連続だったと塩飽氏は語る。
「自らの貯蓄と銀行から借り入れた600万円を資本として、事業をスタートさせましたが、仕事はまったく取れず。いつしか資金も100万円を切っていました。事業の苦心と行き先の見えない不安で、原因不明のじんましんがでました(笑)。それでも、世の中に必要なものであり、また自分のこれまでの軌跡になる事業だと確信していましたので、なんとか推し進めていきました。」

そうした苦悩・努力が功を奏し、徐々に同社はクライアントを獲得していき、いつしかスタッフも6人態勢となった。

経営的に重視しているのは「社員としてデザイナーを抱えている」事だという。日本ではデザインなどのクリエイティブ業務は外注に任せる企業が多いが、塩飽氏がデザインの内製化にこだわっている理由は、サービスを打ち出すごとにデザインが変わったり統一感がなくなる事を回避するため。クライアントやユーザーに安心を感じてもらうためには、サービスにマッチするデザインを追及していくのは、重要で欠かせない要素だと塩飽氏は話す。

あらゆる人々が、自分に合った医療を受けられるように! 海外展開にも注力し、世界の医療インフラへの貢献をめざす
将来への展望

塩飽氏に今後の展望を伺ったところ、コンシューマー向けの医療サービスの市場規模はおよそ1000億円あるとみており、まずはこのマーケットで大きなシェア獲得を狙っていく構えだ。

また、2015年の夏までに「ユアドクター」なる新しいサービスのリリースも予定している。ユアホスピタルのカスタマイズ版とも言えるこのサービスは、良い医師と良い患者をつなぐマッチング的な要素が組み込まれており、生活者にとって医療がより身近になるサービスになるという。

同社の大きな目標としては、医療を求める誰もがリーズンホワイ社のサービスを使っている状態にもっていく事。普遍的なメディカルツールとしての浸透をめざしながら、3年後にはIPO実現も視野に入れている。また、資本提携など、社内基盤の強化を図りながら、世界展開のプロダクトも開発していく計画だ。

特に海外では、国を越えて医療を受ける人が少なくない。例えば中国では、国内の医療体制が乏しいことから、富裕層などは高度な治療技術が要される疾病については、アメリカなどの医療先進国で治療を受けることが多い。塩飽氏はこうした動きにも着目しており、今後は、誰もが国を越えて求める医療をスムーズに受けられるサービスが必要とされる。そうしたサービスの提供を、事業ビジョンとして構想している。

リーズンホワイ社は、医療と人を結び、健康へと誘う大きな架け橋となってくれるだろう。

リーズンホワイ株式会社
代表者:塩飽 哲夫氏 設立:2011年7月
URL:
https://www.reasonwhy.jp/
スタッフ数:6名
事業内容:
各種健康管理サービスの提供
保険事業支援システム
および健康管理・健康支援サービスの企画・開発
健康保険組合の設立支援、組合への人材派遣等

当記事の内容は 2015/4/7時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

無料で始める