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企業のペーパーレス化を一気に進める新サービスが登場か。大企業からベンチャーまで依頼多数で急成長中のベンチャー。
展開している事業内容・特徴
名刺や打合せ資料など、膨大な紙の資料に困っている企業は多いだろう。会社としても資料を保管しておくスペースにも賃料などのコストがかかるので、出来れば削減したい。しかし、ペーパーレス化は盛んに言われてきたものの、いまいち進んでいない印象がある。
そんななか、紙の資料をスキャンして電子化するという単純なサービスながら、急成長しているベンチャーがある。2013年8月に設立されたスキャンマン株式会社だ。スキャンマン社が提供しているサービスは、書類や名刺等のペーパーレス化を望む会社や個人に向けた派遣型代行スキャニング。スキャナーなどの機材一式をスタッフが携帯し、クライアント先まで出向き作業を行う。
料金は1時間2,980円(税抜)と明朗会計。ホッチキス止めを外したり、OCRをかけたり、後で探しやすいようにスキャンしたデータのファイル名を細かく指定するといった細かな作業も、その場で対応できることであれば追加料金なしで対応する。
派遣スタッフは学生アルバイトなどで構成し、コストを抑えている。学生側も有名な大企業のオフィスに行けるというメリットがうけて、人気のバイトになっているそうだ。
同社のクライアントは有名大学や大企業、新聞社などから、弁護士事務所、医療クリニック、ITベンチャー等と依頼は拡大し、引き合いは多岐にわたる。サービス開始当初は、論文や研究資料を大量に保管している大学からの依頼が多かったそうで、その後、大手新聞社や歴史のある大企業、弁護士事務所、医療クリニック、ITベンチャー等と依頼企業の幅を広げている。
例えば、とある大企業がオフィス移転に際して紙の資料を1/3にカットという社内号令があり、同社に声がかかった。3か月間、数名のスタッフが張り付きで、数百万枚にもなる膨大な紙資料を電子化したそうだ。
また、名刺の電子化サービスで有名なSansan社とのキャンペーン時には、名刺を無料でスキャンするというサービスを打ち出したところ依頼が殺到。この際は、1か月間のキャンペーン期間中はフル稼働で、1日5000枚、延べ40人日稼働し、20万枚の名刺をスキャンしたという。
Sansan社のほかには、freeeやメリービズなど、クラウドサービスとの提携を進めている。また、スキャン後に不要になった書類等の廃棄サービスについても業者と提携しており、スキャン後のフォロー体制も万全だ。
同サービスの最大の強みは「明瞭」に尽きるだろう。上記のように、スキャンサービス自体は昔からあったが、個別に見積が必要で、料金も不明瞭なため、安心して利用しづらかった。スキャンマンを利用した、とある大手企業の担当者からは「安心で、かつ画期的な低コストのサービスでした」という評価だったそうだ。
派遣型なので重要な資料を外部に持ち出さずに済み、その場で作業してくれるので上記のような細やかな要望にもすぐ対応し、しかも料金は時間単位の明朗会計。これら3つのポイントが急成長の秘訣だ。
2015年1月時点での展開エリアは、東京都23区を中心に千葉県中央・西部等。派遣交通費は無料である。スキャンスピードに関しては、平均して書籍であれば約5〜6冊分、名刺だとファイル出しがなければ1時間でおよそ1000枚、書類であれば約1000枚以上のスキャンが可能とのこと。依頼されるものは、書類関係が6割、名刺が4割という割合だそうだ。仮に、カラー300dpiの解像度で書類スキャニングを1000枚依頼した場合、競合他社では平均して20円/1枚程度、ホッチキス外しなどはオプションで別料金となることが多いそうで、安く見積もっても20,000円以上になる。これがスキャンマンでは2,980円になる。圧倒的な低コストは魅力的だ。
ベンチャーへの思いと、若き日の失敗がチャンスを生んだ。
ビジネスアイデア発想のきっかけ
スキャンマン社の代表取締役を務める杉本勝男氏は、生粋のベンチャーマインドを持った起業家だ。学生の頃から「大学を卒業し就職して働く」という紋切り型の将来の生活設計に魅力を見出せず、学生当時はホリエモンやサイバーエージェントの藤田氏などが注目を集めていたベンチャーブームに重なり、そうした刺激を受けて、大学在学中に起業を決意した。
はじめて立ち上げた事業は、デジタルコンテンツ配信を中心にしたネットカフェ。当時リリースされたばかりのiPadの中にマンガや雑誌を入れ、本棚を置かないことで経営効率に優れた店舗が実現できるというもの。
