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日本初のワープロソフトからスタートし、パソコン、携帯を経て、スマホ全盛期の現在まで変化し続けるITベンチャー
展開している事業内容・特徴
高電社という会社をご存じだろうか。1979年に大阪で創業、1981年には日本初の日本語ワープロ「WORD3000」を開発・発売した会社だ。ワープロソフトで有名な「一太郎」が世に出たのは1985年。その前身であるソフト「JS-WORD」が1983年に発表されていることからも、同社は国内パソコンソフトビジネスの先駆者といえる。
社歴35年を誇る高電社は、もはやベンチャーとは言いがたい“老舗”のソフトウェアメーカーだ。しかし、同社はパソコン黎明期からスタートし、パソコン全盛期、携帯(ガラケー)全盛期、そしてスマートフォン時代と、デバイスやプラットフォームが何度も変わる激流のIT業界で変化し続けてきた。その戦略眼は、これから新たに起業・スタートアップするベンチャーにとっても参考になるだろう。
高電社の主力事業は3つ。中国語統合ソフト「Chinese Writer」などのパッケージソフト事業、自動翻訳ソリューションなどのITソリューション事業、そして人力による翻訳・通訳サービス事業だ。いずれの事業も言語関連の同社の技術がコアとなっている。
ちなみに、同社の自動翻訳ソリューションは、Exciteやニフティをはじめ、LINEなどにも導入されている。また、ソフトバンクモバイル向けに「かざして翻訳」というアプリも開発・提供。このアプリを使うと、韓国語・中国語をリアルタイムで日本語に翻訳してくれる。しかもオフラインでも使えるという優れもの。つまりアプリ本体に、翻訳エンジン・邦訳用の辞書を内蔵しているというわけだ。
また現在、同社の一押が、「Myサイト翻訳」というWebサイトを自動翻訳してくれるサービス。日本語のWebサイトであっても「翻訳ボタン」を押すだけで、英・中・韓・欧・東南アジア言語など18言語に対応し、リアルタイムで翻訳してくれる。さらに、サイト内の重要なメニューは、訳質向上チームの巡回チェックにより翻訳精度を高めている。固有名詞など機械翻訳の弱点を整えてくれるのだ。また、外国語の画像に差し替えて表示することも可能。観光客向けの旅館などのWebサイトのほか、全国200の自治体のWebサイトにも導入され、東京23区では18区が同社のサービスを利用中。
国立国会図書館の他、最近は各地域の救急医療ネットへの導入が増加し、安心・便利な社会の裏方で良質な翻訳を提供し続けている。
常に市場の先を見て先駆的にサービスをリリース。その戦略眼の鋭さで変化し続けてきた
ビジネスアイデア発想のきっかけ
高電社では、1980年以降次々と各種業務ソフトを開発・販売を行ってきた。先に紹介した日本語ワープロは、日本初のパソコン用ワープロソフトとしてNEC-PC-8000その他の機種で定着して行き、文豪など従来のワープロ専用機が姿を消した時代でもある。
その後、韓国語ワープロの開発・販売により韓国の三星電子㈱に認められ、技術供与を行っている。
さらに、1991年には世界初の「日韓翻訳システム J・ソウル」をIPA(独立行政法人情報情報処理推進機構)の支援を受けて開発を行った。このソフトは1998年当時の通産省より優秀情報処理システム表彰を受賞している。2000年には、IPAより普及事業に多大な功績を認められ感謝状を授与されている。同ソフトは現行商品でバージョン9となり、特許用語の搭載などを加え進化を続けている。
また、英・独・仏・露・中国語対応のワープロ「TechnoMate」シリーズもリリースした。その開発力と勢いには舌を巻くばかりだが、これは2014年現在の主力製品の1つである中国語統合ソフト「Chinese Writer」へとつながっていく。
「Chinese Writer」は同社を代表する超ロングセラー製品だ。初版から約30年を経て、現在10のバージョンとなっており、市場シェアもNo.1を維持し続けている。ユーザーは官公庁・多数の大学、企業と広範に渡り、アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)より長尾賞を受賞している。
さらに、中国語と言えば日中翻訳ソフト「J・北京」シリーズが有名だ。「J・ソウル」と同様にIPAの支援を受け開発・販売・特許翻訳エディションはプロの方の評価も高い。近年の日中交流やビジネス拡大の必需品とも言えよう。
このように、パソコンが黎明期の頃からソフトウェアの提供を開始し、インターネットの爆発的普及が始まる直前の2000年からASPサービスを展開。さらに携帯(ガラケー)各社の公式サイトへのサービス提供もいち早く行っている。読者の方のお使いの携帯でも、高電社のサービスを意識せず使っているケースも多いだろう。
また、翻訳エンジンをサーバーに格納し、国内外に翻訳ソリューションを提供しており、Exciteをはじめとしたポータルに順次サービス提供を開始している。
まさに“期に見るに敏”。ここまで怒涛のリリースを続けてきた1981年から現在までの歴史を振り返ってみたわけだが、常に先駆的にプロダクトをリリースしている同社の積極的な経営戦略が見て取れるだろう。
プロダクト先行型からマーケットイン型へ。ユーザーサポートを第一に考え、翻訳ビジネスのさらなる拡大へ
将来への展望
取材に対応してくれた同社の営業機能である 株式会社高電社販売 取締役営業本部長の平林氏は、元々ソニーに在籍しており、ソネットの立ち上げメンバーの1人だった。その平林氏が高電社に参画したのはつい最近のこと。翻訳技術をコアに変化し続けている、同社の将来性を感じて参画したという。
これまでもマーケットを先読みして先駆的にプロダクトを投入してきた同社だが、今後は、よりお客様側に立ったサービスを展開していく考えだ。お客様の要望に合わせたソリューションの提供およびカスタイズ、お客様への手厚いサポートには定評がある。これこそ自社開発により「熱意ある取組の継続」を行っている同社の強味でありユーザー様の安心感であろう。翻訳エンジン提供先には、富士ゼロックスがある。また、お客様の要望により、クラウド翻訳では39言語対応が実現されている。
2014年訪日観光客は1,100万人を突破し、さらに増加見込である。
インバウンドビジネスは百貨店など売上に直結する面も多く、同社は顧客の利益に貢献してこそ永続性のあるビジネスとなり得ると同社では考えている。また、音声との組合せにより、防災や各種案内等利便性が高まる為、さらにマーケットは拡大して行き、2020年の東京オリンピックを迎えることになるだろう。
創業時より一貫して「言葉の壁をフリーにし、社会に資するものづくりの姿勢」は、世界中の言語をカバーし、機械と人による総力翻訳の相乗作用をもってお客様へ最適なソリューションを提供する分野で、大きなビジネスチャンスがあると同社は見ている。
株式会社高電社 | |
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代表者:岩城 陽子氏 | 設立:1979年4月 |
URL: http://www.kodensha.jp/ |
スタッフ数:45名 |
事業内容: ①ソフトウェア開発販売 ②携帯端末組込・ASPサービス ③人力(人の手による)翻訳・通訳 ④翻訳ソリューション |
当記事の内容は 2014/12/18 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。