1年で数十社超の顧客を獲得。コストは1/2~2/3。日本語で開発依頼を行うグローバルソーシングの新モデルで急成長ベンチャー「セカイラボ」

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執筆者: ドリームゲート事務局

品質は日本と同等。しかしコストは圧倒的に安く、しかも日本語でコミュニケーション可能。ナショナルクライアントも利用している新サービス
展開している事業内容・特徴

20150109-1システム開発のコストカットの有力手段として「グローバルソーシング」という手法がある。別のいい方ではオフショア開発ともよばれるが、開発を人員が豊富で人件費の安い海外に委託するというものだ。しかし、グローバルソーシングの拠点自体を開設するコストや、品質やビジネス習慣の違い、言語の違いによるコミュニケーションロスによるトラブルなども多い。

そんなグローバルソーシングの課題を解消したサービスによって急成長しているのが、今回紹介する「セカイラボ」というベンチャーだ。同社の開発形態は2パターン。ひとつは、クライアントと海外エンジニアとを仲介する形式。もうひとつは、セカイラボ社が一次請けとして開発に責任を持つ形式。仲介だけでは「品質コントロール」「責任の所在」に対する不安を感じるクライアントもいることから、セカイラボ社で一次請けし、採択という形で海外エンジニアに再発注を行っている。

また、サービス内容については、クライアント専属のチームを組み期間単位の開発を行う「ラボ型契約」、従来の受託開発スタイルのように案件ごとの契約となる「プロジェクト型契約」、テキストデータ入力やバックオフィス周りの事務作業を依頼できる「BPO」の3パターン。クライアントはどのサービスでも日本語でのやり取りが可能となっている。

取材をした2015年1月時点で、パートナーと呼んでいるITエンジニアは7000名超、500~600チームが登録。また、開発者の地域は14カ国にも上る。

このチーム単位というのがユニークなポイントで、同社のサイト上で開発者を探す際は、チーム単位で実績などが調べられる。個人単位よりチームのほうが仕事を依頼する際、安心できるという点と規模感のある案件にも対応できるというのが大きな理由だ。

また、グローバルソーシングの最大のメリットは、国内発注を行うよりも劇的に安いコスト。セカイラボでいえば、国内エンジニアへWebアプリを開発依頼した場合のコストを100とした場合、同品質の開発クオリティで中国では50、ベトナムは25、ミャンマーやバングラディッシュは8 程度になるという。

そこにセカイラボ社の仲介手数料や日本語のわかる人材を仲介役(ブリッジSE)に立てるコストなどを計上しても、トータルで国内開発と比べて1/2から2/3のコストで収まる。

もちろん、案件によりケースバイケースであるが、わかりやすい事例としては、国内の開発会社が3000万円で見積もった案件を、同社では1300万円で開発し納品した実績もある。

同サービスは2013年12月にスタートして、まだ1年が過ぎたところだが、すでに大手新聞社をはじめ、自動車メーカーや出版社等々、大手企業と取引をおこなっている。その多くが、新規サービスのための開発プロジェクト依頼が多い。理由の1つが、大企業の社内IT開発部署や従来取引のあるベンダーは業務システムなどが中心で、Webサービスやアプリの開発に対応できない事も多い。また、新規プロジェクト自体の予算が少ないという背景もあり、開発にコストをかけられない。

そこで、良質な海外エンジニアと日本語が堪能なマネジメント人材がそろっているセカイラボのサービスが刺さったという形だ。現在のクライアント数は数十社。大半が直接取引で、IT業界でありがちな二次請け、三次請けといった事はほぼないという。

2015年1月時点でのセカイラボ社の海外開発拠点は、中国の成都と青島。2015年2月にはベトナムのダナン、4月にはバングラディッシュのダッカにも開設する予定だ。

同社では海外に直接拠点をつくり、パートナーを組む海外エンジニア人材と面談をして日本語が出来るブリッジSEの育成を進めている。基本的には日本企業への納品実績のある現地会社のエンジニアの採択している。スキル、日本への理解、どのくらいの質の案件をこなしているか等でフィルタリングを行い、人材クオリティを担保。安定して優秀な人材を確保できるシステムを構築した。

日本ではIT業界というと3K的な仕事といったイメージがあるが、東南アジアなどでは逆で、医者や弁護士といった憧れの職業の1つになっている。新卒で普通に就職した場合と比べて倍以上の収入になるそうで、それゆえに現地でトップクラスの大学を卒業した優秀な人材が集まってくるため、そうした人材に日本語や日本の商習慣などを教育することで短期間でブリッジSEを育成できるのが同社の強みだ。