しばらくして、そもそもデジタルコンテンツがあれば店舗を持つ必要はないと気づいた杉本氏は、既存のカフェのネットカフェ化する着想を得て、普通のカフェにiPadを置いてもらい、ユーザーがお茶のついでにマンガを気軽に楽しめるというサービスを打ち出した。
収益に関しては、自社とカフェだけではなく、人気コンテンツの作者や出版社にも手数料を支払う、win-win-winのビジネスモデルだった。
だが、うまくいくかのように見えた事業は、著作権等の壁が立ちふさがり頓挫してしまった。再起のために杉本氏は、アドバイスを求め、さまざまな起業家にコンタクトを取り、助言を求めたそうだ。その中で、ソフトバンク新30年プロジェクトの委員会メンバーを務めた渡部薫氏(現:レインボーアップス株式会社代表)との出会いがあり、それがスキャンマンサービス誕生のきっかけになった。
「渡部さんとの出会いが、チャンスだなと思いました。というのも、スキャニングというカテゴリでは競合は多いものの、名刺などの小規模なものを扱うサービスはありませんでしたし、また、派遣でスキャニングを行なっている会社も皆無。必ずビジネスとして成り立つと直感できました」
そうして2012年に、これまで愛知県を本拠地としていた杉本氏は上京。大学時代から面識があった金重伸氏(現:取締役副社長)やシェアハウスの同居人である大内和也氏を誘い、サービスを本格始動させた。ブラッシュアップを重ねながら、TechCrunch Tokyoでの出展や営業を行う日々。それが徐々に功を奏し収益は黒字を達成、それを機にして2013年8月に会社を設立した。
当初の大型案件は積極的に営業を行っていた大学からの依頼。大学に潜在ニーズがあると仮定したのは、金氏や大内氏のアイデアによるところが大きいそうだ。両氏は事業に参画した当初、卒業を控える大学生。大学には膨大な資料や論文が保管されている状況を目の当たりにしていたというわけである。
成長の兆しを感じながら次に同社が行ったのが、Sansan社との提携である。スキャンサービスとクラウド名刺管理サービスは非常に親和性が高く、相乗的なメリットが期待できるため、早い段階から提携を同社は望んでいたという。また、クライアント大量獲得をめざす上でも必須のことだと考えていたと、杉本氏は話す。その予測のとおり、このキャンペーンは大好評。同社のサービスはスキャンサービス界隈で確たる認知度を得た。
スキャンサービス市場は1000億円。今後も年率5~8%の成長率で拡大見込み。
将来への展望
杉本氏によれば、スキャンサービスの市場はデータ入力も含めれば、1000億円規模となるという。各種クラウドサービスやiPhone、iPadなどのモバイル端末の普及もあり、資料を電子化して手元のデジタル端末で閲覧するという行動は当たり前になりつつある。最近では、キャノンや大塚商会など大手企業も同市場へ参入してきており、今後も年率5~8%の成長率で拡大していくと予想されている。
この勢いを背にして、スキャンマン社は全国展開も視野に入れ、スタッフの拡充、営業力の強化、拠点の増設等、さらなるシェア獲得のため事業基盤の強化を進めている。
特に営業力の強化は急務。事務所移転を控えた会社の約9割がペーパーレス化のニーズを感じていることから、そうした機会を逸しないために、地道な営業活動を重視しているという。
サービス面では、新提携も含めクラウドサービス会社との提携を密にし、新たなサービススタイルを打ち出していく構えだ。具体的には、スキャンを行うスタッフがさまざまなクラウドサービスの営業活動も兼務することを狙っている。Sansan社のようなサービスとの相乗効果を生みながら、より総合的なペーパーレス化サービスの展開をめざす。
最後に、杉本氏は将来の展望をこう語ってくれた。
「現在は紙からペーパーレスへの移行期であり、潜在ニーズもどんどん顕在化してくると思います。しかし、向こう5年や10年は安定しているかもしれませんが、それから先のニーズは減少の一途を辿るでしょう。ですから、当面はスキャニングを主軸に置きながら、派遣型サービスのノウハウと、クラウドサービス会社との連携体制を生かした新しいサービスを準備していきたいと思っています。派遣や代行をテーマに、より深く会社や人々の生活にフィットするサービスをめざしていきます。もちろんIPOも視野に入れています」
スキャンマン株式会社 | |
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代表者:杉本 勝男氏 | 設立:2013年8月 |
URL: http://www.scanman.in/ |
スタッフ数:41人(アルバイト含) |
事業内容: 派遣型スキャニング代行事業 |
当記事の内容は 2015/2/5 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。