フランスで出会った食用ほおずきを日本にも広めたい!元銀行員が夫婦で挑む食用ほおずきの6次産業化

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執筆者: ドリームゲート事務局

栽培指導から、自社ブランド「ほおずきんちゃん」商品の加工販売まで、食用ほおずきのブランド化にチャレンジする早野商店。
展開している事業内容・特徴

20141007-01「食用ほおずき」をご存じだろうか? ほおずきと言えば浅草の「ほおずき市」などで売られている観賞用をイメージするが、ヨーロッパを中心にフルーツとして広まっているのが「食用ほおずき」である。今回は食用ほおずきの栽培普及と、加工品製造に取り組んでいる岩手県の早野商店を取材してきた。

食用ほおずきは南米が原産。見た目はオレンジ色のミニトマトのようだが、食べると酸味が口に広がり、その甘酸っぱさと豊潤な香りはまるで南国のフルーツだ。日本ではなじみが薄いが、ヨーロッパでは美容や健康にいいフルーツとして知られ、特にフランスでは料理の付け合わせやスイーツの材料として使われている。

日本での収穫時期は8月から11月。最近では、新宿伊勢丹など首都圏の店舗に並ぶこともある。国内では秋田、山形、長野などでも栽培されているが、全国の生産量統計もないほどまだ珍しい。

早野商店では2005年から食用ほおずき事業に取り組み、生産を拡大するため2007年から契約農家の募集を開始した。認知度をあげるため、メディア向けの試食会を開いたり、盛岡市のホテル等で「ほおずきサミット」というイベントを実施してきた。ほおずきサミットについては、インターネットで生産者を調べてDMを送ったこともあり、福岡、福井、奈良など遠方からの参加者もいた。

契約農家数は変動があるものの、2014年9月時点で岩手県内に15組ほど。100本単位で栽培する個人農家のほか、1000本ほどの規模で栽培する福祉施設もある。

広大な岩手県内各地に契約先があり、沿岸部、内陸部それぞれ気候が異なることから、出荷時期を調整することができるのは強みだ。特に沿岸南部、陸前高田市では県内でも温暖な気候のため、通常ならば11月頃までのところ12月まで収穫できるという。

収穫量は年間約2トンの収穫量で、2~3割がそのまま食べる生食用に、残りが加工用にまわる。自社加工商品としては、ジャム(699円、税込)、コンポート(864円、税込)、スイーツソース(864円、税込)などが定番だ。生食は大きさにもよるが100グラムパックに12粒から14粒入って864円(税込)。いずれも商標登録した「ほおずきんちゃん」という名前でパッケージされており、ブランド化にも取り組んでいる。

加工品は他社とのコラボレーションにも積極的で、アイスクリームやアルコール類などの商品も開発してきた。早野商店だけではアプローチしにくい層にも、コラボレーション商品を通じて訴求するのが狙いだ。

47都道府県を訪ね歩き感じたふるさと岩手への想い。生産者マルシェでの販売ボランティアでの出会いをきっかけに、岩手にUターン。
ビジネスアイデア発想のきっかけ

なぜ食用ほおずきに取り組もうと思ったのか、同ビジネスを手掛ける事業責任者の早野 崇氏(早野商店 取締役)にお話を伺った。

早野商店と食用ほおずきとの出会いは2004年。きっかけは早野 崇氏の妻である由紀子氏が、旅先のフランスで初めて食べた食用ほおずぎに感動した事。由紀子氏は岩手に戻ってから各地の大使館や種苗店などに問い合わせ、自ら栽培も始めた。

由紀子氏が試行錯誤しながら栽培を始めた2年目に、東京で日本政策投資銀行に勤務していた早野 崇氏と出会った。岩手出身だった早野 崇氏は由紀子氏と意気投合し、結婚。由紀子氏の実家であった早野商店に婿入りした。

早野商店は岩手の県北、下閉伊郡岩泉町にあり、もともとは食品製造と小売りの会社だ。近隣から仕入れた海の幸や山の幸を原料に、昆布巻や佃煮を製造・販売している。岩泉町は日本三大鍾乳洞のひとつ「龍泉洞」でも知られた町だが、早野商店の関連企業である早野産業有限会社は、この龍泉洞の観光地化に尽力してきた企業であり、いわゆる老舗グループだ。ほおずき事業は、この老舗グループである早野商店の社内ベンチャーという位置づけで、早野夫妻が二人三脚で本格化させた。

ここで早野 崇氏の経歴をかいつまんで紹介する。高校時代から地方自治に関心があり、進学した慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)では竹中平蔵ゼミなどで学んだ。1996年、大学卒業後に日本開発銀行に入行。日本各地に大規模な融資案件を抱える同銀行では地方出張も多く、趣味も兼ねて47都道府県を訪ね歩いた。特に鹿児島県と高知県での訪問で、地元岩手の産業活性に向けてのヒントを得られたという。

そうして機が熟すかのように、2006年、早野氏は岩手のために動き始める。在京の岩手出身者らと共に、生産者マルシェ「代々木アースディマーケット」に出店し、岩手の生産者から直接仕入れた野菜や特産品などを販売するボランティアを始めたのだ。

生産者は、当時盛んだったmixiなどのSNSを通じて紹介を受け、直接訪ねて話を聞き、仕入れを行っていた。この生産者の中に、先に岩手にUターンし、食用ほおずきに情熱を傾ける由紀子氏がいた。この出会いをきっかけに、早野氏は現在のほおずき事業を手掛けることになった。

新市場の開拓という教科書がない仕事は面白い。食用ほおずきの開拓者として、食を通じた横のつながりで、岩手から世界へ発信したい。
将来への展望

早野 崇氏に今後の展望を伺ったところ、まず目指したいのは「食用ほおずきなら、岩手が一番」と言われる知名度の向上だという。知名度が低く珍しい分、栽培についても苦労が多い。生産量をあげることは簡単なことではないが、毎年試行錯誤を重ねていくことは、「教科書がない世界だからこそ面白い」と語る。

さらに早野 崇氏はこう語ってくれた。「食の世界は1社だけで市場に打って出るよりも、他社と連携することで付加価値を高めていくことができる。そこが面白いし、大事だと考えています。」

岩手県の食品産業では、早野氏と同世代で40代の経営者が増えており、幸いにも横の連携がしやすい状況にある。早野商店としても、パンや菓子など、他社との新たなコラボレーションを積極的に仕掛け、首都圏や西日本での販売にも力を入れていくそうだ。

最後に、ご夫婦での夢も語ってくれた。
「食用ほおずきとの出会いはフランスでしたから、いずれは自社の加工商品をフランスにも輸出してみたいですね。」

有限会社早野商店
代表者:早野 寛一氏 設立:昭和16年
URL:
http://i-hayano.jp/
スタッフ数:7名
事業内容:
・食用ほおずきの栽培
・食品加工
・小売

当記事の内容は 2014/10/7 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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