グローバルソーシングの秘めた可能性を実感し事業化。目を引くデザイン戦略でクライアントを魅了!
ビジネスアイデア発想のきっかけ

20150109-2セカイラボの母体は、モンスターラボ社という音楽サービスを展開するベンチャーだ。モンスターラボ社はインディーズアーティストとリスナーをマッチングさせる主サービスを展開している一方、自社ゲーム開発や受託開発も行なっており、中国支社を拠点として各国のクライアントから発注を受けオフショア開発も展開していた。そうした受託をこなす中で、グローバルにクライアントとエンジニアをつなぐグローバルソーシング・サービスの着想を得て、新しい事業としてセカイラボが生まれた。

セカイラボの代表取締役COOを勤める大熊一慶氏は、2011年に新卒でモンスターラボに入社した。大手企業から内定を受けていた大熊氏だったが、DeNAの南場氏の講演を聞き、衝撃を受けた。ベンチャービジネスの持つ魅力に魅了され、そうした世界に携わりたいと思い、大手の内定を蹴ってベンチャー企業への就職を決意。自分が心底働きたいと思える会社を探す中で出会ったのが、モンスターラボだった。

モンスターラボでは当初プログラマーとして仕事をしていた大熊氏だが、その後、営業を経て、プロジェクトマネージャーを任されるようになった。その仕事のなかで、オフショアに関するクライアントやエンジニアの声を聞き、セカイラボの基盤となるアイデアを思いついた。

事業のアイデアから会社設立までの準備期間は約1年間。当初、大熊氏が構想していたのはランサーズやクラウドワークスのようなクライアントとエンジニアを自動でつなぐプラットフォームサービス。しかし、海外のエンジニアと直接やりとりする事に対するクライアント側の不安感が大きい事に気づいた。そこで同社が一次請けとして入り、ディレクターやブリッジSEを立てる事で受注数が伸びていった。

当然だが、Pull型のほうが営業効率は良いため、同社では『アプリを作ることになったら読むe-Book「アプリ開発AtoZ(企画〜発注編)」』という資料を無償で配布している。いわゆるホワイトペーパー施策で、資料をダウンロードしていくユーザーを見込み客として、リスト化する狙いだ。このe-Bookをはじめ、広告やオウンドメディアでの情報発信等も功を奏しており、同社への一か月間での問い合わせは100件を超えるという。

全世界の受託開発プラットフォームをめざす! 数年後には、エンジニア5,000人が稼働する体制を整備
将来への展望

大熊氏に今後の展望を伺った。まずサービスのさらなる普及とクライアント拡大に向け、エンジニア・事業基盤の拡充を当座の目標に据える。2015年内には常時500〜600人のエンジニアが稼働している状態として、さらに2017年度までにはそれを5,000人規模をまで伸ばす計画だ。

また、海外の販売拠点づくりも加速させていく。まず中国では3件目となる拠点を上海に、そして年内にはアメリカのシリコンバレーにも拠点設立を予定している。また、2017年までには開発だけでなく、企画、ローカライズなどの上流工程も請け負える体制も整えていく予定だ。

もう一つ大きな動きとしては、海外から日本国内企業への開発依頼も扱っていく予定だ。日本企業の細やかで丁寧な仕事は、海外企業には魅力的で、多少コスト高でも日本企業に開発を依頼したいというニーズがあるそうだ。オフショアの逆を行く形だが、将来的にはグローバル間で賃金格差が縮小して行くことが考えられるため、海外から日本への仕事依頼も増えると見ている。

同社が今後の大きな課題として捉えているのは、クライアントとのコミュニケーションロス。言語の壁がなくなったとしても、基本的なやり取りで齟齬が発生することも多い。そのため同社ではこれまで独人的であった開発におけるプロセス管理の標準化を進めている。

取材の最後に大熊氏はこう語ってくれた。
「ここ数年の話ではないですが、10年先、20年先を鑑みれば、コスト競争力はいずれ強みではなくなると思います。具体的に言えば、各国エンジニアの賃金差がなくなるだろうということです。セカイラボとしては、その来たるべき時代のフロントランナーとして、どの国のクライアントでもシームレスに、全世界の優秀なエンジニアにつながるようなシステムを構築していきたいと思っています」

Sekai Lab Pte. Ltd.
代表者:CEO 鮄川 宏樹氏 COO大熊 一慶氏 設立:2013年12月11日
URL:
http://www.sekai-lab.com/
スタッフ数:
事業内容:
グローバルソーシングサービス「セカイラボ」の運営

当記事の内容は 2015/1/27 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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